第32話 32 夜這いとは既成事実をするまでのことを示すのか否か
「むぎゅぎゅぎゅ」
コアラかな?
さすがに寝かしつけるのに疲れて寝てしまった俺は、姉よりも柔らかく抱きしめる葵さんにコアラを幻覚を見た。
初姉はライオン、もしくはトラ、もしくはグリズリー、もしくはホッキョクグマ。
遅く寝て早く起きてしまった。
「こうして寝顔を見る分には誰だってかわいいものだよね。」
「ふにゅにゅ、ばんかい、きょうかすいげつー。」
「よくわからないこと言ってるねえ。」
頬をつんつんしながらかわいい生物を愛でる。
「ふえ?
ふえええええええええええええええ。
にゃにゃにゃにゃ!」
「大丈夫?
飛び上がるように起きるのは身体に悪いよ。」
猫が飛び起きたのかと思うほど高く飛び上がった。
そのまま布団を被り、何やらぶつぶつ言っている。
「これは小説なら同年してもおかしくないのに、一郎さんは手を出すことがなかった。
つまり私に魅力がない?
は、そもそも私がすぐに寝てしまうのが悪かったんだわ。
起きて誘惑すればよかったのに私のバカバカ。
今から襲ったら強制性交罪になる?
でも、襲ってでも手に入れ居たい。
今まで幼馴染の芽衣さんがガードを固めてきたからなかなか入りに行けなかったし、やっとハッキングされた形跡もなくなったからお姉ちゃんに無理言って言い寄ったのに。」
ふ、複雑な気持ちになる内容を言われている。
子どものころから好きだったと言われたのは素直にうれしい。
しかし、その愛が強すぎるのは如何なものか。
相思相愛などという物語は題材としてはインパクトに欠ける。
ここからインパクトを持たせるには強力なライバルが心を揺さぶり、メインヒロインへの手を出すの阻む大きな壁として書き上げるのが上出来。
「あーでも、乗り越えられる壁があった方がいいけど、幼馴染の壁は大きいよ。
好きなものとか全部知っているし、引き際も知っているところが駆け引きの強弱をつける技術が私よりもはるかに上。
主人公なら強力なライバルを前にしても立ち向かうのは必須。
しかし、ここで負けヒロインにでもなろうものなら、夕焼けに向かって河川敷の堤防を走り、涙を流す未来が見える!
あーやだどうすればいいんだ。」
そこで葵さんを勝ちヒロインにするには、幼馴染ヒロインを乗り越える必要はある。
多分、悩んでいるのはハーレム系の物語を紡ぐのかどうか。
もちろんハーレム系もいいけど、その先の物語が波乱万丈になる可能性がある。
波乱万丈になるってことは、ハッピーエンドにはならない。
例えば一人の女性を選んだ場合、世の女性がうらやむことをしてはいるけど、それなりに愛した人を独り占めできる利点がある。
ハーレムだと望むものは半分しか手に入らないし、さらにはライバルがすべてを取りに行く危険性もある。
「物語としては若いうちに蹴りをつけた方がハッピーエンドにはなりやすいし良いとは思うけど、当人たちの幸せを決めるのは当人たちだけだし。
俺の場合は社会進出をしたい気持ちが強い。
ハーレムの時点で拒む可能性が高いと思うけど。
その点は葵さんはどう思う?」
「そうですねえ。
社会進出をしたい男性は少なからずいますが、その中で結婚も行いたいという男性は極めて稀有な例です。
しかし、極めて稀有な例でありながら、その当人たちにはハーレムを作らないということが一致しております。
ノルウェーを除くすべての例でハーレムを形成していないのが挙げられます。
精子提供に関しては多少の義務的なものがありますので他者へのボランティアで事務的なものではなく生々しいものも行っておりますが、基本的にはハーレムを作らないと考えるべきです。」
この一連の会話は、いつも葵さんとやっていたことだ。
客観的に己らを分析して、どのようなストーリーなら面白いか考え出す行為。
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