第29話 29 拘束された姉、約束された安らぎ

 その日の夜。


「初....そろそろ弟離れをしろと言っているだろうに。」


「ふがふがふんがーーーー(燃えろ弟魂!)」


 オトンは俺の安眠のために大量のベルトと口枷、目隠しで拘束することによって姉からの侵略をカバーしてくれた。

 普段ならこのようなことはしないのだが、なぜか今日はいつもにもまして狂暴化していたが故の処置である。

 俺が手を出すまでに怒っていたことも起因する。

 たまに初姉の欲求暴走が来るときはこうして監禁にも思えるような形で俺から離す行為をよく行っていた。


 初姉は俺に対する我慢ができなくなってしまうと制御が難しくなるが故の処置だ。

 口まで拘束しているのはノリもあるけど、初姉の自己暗示は恐ろしいもので俺からご褒美が貰えると自分で勝手に解釈し始めた時に声に出して自分を催眠状態にすることで拘束具である革のベルトを腕力だけで引き千切ったほどだ。


 危険な存在は全てを拘束するに越したことがないのだ。

 そのうち守護霊か何か出しそうで怖い。


 時に戦争で使われた訓練された動物はミサイル一基に匹敵するほどの戦力とみなされる場合がある。

 何が言いたいか。

 初姉はこのまま放っておくとブラザーコンプレックスどころか、国を相手にしてでも俺を手に入れる財宝を付け狙う犬になりそうで怖いのだ。


「ふう、やっと一息つける。」


 最近忙しいことばかりだったせいか、このようにゆっくりと夜の時間を過ごすのは久しぶりな気がする。

 何も披露宴の準備やバイトが嫌なわけじゃない。

 労働をした分、評価され、対価を得るのは楽しい。

 大学の勉強も底辺大学とはいえ、学び、研究を行うことには変わりない。


 他にも幼馴染との邂逅、初恋の人との邂逅。

 成長という観点では幼馴染との出会いが大きかったかもしれない。

 動画配信者ということもあり、それなりに契約を結び生活している彼女の仕事を手伝ったり教育するのは、前世の仕事では考えられない量の仕事の種類の多さではあったが成長につながるいい機会だった。

 よくも悪くも会社という組織は分業制で役割がある。

 本業となるモノとは別にシステムを作る部署や契約を結ぶための営業部、そのほか経費などの財政管理を行う部署が必要なのだ。

 前世でやってきたことはその分業の一握りであったことは大いに実感した。

 個人事業主な分、一人でより多くの書類を見なくてはならなかったし、就職したての新入社員時代を思い出したよ。


 初恋の人の邂逅は、言うまでもない。

 ドキドキだった。

 ときめくってものじゃないがドキドキする。

 好かれようとしたい気持ちが前面に出てしまうのを抑えるのに精一杯。

 前世の大人というのを自分に言い聞かせて話すのがやっとかもしれない。

 幼馴染はハラハラかな。

 どちらにせよ波乱万丈な出会いではあったか。


「こういう動画見るのもたまにはいいかな。」


 前世でもたまに見ていた動物動画を見て癒されている。

 後ろから覗いている目があるとは知らずに。


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次回

30 オトン....地上最強の男と同じ価値観っすか?


仙台七夕行ってきて疲れて登校し忘れたスライム道

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