第24話 24 家族を取り戻せ!~世紀末~初姉視点
「最近、一郎に女のにおいをべったりつけて帰ってくることが多くなっている。」
葵さんが来る少し前あたり、陸奥家シスターズ代表は口を開く。
彼女には警察犬並みの嗅覚と土佐犬並みの戦闘力を持つために他の上位シスターズを差し置いて家族カースト上位の地位へと駆け上ったブラコンである。
全ては弟を捉え、抱きしめ続けるために鍛え、全肉体をホールドするための柔らかさとしなやかさを兼ね備える肉体を身に着けた。
「オサナナジミとかハツコイの人の披露宴とかいっぱいあるからね。
一つは友情、もう一つは催し事だからしょうがないんじゃない。」
「甘い!
甘い!
甘すぎるわ!
スイパラ行った帰りに甘味処寄って、そのあと家で生クリーム餡子ケーキ食ってるレベルで甘すぎるわ!」
「何言ってるかわからない。」
「とにかく!認識が甘い!
オサナナジミはオカンから長年付け入り許可を得た女狐。
ハツコイはオトンに擦り寄り、マイブラザーのマイブラザーの初めてを搔っ攫うつもりライオン!
その程度の認識でマイブラザーを取り戻せると思うな!」
他シスターズはその世紀末のラスボスっぽいセリフには心打たれることはなかったが、大切な男である弟が狙われているとようやく認識し、敵と定めたのだった。
敵と定めたからには必要な対処を行わなければならない。
全ては弟と自分たちの幸せな結婚生活を送るために。
「まず、一番厄介なのは披露宴出席する伊藤 葵というマイブラザー........のハツコイを射止めたアマだ........」
眉間に跡がくっきりと残るほど表情は険しい。
歯ぐきから血が出るほど、歯を食いしばり、歪な歯が軋み合う音を部屋に響かせる。
他のシスターズもまた、歯を食いしばる。
弟を持つ姉なら誰もが言われてみたいセリフ。
将来大きくなったらお姉ちゃんと結婚するを誰が言われるかと争っていた。
それをポッと出の女に奪われていた。
しかも一切気が付くことなく。
中学の時、無理矢理にでも既成事実を迫り、快楽落ちさせなかった自分たちが憎い。
今思えばマイブラザーが綺麗になり始めたのもあの頃。
つまり、恋をしたから綺麗になった。
恋をすれば、その人に対してより良く見てもらいたいと思うようになり、自然と化粧や肌のニキビなどを気にし始める。
あの時は服装にこそ気を使っていなかったが、ニキビができないようにするためのスキンケアをし始めたのは事実。
オトンに言われてやり始めたのかと思ったが、絶賛恋をしていた。
「してどのように、対策を行うかだが。」
「私の嗅覚でここに来るようだ。」
「な、なんだって。
なら、行く先々に罠を張らなければ。」
「まて、オトンの顔に泥を塗ることになる。
そして、オトンは家に上げたならこう提案するはずだ。
今日は泊っていかないかと。」
なぜそこまで断言できる。
何を隠そうこの初、馬鹿である。
天才と馬鹿の境界線を行ったり来たりする馬鹿の比率が多い馬鹿である。
結局ただの馬鹿。
しかし、弟に関することが交われば天才になる。
究極の弟馬鹿である。
彼女の野生の勘とでもいうべきものが、オトンや葵さんの行動を手に取るようにわからせた。
「つまり泊まったら最後。」
「我ら、弟好好大好姉姉拳(マイブラザーすきすきだいすきねえねえけん)で成敗してくれるわい。」
「「「「フハハハハハ」」」」
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25 ピシ、ピシピシ、壁に耳を当て鉄骨にまで到達する音
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