第2話 私の夢 Part2(ゲーム)
岳積 vs トゥリー(聡情)
TURN1
岳積のターン
「私の先攻。【アボイドバッファ‐マッシュ】を召喚――」
岳積が手札を投げると、鋭い二つの角を持つ獣が現れた。
【アボイドバッファ‐マッシュ】
固有希少値:銅 攻撃力600 耐久力600
効果:このモンスターの攻撃中に発動可能。
迎撃モンスターの固有希少値がこのモンスターの固有希少値より高い場合、迎撃モンスターの攻撃力または耐久力を500下げる。
(苦手とすることが多い、不器用なバッファロー。唯一得意とする『突進』は、『回避』に利用することもできる)
「ターン終了」
手札
岳積:4枚
トゥリー:5枚
TURN2
トゥリーのターン
「それじゃあ、僕のターンね」
トゥリーが聡情をちらりと見る。
「ああ。わかってるよ」
トゥリーは聡情が持つ手札をのぞき込むと、その中の一枚を指差した。
「これ、出して」
聡情が指示されたカードを前方へ放つ。カードは黒いローブで覆われたモンスターに姿を変えた。
【忠誠を惑わす策士 カンパ】
固有希少値:金 攻撃力0
効果:???
(巧みな『魔界話術』で敵を味方にしてしまう『術士』。他人の弱みを見通す)
「攻撃力0か……」
岳積が小声で言う。トゥリーに聞こえるように発したわけではないのだろうが、彼はその言葉に反応した。
「五仕旗は攻撃力だけで戦うわけじゃないよ。効果発動!」
【カンパ】が【マッシュ】にのろのろ近づき、耳元で何かを
用が済んだのか【カンパ】が聡情の場に――トゥリーの場だが――戻ってくる。
「あ!」
岳積と聡情がほぼ同時に声を上げた。
帰りは二人だった。主人のもとに戻る術士の背後を、敵である獣がついてきている。
「どういうことだ……」
岳積が呆然としていると、トゥリーが得意げに解説を始めた。
「【忠誠を惑わす策士 カンパ】は、相手のモンスター1体を自分の場に引き入れる効果があるんだよ」
【忠誠を惑わす策士 カンパ】
固有希少値:金 攻撃力0
効果:自分ターンに1度、発動可能。
相手の場のモンスター1体を指定する。
このモンスターが場にある限り、そのモンスターを自分が従える。
(巧みな『魔界話術』で敵を味方にしてしまう『術士』。他人の弱みを見通す)
【マッシュ】は敵陣に到着すると振り返り、岳積と対峙する姿勢をとった。
聡情は【カンパ】が【マッシュ】にしたことを思い返す。術士は何かを言っていた。その言葉に獣は心を動かされ、操られたのだろう。
「まだまだいくよ。
聡情は我に返り、宣言されたカードを投げる。カードは黒い霧のようになると、【カンパ】の体内に吸い込まれていった。
術士が【マッシュ】を指差すと、その獣はマリオネットのように動かされ、岳積の方へ飛んでいく。獣の角が岳積を突いた。
「う……」
岳積の累積ダメージ:600(0+600)
「【裏切りのショット】は名前のとおり、君から奪ったモンスターの攻撃力分のダメージを与えるカード。僕の累積ダメージが1000を超えると破壊されるけどね」
【裏切りのショット】
解煌カード
指定
効果:自分の累積ダメージが1000を超える場合、場にあるこのカードは破壊される。
自分ターンに1度、発動可能。
自分の場のモンスターの中で、カードの所有者が相手であるモンスターの攻撃力を合計し、その分のダメージを相手に与える。
この効果を発動するターン、自分は攻撃できない。
タチの悪いデッキだ。聡情は思った。
【カンパ】と【裏切りのショット】は場に残り続け、岳積は毎ターン、ダメージを受けることになる。
次のターンで新たにモンスターを召喚すれば、【カンパ】を破壊することができるかもしれないが……。
「僕のターンは終わりだよ」
手札
岳積:4枚
トゥリー:3枚
TURN3
岳積のターン
「私のターン――」
ドローフェイズ
手札:4枚
場:0枚
総出場枚数:4枚
1枚ホールド(3枚をデッキの下に戻す) 4枚ドロー
手札:5枚
「メインフェイズ。【ギャランティ・レイピア】を召喚――」
【ギャランティ・レイピア】
固有希少値:銀 攻撃力1300 耐久力800
効果なし
(『銀の鎧』を纏った『細剣士』。強者の『代替』として活躍できるほど、会得している技の種類が多い)
岳積が頼りにしている銀の剣士が姿を現した。こうして向かい合うと、頼もしく見える。
「何の効果も持たないそいつで何をしようってのさ」
トゥリーの挑発も、岳積には効果がない。
「さらに専煌カード【ブラックホール・ラッカー】を発動――」
岳積がカードを投げると、そのカードが【ギャランティ・レイピア】に入り込む。剣士が纏っていた銀の鎧は黒く色を変えていく。
「色が変わった……」
不思議そうにしているトゥリーの脇で、聡情はできるだけ態度に出さないように努めた。
岳積の奴。こいつの戦略を逆手にとるつもりだな。
【ブラックホール・ラッカー】には、場にある限り1度だけ、相手の効果ダメージを反射する効果がある――。
【ブラックホール・ラッカー】
専煌カード
指定
効果:このカードが場にある限り、自分が効果ダメージを受ける場合、そのダメージを代わりに相手に与えることができる。
この効果を適用し、相手にダメージが与えられた場合、このカードは破壊される。
まずはこのターン、【ギャランティ・レイピア】で【カンパ】に攻撃を仕掛ける。【カンパ】の攻撃力は0。当然、トゥリーは手札のカードで攻撃を防ぐだろう。そして次のターン、奴はもう一度【カンパ】の効果を使い、【ギャランティ・レイピア】を奪うはず。
しかし、それこそが岳積の狙いだ。【裏切りのショット】の効果を発動した瞬間、【ブラックホール・ラッカー】の効果が適用される。奪われた【マッシュ】と【ギャランティ・レイピア】の攻撃力合計、1900のダメージがトゥリーへ――。
【裏切りのショット】はプレイヤーの累積ダメージが1000を超過した時点で破壊される。このコンボが成立すれば、奴の戦略を大きく崩せるはずだ。
「バトルフェイズ。【ギャランティ・レイピア】で、【忠誠を惑わす策士 カンパ】を攻撃」
聡情が考察したとおり、岳積は攻撃の指示を出した。黒く光る鎧の剣士が剣を構える。黒色に銀の輝きを帯びた波を放とうとしている。
【ギャランティ・レイピア】攻撃力1300
vs
【忠誠を惑わす策士 カンパ】攻撃力0
「残念、甘いよ。解煌カード【裏切りの
剣から攻撃が放たれる寸前、【マッシュ】が【カンパ】を
「【裏切りの
【裏切りの敷居】
解煌カード
指定
効果:自分の累積ダメージが1000を超える場合、場にあるこのカードは破壊される。
自分の場に、カードの所有者が相手のモンスターがいる場合、相手モンスターの攻撃中に発動可能(カードの発動と同時に効果を発動することも可能)。
自分の場にいる、カードの所有者が相手であるモンスターに攻撃対象を変更する。
【ギャランティ・レイピア】攻撃力1300
vs
【アボイドバッファ‐マッシュ】攻撃力600 耐久力600
トゥリーが声を出す。
「さらに
そうだろうなと思いながら、聡情は青色のカードを一枚放つ。そのカードは大きくなり、聡情とトゥリーに背を向けるかたちで、発動された。
剣を構えていた【ギャランティ・レイピア】は、突然勢いを失う。仲間を見捨てる決心がつかないのか、攻撃に移ろうとしない。
「
意を決して振った剣は、力なく波を放った。ダラダラと進んだその黒い波は【マッシュ】に向かうも、簡単に回避されてしまう。
「【同郷返報】は、カードの所有者が同じモンスター同士が戦闘する場合に発動できる。その戦闘でのモンスターの破壊を防ぐんだ。君の【ギャランティ・レイピア】と僕の【マッシュ】は、元々は2枚とも君のカードでしょ? 君のモンスターも仲間を倒すのは、後ろめたいんじゃない?」
【同郷返報】
発動条件:カードの所有者が同一のモンスター同士が戦闘する場合。
効果:その戦闘で互いのモンスターは破壊されない。
その効果は、戦闘の補助やモンスターの強化など、多岐にわたる。
発動条件があるが、それを満たせばいつでも手札から発動することができる(相手ターンであっても発動可能)。
基本的に、効果を発揮した後は、墓地に送られる。
効果が終了した【同郷返報】のカードは、場から消滅した。
「どう? せっかくの攻撃も無駄だったね」
しかし、岳積は顔色ひとつ変えていない。彼もこの事態は想定していたのだろう。もっとも、これくらいの判断ができないのなら、エージェントは務まらない。
「ターン終了だ」
「涼しい顔をしていられるのも今のうちだよ」
手札
岳積:3枚
トゥリー:1枚
TURN4
トゥリーのターン
「僕のターン――」
ドローフェイズ
手札:1枚
場:4枚
総出場枚数:5枚
0枚ホールド(1枚をデッキの下に戻す) 1枚ドロー
手札:1枚
「まずは【カンパ】の効果を発動――」
【カンパ】が【ギャランティ・レイピア】に近づくと、耳打ちをした。剣士は先のターンの獣と同様、敵陣に移動する。
「さらに、
滝が頭上から落ちてくる。
「僕の場にいる、君の仲間だったモンスターの数だけドローできる。僕の場には2体いるから、2枚ドローするよ――」
【背信の滝壺】
発動条件:自分の場に、カードの所有者が相手であるモンスターがいる場合。
効果:自分の場の、カードの所有者が相手であるモンスターの数だけドローする。
聡情は滝に手を入れる。握りしめると、カードの感触があった。デッキケースのカードがこちらに動いてきたのだ。
トゥリーの手札:2枚
「そして、もう1枚【
再び滝が落ちてくる。聡情は同じ要領でカードをドローした。
【背信の滝壺】(2枚目)
発動条件:自分の場に、カードの所有者が相手であるモンスターがいる場合。
効果:自分の場の、カードの所有者が相手であるモンスターの数だけドローする。
トゥリーの手札:3枚
トゥリーは聡情が持つ手札を眺めると嬉しそうに笑う。
聡情は焦った。ここで
トゥリーは上機嫌でターンを進めた。
「【
聡情が投げたカードから、黒いススが飛び出した。【ギャランティ・レイピア】に向かうと、彼の体を覆う。
岳積が嫌そうな顔をした。
「このカードは、場の解煌カードか専煌カード1枚を破壊できる。僕はこの効果で君の場の【ブラックホール・ラッカー】を破壊するよ」
【
発動条件:場に解煌カードまたは専煌カードがある場合。
効果:場の解煌カードまたは専煌カード1枚を破壊する。
「そのカード、絶対何かあると思ったんだ」
このモンスター、幼いために未熟だと思っていたが、勘が
聡情がそんなことを考えているうちに、黒い鎧は元の銀の鎧に戻ってしまった。
「考えてみれば、ススで綺麗になるっていうのもおかしな話だよね!」
トゥリーはケラケラと笑っている。相手を馬鹿にしている感じはしない。純粋に楽しんでいるだけのようだ。
聡情は申し訳なくなり、岳積に謝罪した。
「悪いな、岳積……」
「なぜお前が謝る? お前は指示どおりにカードを発動しただけだろう」
「それはそうだけどよ。なんか、こっちに立ってるとお前を敵に回してるみたいで……」
「そんなことを心配するなら、最後まで私と戦うことに集中してくれ。お前が余計なことをして彼の機嫌を損ね、カードが谷底に落ちる方が問題だ」
「お前、俺のデッキそんなに心配してくれるのか?」
「お前がカードを失くしたら、私は誰とコンビを組めばいい?」
「そっちか……」
二人の会話をトゥリーが遮る。
「君はまだ僕に勝つ気でいるの?」
「そうだが」
「切り札を破られたのに? 僕は【裏切りのショット】の効果発動――」
【カンパ】が【マッシュ】と【ギャランティ・レイピア】を指差す。
突進と斬撃が岳積を襲う。岳積は後方に飛ばされた。
「2体の攻撃力合計は1900。それと同じ数値のダメージを受けてもらうよ」
岳積の累積ダメージ:2500(600+1900)
仰向けになっていた岳積が起き上がる。トゥリーはその様子が気に入らないようだった。
「君は友だちに裏切られても平気なのかい?」
「彼らが裏切ったのではない。君が裏切らせたのだろう?」
「僕は、人間に酷い目にあって悲しかったよ……」
トゥリーは下を向く。しばらくして、トゥリーは再び口を開いた。
「僕は仲間のモンスターたちと一緒に暮らしてたんだ。人間の中にだって優しくしてくれる人はたくさんいたよ。でも――」
そこまで話すと、トゥリーは苦しそうな顔をした。過去の記憶に、顔が歪められているのがわかる。
「一ヶ月前、
トゥリーの口調からは、怒りが消えない。火は次第に大きくなるようだった。
聡情は岳積と顔を見合わせる。
おそらく彼らを襲撃したのはバーストだ。奴らの悪行は後を絶たない。
「僕は仲間のカードを集めてデッキをつくった。だけど、
そこまで聞いて、聡情は嫌な予感がした。岳積はこちらを見つめている。
「まさか、俺が大きな声を出したから、動揺して――」
トゥリーはうなずいている。
「ごめんよ。いけないことだとは思ったんだけど、あの時はこうするしかなくて……」
「だ、そうだぞ、聡情」
「何で俺のせいなんだよ!」
申し訳なさそうにしながら、トゥリーは続けた。
「でも、君たちでもあいつらを倒すのは無理かもね。こんな言い方悪いけど、僕に負けるようじゃ――」
「おい! 『君
聡情が異議を唱える。
岳積が言った。
「聡情はどうか知らないが――」
「なんだその言い方!」
岳積が咳払いをする。
「聡情はどうか知らないが、私なら君の役に立てるかもしれない」
「どういうこと?」
「先のことはまだわからない。私が君に勝てる可能性もないわけではないということだ」
「本当に? ここからだよ?」
「ここからだ」
トゥリーは半信半疑のようだ。そして、思い出したかのように言った。
「ターン終了……」
手札
岳積:3枚
トゥリー:2枚
TURN5
岳積のターン
「私のターン――」
ドローフェイズ
手札:3枚
場:0枚
総出場枚数:3枚
0枚ホールド(3枚をデッキの下に戻す) 5枚ドロー
手札:5枚
岳積はドローしたカードをしばらく見つめていた。その目はこちらの場と手札を行ったり来たりしている。
聡情は直感した。
――始まる。逆転が。
「【ディタッチ・デリンジャー】を召喚――」
シルクハットをかぶった銃士が召喚される。マスクをしているせいで、表情はほとんど見ることができない。
「効果を発動――」
銃士は走ると、トゥリーの場の【ギャランティ・レイピア】の隣に並んだ。
「どういうこと?」
突然のことに、トゥリーは驚いている。
「モンスターを自分の場に招き入れるのが、君の戦術なんだろ? 今度はこちらからお邪魔したということさ。【ディタッチ・デリンジャー】は、腕利きのスパイ。次のターン終了時まで相手の場に移ることで、私に2枚のカードをもたらす――」
【ディタッチ・デリンジャー】
固有希少値:銀 攻撃力1300 耐久力400
効果:自分ターンに1度、発動可能。
このモンスターを次のターン終了時まで相手の場に移す(その間は、この効果を再度発動することはできない)。
この効果で場を移った後で、この効果を発動したプレイヤーは次の効果から1つを選んで適用する。
・自身から見た相手の手札を確認する。
・2枚ドローする。
(群れを嫌い、単独で行動することを望む『銃士』。巧みな声帯『模写』で敵を欺く)
銃士が岳積に向かって何かを投げ渡し、彼はそれを片手で受け取る。手には二枚のカードが握られていた。
岳積の手札:6枚
「続いて、【
岳積の場に灰色をした狼が現れる。両足で立つと、両手を広げてうなり声を上げた。
【晴れる闇に喚く狼‐バーク】
固有希少値:銀 攻撃力1100 耐久力500
効果:???
(
「さらにもう一枚、こいつを召喚する。【
赤黒い体をした龍が召喚される。やや透けた体からは脈が見え、血液が流れているのがわかる。
【
固有希少値:銀 攻撃力1000 耐久力200
効果:このモンスターはステルスモードの時、以下の効果を得る。
・このカードが場にある限り、自分の効果で場のカード1枚を指定して効果を適用する場合、複数のカードを指定して効果を適用してもよい(ただし、その効果の条件に適するカードのみ選択可能)。
(赤黒い『
「そして、解煌カード【
【
解煌カード
指定
効果:このカードが場にある限り、指定
「ドラゴンが姿を変えた……」
「これにより【
ステルスモードとは、モンスターの状態の一種。
ステルスモードのモンスターには、以下のルールが適用される。
・戦闘できない(攻撃することができず、相手はそのモンスターを攻撃対象にすることもできない)。
・ドローフェイズにおけるドローで参照する総出場枚数にカウントされない。
・ステルスモードのモンスターのみが場にいる状態で、自身のターンを終えるプレイヤーは、【
「【晴れる闇に喚く狼‐バーク】の効果を発動。相手モンスター1体の攻撃力と耐久力を合計し、その分のダメージを相手に与える。与えるダメージは、現在のターン数だけマイナスされるがな――」
【晴れる闇に喚く狼‐バーク】
固有希少値:銀 攻撃力1100 耐久力500
効果:自分ターンに1度、発動可能。
相手モンスター1体を選び、そのモンスターの攻撃力と耐久力との合計分のダメージを相手に与える。
ただし、この効果で与えるダメージは、現在のターン数×100分少なくなる。
(
「僕の場で合計値が一番高いのは、【ギャランティ・レイピア】の2100。そこから今のターン数分の500を引いて……。それじゃあ僕は倒せないよ」
そこで岳積の口角が上がった。
「いや――」
アンプに姿を変えた龍を指差す。
「【
「え……」
この効果が成功すれば、ダメージ量は3500。
0(【カンパ】攻撃力0)+1200(【マッシュ】攻撃力600+耐久力600)+2100(【ギャランティ・レイピア】攻撃力1300+耐久力800)+1700(【ディタッチ・デリンジャー】攻撃力1300+耐久力400)-(TURN5×100×3回分)
=5000-1500
=3500
トゥリーの累積ダメージは一瞬で3000以上に――確かにこれなら、岳積は勝利できるが……。
【バーク】が空に向かって吠える。その音は【
トゥリーの場のモンスターは苦しそうに耳を塞いでいる。
トゥリーが聡情を叩く。唇がせわしなく動いていたが、何を言っているかわからない。聡情は、それがカード発動の指示だと理解した。
そのカードを投げる……。
【ディタッチ・デリンジャー】が片手で耳を塞ぎながら、手に持った
狼はその場に倒れ込んだ。
やかましく鳴り響いていた音は、次第に大人しくなる。
トゥリーの累積ダメージ:2500(0+2500)
「何?」
岳積は合点がいっていないようだ。
「危ない、危ない。
力を使い果たしたのか、銃士は膝をつく。
【ディタッチ・デリンジャー】攻撃力300(1300-1000)
【捨て身の
鉄槌カード
発動条件:自分の場のモンスターの攻撃力合計が1000以上の場合。
効果:自分の場のモンスターの攻撃力を100ポイント単位で合計1000下げる(複数体指定可能)。
相手モンスター1体を指定することで、このターンそのモンスターは攻撃できない。
カードの効果を無効にするものが大半だが、その効果を持たずとも、一部のレアカードはこれに分類される。
発動条件があるが、それを満たせばいつでも手札から発動することができる(相手ターンであっても発動可能)。
基本的に、効果を発揮した後は、墓地に送られる。
また、全ての鉄槌カードは
基本的にカードの効果は、発動した後ですぐに処理される。
しかし、
たとえば、「モンスターを破壊する」効果を持つ効果Aが発動した場合、それに対して「効果を無効にする」効果を持つ効果Bを
通常ならば(
「【バーク】の効果より先に【捨て身の
「そう! それでギリギリ生き残ったのさ」
【晴れる闇に喚く狼‐バーク】の効果によるダメージ
0(【カンパ】攻撃力0)+1200(【マッシュ】攻撃力600+耐久力600)+2100(【ギャランティ・レイピア】攻撃力1300+耐久力800)+700(【ディタッチ・デリンジャー】攻撃力300+耐久力400)-(TURN5×100×3回分)
=4000-1500
=2500
トゥリーの累積ダメージ:2500(0+2500)
「本来ならデメリットとなる効果を、ダメージ回避に使うとはな」
岳積は感心している。
「だがこれで、君の累積ダメージは1000を超えた。【裏切りのショット】と【裏切りの敷居】は破壊される――」
カードが破壊され墓地へ。【カンパ】は心なしか、元気を失ったように感じられた。
対照的に、トゥリーは他人事のような態度をとる。
「でも、まだまだ追い詰めるからね。【オミッション】発動――」
聡情が手札を使うと、巨大な振り子時計が現れ、ボーンと音を鳴らした。
【オミッション】
発動条件:相手の効果によって、自分が効果ダメージを受けた場合。
効果:そのターンのメインフェイズをスキップする(メインフェイズにこの効果を適用する場合はメインフェイズを終了する)。
「君の効果でダメージを受けた場合に発動できる。このターンのメインフェイズはこれで終わりだよ。新しいモンスターを召喚して、攻撃することはできないからね」
岳積は黙って聞いている。
「【バーク】は【捨て身の
「攻撃できるモンスターならいるさ」
「どこに?」
「ここに――」
岳積はアンプになった龍に目をやる。
「だから、そいつは戦闘できないって言ったじゃん。自分でそうしたんでしょ?」
岳積は相手にせず、カードを発動した。
「
【見習い】
発動条件:相手の墓地に
効果:手札を2枚墓地に送り、相手の墓地から
「私は手札の2枚の
【称号の結界】
発動条件:相手モンスターの攻撃中。
効果:攻撃モンスターの固有希少値が、迎撃モンスターの固有希少値より大きい場合、その攻撃を無効にする。
固有希少値の差が2段階以上の場合は、このターン、相手は更なる攻撃をできない。
【采配の翼】
発動条件:相手の墓地にモンスターがいる場合。
効果:相手の墓地からモンスター1体を選び、自分の場に復活させる。
自分の累積ダメージが2500以上の場合、そのモンスターはターンを問わず、自身の効果を発動できる。
ターン終了時に、そのモンスターは破壊される。
「君の墓地の【
【
発動条件:場に解煌カードまたは専煌カードがある場合。
効果:場の解煌カードまたは専煌カード1枚を破壊する。
「【
トゥリーがハッとする。
「そう。私は、【
【
解煌カード
指定
効果:このカードが場にある限り、指定
「これにより、【
変形していた龍が、元の赤黒い姿に戻る。
「攻撃が可能になった」
「そんな……」
「【
【
vs
【忠誠を惑わす策士 カンパ】攻撃力0
赤黒い龍は口から液体を吐いて、術士の体に穴を開けた。
トゥリーの累積ダメージ:3500(2500+1000)
岳積の勝利
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