第25話 25 ピシ、ピシピシ、壁に耳を当て鉄骨にまで到達する音

「お泊りですか?」


「ええ、結婚式も近づいてきましたし、そろそろ新郎の方との仲もさらに深めていく時期に入るでしょう。

 そんな中、改めて親と子だけで話すのもいいかもしれません。

 私の時もそんな感じでしたし、兄弟姉妹の多い世の中で面と向かって話すのはいい機会になるかと思いますがいかがですか?

 もちろん葵さんの意思は尊重しますが。」


 真黄さんと朱里さんは目を見合わせた。

 陸奥さんのことを聞けば、必要なことなのかもしれないと気づける。

 最近は結婚式の準備に奔走していたのだが、確かに結婚前に最後に話す機会は合ってもいいかもしれない。


 成人を迎えた上で、嫁ぐのだから、思うところもあるだろう。

 今まで成長していく過程で幾十とぶつかり、幾万と苦楽を共にしたのはほかでもない家族だから。


「いいよ。

 お姉ちゃんの晴れ舞台前だもの。

 それに私も子どもじゃないし、友達の家に泊まるくらいの気持ちでお泊りさせてもらうからね。」


 ピシ


「では、愚娘になりますが、お預けしてよろしいでしょうか。」


「ええ、でももしかしたら、一郎と恋仲になっているかもしれませんがね。」


「うふふふふ、それはないですよ。

 この子ったら、男の人とまともに話したことがなくて緊張しまくっているんですから。」


「それはどうかな。」


 ピシピシ


 本人居る前でそんな話をするかな。

 それと、多分だけど壁から音が漏れているんだよねえ。

 恐ろしいくらい強い力でめり込むような音。

 姉ズが、壁に顔をめり込ませて盗聴しているんだろうけど、怒りが頂点にまで達して壁にめり込んだか。

 

 葵さんも家では猫を被っているのね。

 猫を被るということは他の人の家に行っても猫を被るものだけど、姉ズたちがちょっかいを掛けないといいが。

 芽衣さんの時と同じようなことにならないといいけど。


 そんなことを思いながらリビングの壁を見ていく。

 ズズズという音を立てながらゆっくりと戻っていく様は軽くホラーだ。


「短い間ですがよろしくお願いします。」


「うん、まあ何もないけど歓迎するよ。

 っと僕はひと眠りするから、部屋の案内とかはオトンに聞いてもらって。」


 さすがに一徹やってから、内容のすり合わせにリハまでやっていると若い体でも、休息を求めてしまう。

 疲れた体に鞭を打ち、睡眠を求めるために自室に帰っていった。


「すまないな。

 泊まってもらうのに、相手がすぐに寝てしまって。

 10分くらいすれば熟睡するだろうから添い寝をするならその時間に行ってくれ。」


「では、一郎さんを堕とせたらお義父さんと呼んでも?」


「構わんよ。

 だが、社会進出を望むのが一郎の考えだから、断られてもアタックし続けないと取れないぞ。」


「それだけ煽っておいてひどい人ですね。

 まあ壁に耳をつけて盗み聞きをする人よりかはいいかもしれませんが。」


「へえ、お前たち!

 人様の会話を盗み聞きするとは何事だ!」


「に、にげるんだよー。」


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次回

26 姉弟喧嘩はEろいと言えるのか?1

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