第8話 最強の運が運の尽き Part3

 ――ごめん、聡情さん……。


 結局、恩は返せなかった。

  

 テンプが聡情に尋ねる。

「どうしてあの時、真田の手から僕を守ってくれたの?」

「失敗した奴を制裁するなんて、あいつの思い通りにさせるのが嫌だったのもあるけど――お前、悪いことしてたのに、悪い人間って感じがしなかったんだよな」

「え?」

「真田みたいに根っから嫌な奴って感じがしなかった。お前、盗みとか何の躊躇ちゅうちょもない感じだったし、その歳であんなに慣れてるのは、子どもの頃から繰り返してたからなのかなって。そうしなきゃいけない理由があったのかなってさ」

「いいのかよ。僕みたいな奴を味方にして、岳積さんまで裏切って……」

「仕方ない。お前を助けたことも後悔はしてないよ。両親がいないっていうのも、俺と同じだし。辛い気持ちもわかるしさ」


 ――僕も、あなたについていったことは後悔してないよ……。


 スパイクがテンプに問う。

「あいつらに何があった? ついこの前まで、二人はともに行動していたはずだ」

「それが……」

 テンプはスパイクに聡情から聞いたことを話した。

「この世界が! 信じられない……」

「僕だって信じられなかったよ。でも僕は、聡情さんの願いを叶えたいんだ。あの人が言うなら信じるしかない」

「岳積は聡情と決着をつけに……立てるか?」

 スパイクが肩を貸し、テンプを支える。

「いいよ、僕は。先に行って」

「お前も聡情を思うなら、奴を最後まで見届けろ。会えなくなってから後悔しても遅い――」

 二人は階段を下り、少しずつ奥に進む。

 その時、何かが爆発するような大きな音がした。

「何だ今のは!」

「この先で、何かが起こっているのは間違いない――」

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