第7話 本日最後の旅行先

 ベッドに仰向けになり、目を閉じていた。健人と付き合いだしてから、ほぼ毎晩シングルベッドに二人並んで眠っていたので、実家に帰ってきてから感じるこの広さに、まだ少しだけ慣れない。不思議なものである。


――今日も楽しかった


 健人とは波長が合う。長らくバイト仲間として日々顔をあわせていたのに、付き合うまでこんなに気が合うとは思っていなかった。毎日どれだけ共に過ごしていても話は尽きず、心地よさを実感するのだった。


――ずっと一緒にいられたらいいな


 まだ付き合ってから数ヶ月しか経っていないが、そんな風に真剣に考えるようになっていた。

 

――今回のこの思い出も、いつか良い脳内旅行の行き先になって、二人で写真を見返して記憶違いを笑ったりして……


 悪くない。そんな指摘をし合う未来も、楽しそうだ。


――そうだ。眠る前に行ってみよう。ベビーカーの、一番古い私の旅先……


 昼間に見た、アルバムの写真を思い返す。思ったよりもボロボロで、日除けに残るシミの跡。少し修正されたであろう、記憶の中へ。


 今夜の旅行先に、紗和は赤ん坊の頃のベビーカーの内側を選択したのだった。

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