第31話 31 夜這い

 寝巻、という服装において最も重要視されるものは何か。

 それは寝心地がよくなるような機能である。

 寝心地を割いてまで気にすることがあるとしたらば、見た目である。

 男性はタツ物はタツ、欲求はもちろんある。

 男女比不平等世界によくある男性はタタナイことはない。

 色仕掛けは通じる。


 答えはもうわかるな。

 寝巻の中で1970年代に発売された寝るための機能よりも男性を誘惑することを目的とした視覚的機能を持つ寝巻。

 ベビードールである。


 今までそういうことを考えないようにするために敢えて葵さんの容姿に関して考えることしていなかったが、ここでは見つめざるを得ない。


 寝るために来ているから化粧を一切していない、多少毛穴の見える肌。

 だが角栓がほとんどないから目立つ変色は起こしていない。

 スキンケアはしてきたばかりか、多少化粧水と乳液の香りがする。

 この家の姉たちが使っているものとは異なり多少桃っぽい香りがするのが特徴か。

 髪はさらさらで手櫛をすれば綺麗に通り、艶やかな黒色をしているので触り心地はいいことこの上ないだろう。

 瞳を開ければ、クラスメイトだったころに幾度となく見た二重で大きく見える程度の普通の大きさの瞳が見えるだろう。

 クラスの男子からは特段綺麗とかそういうことを言われる人ではなく、地味で大人しいそういう子だ。

 でも、普通の子を好きになったのは本能かもね。

 前世だと有名になった不良バスケ漫画のエンディングテーマの歌詞の登場人物に近いかな。

 違うところは、素が地味だということ。


 むしろ幼馴染のほうが心は近いかも。


 と、目の前の女性とは違う女性のことを考え始めると葵さんが目を見開いた。


「....お、おはよう?」


「むぎゅー。」


「ん?」


「むぎゅうー!」


「あーはいはい。」


 寝ぼけているのか、焦点が定まっていない。

 この短時間に深い睡眠に入るとは、うらやましい限りだ。

 寝つきがいい分、寝起きが悪いのかな。


 抱きしめてあげる。

 求められればやるくらいに男気があるのだ。

 後は幼い言葉だと幼児に言われているようだから性的欲求の面が半減する。

 とは言ったものの、魅力的な姿をしている彼女には襲ってしまいそうにはなるけどね。


 薄いベビードールの布から感じる彼女の体温は暖かい。

 そして、初見ではそこまで大きくないと思われていた乳房は当たる範囲が大きく、抱きしめた時には前面に柔らかさを感じる素晴らしい配置環境だった。

 父性が勝るか、オスが勝るか微妙なラインに入り、やることをやりたい衝動に駆られる。


「オトンの仕業か。」


 他の姉が突撃してこない時点で察知するべきだった。

 他の女が大事な弟の部屋に突撃する時点で初姉以外にも察知する姉ズが止めにかかる。


「まあ、かわいいものだけどねえ。

 早く結婚してほしいって親心かあ。」


 安心させてくれよというオトンからのメッセージに多少心が揺らぐ。

 目の前に居るのは初恋の子。

 特別な特別である。

 一夫一妻制の感覚が抜けない自分には幼馴染の顔もちらつく。

 ずっと一緒にいるという観点から自分のことをこれ以上教える必要のない存在は楽ができる。


 初恋の人とは新たに人間関係を構築しないといけない。

 人間関係を新たに構築するのは疲れる。

 陽キャたちなら人間関係を新たに構築することを苦痛に感じないのだろうけど、俺にはつらい。


「ふう。」


 しかし、どうしたものか。

 目がさえてしまう。

 そのうち眠ると思うけど、それまではあやすように頭をなでてあげるかな。

 後は背中を少したたいてあげる。

 暇だから彼女の安眠を願ってやれることをやってみようか。


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32 夜這いとは既成事実をするまでのことを示すのか否か

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