第3話 花時計の町 Part2(ゲーム)

 聡情 vs 少年


 TURN1

 聡情のターン


「先攻はもらうぞ。【先導の王 構捧犠カササギ】を召喚――」

 鳥の格好をした戦士が羽を広げる。顔はクチバシのついたマスクで覆われている。


【先導の王 構捧犠カササギ

 固有希少値:金 攻撃力1200

 効果:このモンスターは、効果を持たないモンスターとの戦闘でしか戦闘破壊されない。

(『英断』の『景章札スートロケート』。自己犠牲の気持ちが強いため、信頼が厚い)


「ターン終了」

 

 手札

 聡情:4枚

 少年:5枚


 TURN2

 少年のターン


「僕のターン。まずはこいつだ――」

 少年がカードを一枚投げると、きらびやかな衣装をまとったトカゲが現れた。

「【ボヤンス・リザード】。頼んだぞ」


【ボヤンス・リザード】

固有希少値:金 攻撃力1400

 効果:???

(お調子者の『ギャンドブルム』。普段はつむっている片目で『透視』することができる)


 攻撃力は1400。聡情のモンスターの攻撃力より高い。

 しかし、【先導の王 構捧犠カササギ】を倒すには、効果を持たないモンスターでなければならない。簡単には破壊できないはずだ。

 岳積が考えていると、少年が口を開いた。


「【ボヤンス・リザード】の効果発動。相手のデッキの一番上のカードの種類を当てることができれば、相手の全てのカード効果は無効になる!」

「俺のデッキの一番上?」

 

【ボヤンス・リザード】

 固有希少値:金 攻撃力1400

 効果:自分ターンに1度、発動可能。

 カードの種類を1つ指定する。

 相手のデッキの一番上のカードを確認する(確認した後で、デッキをシャッフルする)。

 そのカードの種類が、指定したカードの種類と同じ場合、相手の場の全てのカードの効果は無効になる。

(お調子者の『ギャンドブルム』。普段はつむっている片目で『透視』することができる)

 

「そう。先兵モンスター、解煌、専煌、伏兵リアクター、鉄槌。この五種類の中から、あんたのデッキの一番上のカードの種類を当てるんだ」

「確率は五分の一か――」

 少年は目を閉じている。集中しているようだ。

「僕は昔から、運や勘には自信があるんだ……」

 しばらく時間が流れた。彼はじっとしている。

 聡情は彼が答えを出すのを待っている。普段はせっかちな聡情だが、相手が真剣なときには急かさない。彼のそのような一面を岳積は気に入っていた。

先兵モンスターカード――」

 少年が宣言する。

先兵モンスターカードだ!」

 聡情がデッキのカードをめくる。確認すると、少年に見せながら微笑んだ。

「当たりだ」

 

拠冬羆きょとうひ‐ドングリズリ】

 固有希少値:金 攻撃力1000

 効果:このモンスターは戦闘でモンスターを破壊する度に、攻撃力が1000上がる。

(『器量』の『景章札スートロケート』。群れの長で、ライバルが眠る冬に活動する)


「よし! これで【先導の王 構捧犠カササギ】の効果は無効になる――」

 トカゲが衣装のポケットからコインを取り出す。指で弾くと、それはカササギの戦士の頭部に直撃した。戦士が膝を折る。

「バトル。【ボヤンス・リザード】で攻撃!」


 【ボヤンス・リザード】攻撃力1400

    vs

 【先導の王 構捧犠カササギ】攻撃力1200


 トカゲの尻尾がカササギに向かう。しかし、到達する寸前に【構捧犠カササギ】は姿を消してしまった。

「え! どこに行ったんだ?」

 少年が動揺していると、強い日差しが頭上から舞い込んできた。

「解煌カード【英気えいき養う陽光ようこう】を発動した。区葉ターム『英断』を持つモンスター1体をステルスモードにして、効果を無効にする――」

 

【英気養う陽光】

 解煌カード

 指定区葉ターム:『英断』

 効果:このカードが場にある限り、指定先兵モンスターは効果が無効になり、ステルスモードになる。

 このカードが場にあり、かつ、自分モンスターの攻撃中に発動可能(この効果は、このカードが場にある限り1度のみ発動可能)。

 その自分モンスターの攻撃力は、その戦闘中のみ、相手モンスターの攻撃力分上がる。


 聡情が説明を続ける。

「ステルスモードのモンスターは戦闘に参加できない。これでお前のモンスターは、俺の【構捧犠カササギ】に攻撃できなくなった」

 少年が舌打ちをする。運よく聡情のデッキのカードを当て、彼の防御を突破したはずが、こうも簡単にかわされたのだから無理もない。

 これが聡情のモンスター――景章札スートロケートの力だ。単体でも優秀な効果を持つモンスターが多い上に、解煌カードで姿を変化させることでさらなる力を発揮する。岳積も稽古で対戦する際は、彼の戦術に苦しめられることが少なくなかった。

「ターン終了」

 少年はいらちを抑えられないのか、ぶっきらぼうに言い放った。


 手札

 聡情:3枚

 少年:4枚


 TURN3

 聡情のターン


「俺のターンだ――」


 ドローフェイズ

 手札:3枚

 場:1枚(ステルスモードの【先導の王 構捧犠カササギ】は除く)

 総出場枚数:4枚

 

 1枚ホールド(2枚をデッキの下に戻す) 3枚ドロー

 手札:4枚


「メインフェイズ。【天球てんきゅう弓哮きゅうこう】を召喚」

 その手に弓矢を携えた、青紫の獅子が召喚される。日は落ちたが、まだ完全に夜になりきっていない空を思わせる。

 

【天球の弓哮きゅうこう

 固有希少値:金 攻撃力1400

 効果:このモンスターは、自身より固有希少値が低いモンスターとの戦闘では破壊されない。

(『慈愛』の『景章札スートロケート』。天に向かって放つ矢は、無数の流星となって敵を襲う)

 

「バトル。【天球の弓哮】で【ボヤンス・リザード】を攻撃――」

 獅子が弓を構え、両腕がじわじわと離れていく。


 【天球の弓哮】攻撃力1400

   vs

 【ボヤンス・リザード】攻撃力1400


「攻撃力が同じなら、互いのモンスターが破壊される。相打ち狙いか――」

 少年がそう言うと、獅子を照らすように天から日が差した。

「さらにこの瞬間、【英気養う陽光】の効果を発動。相手モンスターの攻撃力分、自分モンスターの攻撃力が上がる。効果は一回しか使えないけどな――」


 【天球の弓哮】攻撃力2800(1400+1400)

   vs

 【ボヤンス・リザード】攻撃力1400


 照らされた獅子の弓から矢が放たれ、トカゲに命中する。【ボヤンス・リザード】は破壊された。


 少年の累積ダメージ:2800(0+2800)


「ターン終了」


 手札

 聡情:3枚

 少年:4枚


 TURN4

 少年のターン


「僕のターン」


 ドローフェイズ

 手札:4枚

 場:0枚

 総出場枚数:4枚

 

 1枚ホールド(3枚デッキの下に戻す) 4枚ドロー 

 手札:5枚


伏兵リアクターカード【信ずる者が引く引き金ドメスティック・ルーレット】を発動――」

 聡情と少年。彼らの丁度、中間辺りに一丁の銃が現れる。

「互いのデッキをシャッフルして、それぞれ1枚ずつドロー。ドローしたカードを互いに確認し、それがモンスターカードなら、ドローしたプレイヤーはその攻撃力の半分のダメージを受ける――」


信ずる者が引く引き金ドメスティック・ルーレット

 伏兵リアクターカード

 発動条件:互いのデッキにカードがある場合。

 効果:互いのデッキをシャッフルし、その後で、それぞれ1枚ずつドローする。

 ドローしたカードを互いに確認し、モンスターカードをドローしたプレイヤーは、そのモンスターカードの攻撃力の半分のダメージを受ける。


「運の勝負ってことか。お前、そんなんばっかりだな」

「言ったでしょ。『僕は自分の運に自信があるんだ』って」

「そう何度も上手くいくかよ」

 二人のデッキケースが光っているのが見える。互いのデッキがシャッフルされた。

「さあ、覚悟はいい?」

「望むところだ」

 聡情もやる気のようだ。

「いくよ――」

 両者が同時にカードを引く。

 カードを確認した少年がニヤリと笑う。

「僕のカードは【コンフリクト・ポールポジション】。専煌カードだ。よって、ダメージなし!」


【コンフリクト・ポールポジション】

 専煌カード

 指定先兵モンスター:【モンスター・コール・プロブレム・ワイバーン】

 効果:???


 聡情が悔しそうな顔をする。少年が言っていた自身の強運は、どうやら嘘ではないらしい。

「あんたは?」

 少年は待ち遠しそうに尋ねた。

「俺のは……」

 黙ってカードを見せる。

 対戦相手は嬉しそうに笑みを浮かべる。


wormワーム wonderワンダー wreakリーク

 固有希少値:金 攻撃力1100

 効果:このモンスターが戦闘でモンスターを破壊し、相手の墓地に送った場合に発動可能。

 そのモンスターと同じ区葉タームを持つモンスターカードを2枚まで、可能な限り相手の手札・デッキから墓地に送る(墓地に送るカードは相手が選ぶ)。

(『覇者』の『景章札スートロケート』。手から放つ猛毒で戦力を削ぐ)

 

「モンスターカードを引いたね。攻撃力の半分、550のダメージを受けてもらうよ」

 黒いムカデの戦士が現れ、聡情と向かい合う。銃を握ると主に向かって引き金を引いた。

 弾が聡情に命中すると、苦しいのか、彼は胸を抑えて膝をつく。

 

 聡情の累積ダメージ:550(0+1100÷2)

 

 少年は、そんなのお構いなし、と言わんばかりにターンを進行する。

「ドローしたカードは互いの手札へ――」

 

 聡情の手札:4枚

 少年の手札:5枚


「僕のターンは続く。【オールイン・ワイバーン】を召喚」

 少年がカードを投げると、タキシードを着たワイバーンが現れた。少年同様、表情には自信が満ち溢れている。この龍が彼を主に選んだ理由が――彼が無理矢理カードにした可能性も否定できないが――岳積にはわかる気がした。

「【オールイン・ワイバーン】の効果発動。1ターンに1度、ルーレットを回す」

「ルーレット?」

「あれだよ――」

 少年が指を差す。彼の指の先には、この町の名物――花時計があった。

 

【オールイン・ワイバーン】

 固有希少値:金 攻撃力1500

 効果:自分が相手に効果ダメージを与えているターンに1度、発動可能。

 成功確率60%のルーレットを回し、その結果によって以下の効果を適用する。

 ・成功:このターンに自分が相手に与えた効果ダメージの倍の数値分、このモンスターの攻撃力が上がる。

 ・失敗:このモンスターの攻撃力は0になる。

(怖いもの知らずの『ギャンドブルム』。『度胸』があり、失敗することなど考えない)


「成功確率60%のルーレットを回し、成功すればこのターンあんたに与えた効果ダメージの倍の数値、つまり、1100ポイントが【オールイン・ワイバーン】の攻撃力に加算される。失敗すれば攻撃力を失うけどね」

「【ボヤンス・リザード】の透視といい、さっきの拳銃といい、そう何度も上手くいってたまるかよ! 次はきっと……」

 岳積は嫌な予感がしていた。少年からは、ある種の狂気ともいえる自信がうかがえる。この世の不確定要素を司っているような気配さえ感じた。

 花時計は五色に分けられていて、トゥリーの言ったように、まるでピザのようだった。十二時の辺りから時計回りに、白、黄、黒、青、赤の花が円を五等分している。

「白と黒と赤が当たりだから――」

 少年が説明すると時計の針が回転を始めた。五仕旗のために、町全体の時間を歪めてもよいのか疑問だったが、花時計で時刻を確認する者は周囲にはいなかった。

 岳積の取り越し苦労をよそに、ゆっくりと針が速度を落とす。針は十一時を少し過ぎたあたりでピタッと止まった。その真下には、白い花が静かに息をしている。

「白! ルーレットは成功だ! 攻撃力は1100上がるぞ!」


 【オールイン・ワイバーン】攻撃力2600(1500+550×2)


「くそ! 何でだ? お前まさか、細工してるんじゃないだろうな?」

「何だと! 言いがかりだ!」

 聡情と少年がもめる。

 確かにここまで何もかも上手くいっては、彼を疑うのは自然なことだ。しかし、岳積には少年が小細工をするような人間に思えなかった。彼は心の底から自分の強運を信じている。

「バトルフェイズ! 【オールイン・ワイバーン】で【天球の弓哮】を攻撃!」


 【オールイン・ワイバーン】攻撃力2600

    vs

 【天球の弓哮】攻撃力1400


 ワイバーンは服のポケットから銃を取り出し、獅子に突きつける。

Мillionaireミリオネア Dischargeディスチャージ!」

「ちょっと待て」

 引き金が引かれる寸前、聡情が口を出した。

「なんだよ? 命乞いでもするのか?」

「そんなわけねえだろ。伏兵リアクターカード【伏兵ふくへい進行しんこう】」

 聡情がカードを発動する。

「手札のモンスター1体を召喚し、そのモンスターがこのターンの全ての攻撃を受ける。つまりお前は、今から俺が場に出すモンスター以外を攻撃できないってわけだ」

 

伏兵ふくへいの進行】

 伏兵リアクターカード

 発動条件:自分の手札にモンスターカードがある場合。

 効果:手札のモンスター1体を召喚する。

 このターン、相手はそのモンスター以外の自分モンスターを攻撃できない。

 この効果が相手モンスターの攻撃中に適用された場合、次の効果を適用してもよい。

 相手はその攻撃を中断できず、そのモンスターの攻撃はこの効果で召喚されたモンスターへ向かう。

 

「だからなんだよ? そんなに強力なモンスターが手札にあるってのか?」

「俺が出すのはこいつだ――」

 聡情が手札のカードを投げる。

 彼の場に現れたのは、ムカデの戦士。先のドロー対決で、聡情に向かって引き金を引いた【wormワーム wonderワンダー wreakリーク】だった。


wormワーム wonderワンダー wreakリーク

 固有希少値:金 攻撃力1100

 効果:このモンスターが戦闘でモンスターを破壊し、相手の墓地に送った場合に発動可能。

 そのモンスターと同じ区葉タームを持つモンスターカードを2枚まで、可能な限り相手の手札・デッキから墓地に送る(墓地に送るカードは相手が選ぶ)。

(『覇者』の『景章札スートロケート』。手から放つ猛毒で戦力を削ぐ)

 

「そいつ、さっき【信ずる者が引く引き金ドメスティック・ルーレット】で手札に加わった――」

「ああ。こいつがお前を倒すキーカード……になるかもしれない」

 聡情は歯切れの悪い言い方をした。

「そんな奴、何体いたって同じだ」

「まあ、待てって。ついでにこいつも使っておく。解煌カード【怪鳥のまう砂丘】――」

 聡情がカードを使うと、ムカデが姿を消し、周囲に砂の世界が広がった。

「何だ、ここは……」

「これも【英気養う陽光】と同じさ。区葉ターム『覇者』を持つモンスターをステルスモードにし、効果を無効に。その代わり、新たな効果を発揮できる――」

 

【怪鳥のまう砂丘】

 解煌カード

 指定区葉ターム:『覇者』

 効果:このカードが場にある限り、指定先兵モンスターは効果が無効になり、ステルスモードになる。

    ???


「またモンスターを別の姿に……」

「お前は【伏兵の進行】の効果でこのターン、【wormワーム wonderワンダー wreakリーク】以外の俺のモンスターを攻撃できない。でも、【wormワーム wonderワンダー wreakリーク】はステルスモードになったから攻撃対象にならない。この意味わかるか?」

 理解したのか、少年は小声で悔しそうに言った。

「僕はこのターン、もう攻撃できない……」

「そういうことだ」

「攻撃ができないなら――」

 少年が手札を一枚手に取る。

「【ルーラーズ・マッド】。成功確率20%のルーレットを回し、当たればあんたに2000ダメージ!」


【ルーラーズ・マッド】

 伏兵リアクターカード

 発動条件:自分がルーレットを回し、成功したターン中。

 効果:成功確率20%のルーレットを回し、成功すれば、相手に2000ダメージを与える。


 花時計の色がわけられる。五色がそれぞれ二分割され、十色になった。白、緑、黄、オレンジ、黒、灰色、青、水色、赤、ピンクと鮮やかな色彩になった。

「白か黒に止まれば、2000ダメージだ」

 針が再び回転を始める。やがて、ゆっくりと針が止まる。

 針は白の花のところに落ち着いた。

「またか!」

 聡情は怒りというよりは、感心の方が強そうな様子だった。

「ダメージを受けてもらうぞ――」

 花時計の針が聡情の方を向き、先端からレーザーを放とうとしている。

「これでもまだ僕がイカサマをしてるって疑うのか?」

「いや、『これでも』って。ここまで当たりが続いちゃ、余計に怪しいだろ」

 少年はむっとする。

「だけど、どっちでもいいや。そんなに運試ししたいなら、俺も強力してやるよ」

「なに?」

 その瞬間、砂丘の砂が巻き上げられ、聡情の場を包んだ。

「【怪鳥の棲まう砂丘】の効果を使う。俺がダメージを受ける場合、俺が自分の場のモンスターの中から1体を選び、それをお前が当てる。簡単だろ?」

「でも、あんたの場のモンスターは【天球の弓哮】だけじゃないか」

「と思うだろ?」

「え……」

 聡情の場を覆い尽くす砂の渦。その中。目を凝らすと三つのシルエットが見える。

 一つは弓を持った獅子。そしてもう二つは……。

「俺の場には【先導の王 構捧犠カササギ】と【wormワーム wonderワンダー wreakリーク】もいるんだよ。ステルスモードになって戦闘ができないから、場にいないように錯覚するけどな」

「そうか。モンスターカードとして場に残っていることに変わりはない」

「そういうこと。そしてここからが本題。お前が俺の選んだモンスターを見事当てることができれば、俺が受けるダメージは倍になる」

 聡情が受けるダメージは2000。それが倍になればダメージは4000となり、聡情の敗北が確定する。

「でも不正解なら、俺が受けるダメージは0になるし、本来受けるはずだったダメージは選んだモンスターに加算される――」


【怪鳥の棲まう砂丘】

 解煌カード

 指定区葉ターム:『覇者』

 効果:このカードが場にある限り、指定先兵モンスターは効果が無効になり、ステルスモードになる。

 このカードが場にある限り、自分がダメージを受ける場合、以下の効果を適用できる(ただし、この効果によって変動したダメージに対しては、この効果を適用できない)。

 自分の場のモンスターカードをシャッフルし、自分がその中から1枚を選ぶ。

 相手がカード名を指定する。

 指定したカード名が選んだカードと同じなら、自分が受けるダメージは倍になる。

 それ以外なら、選んだそのモンスターの攻撃力は、そのダメージ分上がり、自分へのダメージは0になる。


「どうだ? 面白いだろ? 当てられれば、俺に勝てるんだからな。確率は三分の一だ。五分の一を当てられたお前なら、当然正解できるとは思うけど――」

 少年は言葉を失っている。

「どうした? 俺はもう選んだぞ」

 三つのシルエットは一つになっていた。

「わかってるって……」

 少年の顔からは汗が垂れている。考え込んでいるであろう、その様を見て岳積は思った。

 

 ――決着はついた。

 

 決心がついたのか、少年が口を開く。

「あんたが選んだのは……【先導の王 構捧犠カササギ】だ!」

 聡情の場を抱いていた砂が払われていく。

 彼の場に残されていたのは、弓矢を携えた獅子――【天球の弓哮】。

「よし! 俺の勝ち! 俺へのダメージは0になり、【天球の弓哮】の攻撃力は2000上昇する!」

 花時計の針は手の平を返したように角度を変えると、獅子の持つ弓矢に向けてレーザーを放つ。


 【天球の弓哮】攻撃力3400(1400+2000)


「嘘だろ、だって……」

 少年はこの状況が信じられないのか、ぶつぶつと何かを言っている。

「まだ何かあるのか? ないなら、俺のターンいくけど」

 

 手札

 聡情:1枚

 少年:3枚


 TURN5

 聡情のターン


「俺のターン――」

 

 ドローフェイズ

 手札:1枚

 場:3枚(ステルスモードの【先導の王 構捧犠カササギ】、【wormワーム wonderワンダー wreakリーク】は除く)

 総出場枚数:4枚

 

 0枚ホールド(1枚をデッキの下に戻す) 2枚ドロー

 手札:2枚


「バトル! 【天球の弓哮】で【オールイン・ワイバーン】を攻撃!」


 【天球の弓哮】攻撃力3400

   vs

 【オールイン・ワイバーン】攻撃力2600

 

夜分やぶん霹靂へきれき!」

 花時計の力を受けた弓矢は、強い光を帯びてワイバーンに刺さった。

 

 少年の累積ダメージ:6200(2800+3400)


 聡情の勝利

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