第43話 43 誓いのキスを見ると結婚はいいものだと思うのは気のせいだろう
「では、両者ともに誓いのキスを。」
よくある結婚式場の顔の彫りの深い西洋人の神父を連れてくるわけではない。
珍しくも純日本人。
発音の訛りからすると北海道などの北側の人間だろうか。
基本的にそれっぽくするために、外国人を起用する結婚式場が多いのだが、これはこれでなかなか言い。
そして新郎新婦は誓いのキスを果たした。
二人の目は真剣そのもので、未来のこれからをイメージさせるにふさわしい堂々とした佇まいだ。
父親に当たるであろう新郎の親戚はこれでもかと一眼レフを連写する。
「…息子が一人立ちするか。」
この男も感慨深いものを感じているのだろう。
息子を送り出すことは、前世の可愛い娘を送り出すのと同じこと。
オトンもその姿を見ては懐かしむ様子がうかがえる。
最初に結婚したのは姉だがその時はオトン泣かなかった。
だが長男である兄が結婚しときはオトンは泣いた。
当時は驚いたものだ。
オトンが泣くことはほとんどなかった。
それこそそれ以来俺と喧嘩した時まで泣かなかったか。
兄はオトンにとっての理想になったのだろう。
どれだけの苦難があろうと理想、自分の望む結果を得ることができた親や教育者にとってこれ以上にない喜びだろう。
もちろん、俺みたいに理想を押し付けられるのを嫌がる人間もいる。
自身の理想が他人の理想と同じとは限らないし、幸せとも限らない。
だからその分ぶつかり喧嘩もする。
時には叩いたり、カッとなって力を振るうこともあるだろう。
ぶつかり、はじけ合いながら擦り合わせる。
前回も話した内容だが、これから新郎新婦にも起こりえる内容だ。
異なる意見を交えながら、彼らはともに進んでいく。
それで離婚するようであればそこまでの夫婦であった、それだけの事。
挙式場に戻り、披露宴の続きを行う。
「披露宴につきましてはまずは馴れ初めをご紹介する余興を行わせていただきます。
新婦様たちの妹様とそのご友人でございます。」
段取りの話では視界を行っている人は新郎の恩師に当たる人らしく、道場の師範らしい。
リハーサルでとことん練習したが、ここは葵さんには悪いけどイレギュラー対応をしてもらおうか。
「はい、ではお二人の馴れ初めですが、実は本日の主役真黄さんの片思いから始まりました。」
「え?」
葵さんはそんなの聞いていないと言わんばかりの表情を浮かべた。
そりゃそうだ。
運命の出会いで済ませる手筈になっていたからだ。
真黄さんも驚いているけれども気にしない気にしない。
葵さんに気が付けるように尚且つ他の参列者には気づかれないようにハンドサインを送る。
「ジムでひたすらトレーニングをしている新郎さんを見たところから始まりました。」
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44 仕事ができる人間は失敗を対処できる奴だ。
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