第21話 21 オサナナジミのおせっかいを焼く元おじさん
「ねえねえ、葵さんって俺のこと嫌いとか言ってた?」
披露宴の余興に関する打ち合わせに多少の不安が残りつつもあるため、他の人の意見も聞きつつ案を出すために芽衣さんの家を訪ねた。
聞けば披露宴の招待は受けられたのだが、母親の朱里さんと新婦の真黄さんの方は快く承諾してくれたらしいのだが、葵さんがなにやら不満を漏らしていたと伝えられたらしい。
又聞きの又聞きなので、正しく情報が伝わっているか不明点が多いが、葵さん自身の結婚の話をしたときに否定的な意見を持っていたので特に俺個人が好きとかそういうのではないだろう。
誘うときには、一応紹介する体で度が過ぎる女性たちのガードマンとしての役割をするためと話したそうだ。
まあ、謳い文句みたいなものだとは思われただろうけど、クラスメイト名簿には載っているという理由で無理やり入った感は否めない。
他に挙げられるとすれば、俺の知らない芽衣さんと葵さんの中での不仲になる因果関係を持っているということか。
そもそも、ストーキングで情報を集めるような人と関わりたくないのは致し方がないと思うのだが、そのあたりは分かっているのだろうか。
「先日あったのは、あくまでも披露宴前の顔合わせだからね。
それ以外は話していないから、わからないけど、心当たりとかはあるの?」
「特にはないんだけど、あ、でも悪い虫がつかないようにするためにほかの女子たちに思いっきり嫌がらせしたよ!」
笑顔で言うことじゃねえ。
そら、罵倒系配信者が似合うわな。
人を一切の悪気を感じさせずに、悪いことしていると言っている。
違和感を一切感じさせない動作は人にうけるから、生活できているんだね。
「多分原因はそれだね。
嫌がらせをしたのなら嫌われて当然じゃないか。」
「えー?
でも、葵さんには手紙を書いただけだよ。」
「なんて手紙を書いたか内容は覚えている?」
「当時全員の女子に配ったから覚えているよ。」
なんか俺に近づくなとかそういうタイプの手紙かな。
特定の男の子に近づくなって言われて、多分無意識で近づく女子をにらみつけていたのかもしれない。
だから、俺の青春ってそんなに甘酸っぱい感想がなかったのかな。
俺だけのせいじゃないのか。
「えっと確か、一郎に色目使ったら呪うぞって書いたはず。」
うん、一歩上を行った脅迫文を送ってたね。
未成年だから通報されなかったのかもしれないけど、クラスにやばい女子がいるって追われたことは間違いないだろうね。
そもそも教員には気づかれなかったのだろうか。
いや、教師にも出していた可能性がある。
「もしかして、教員の人にも渡していた?」
「もちろん!
色目使う狐たちには釘を刺さないと!」
100%黒。
いい配信者になれるよ。
いい配信者ってのは視聴者の印象に残るやつのことを言うんだ。
ネタじゃないガチの天然物は長続きすること間違いなしだろうよ。
「うん、君は集団に属するのが非常に苦手なタイプだっていうのは分かった。
嫌われて当然のことをしたのに自覚がないのは、集団に属する上で人を不快な思いにさせても気が付かない可能性が高いね。
配信関係で知り合いとかいなかったの?」
「知り合いとか居たしコラボもしてるよ!」
うん、楽しく生きているようで何より。
とにかく明るい馬鹿の相手をしている気分でちょっと気疲れした。
「ある程度の人間関係を構築しているようで何より。
差し支えなければ他にはどんなことをしているのか確認してもいいかな。」
おせっかいになるかもだが、この子の人間関係が怖い。
個人事業主として、他企業とも相手取るため、契約書もまともに読んでいないのではないかと疑ってしまう。
「うん、いいよ。」
と言って契約書やら問い合わせメールなどを一通り見させてもらった。
「えっと、この内容に対して返答で同じ内容を二回伝えているから気を付けて。
他にもこの契約書には更新するかの旨を聞く必要があるらしいから、文書は、ここのネットに上がっているのをフォーマットにして書いて。」
「は、はい!」
「これから披露宴に行く前にビジネスマナーも大方叩き込むから、覚悟してね。」
「よ、喜んで!
てとりあしとりおしえてください!」
「そんな無駄話をしている暇はないよ。」
披露宴の相談はどこに行ったのか、自分ことを棚に上げて心配な幼馴染のおせっかいを焼くことになった。
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次回
22 オサナナジミとハツコイと本とメガネ
スライムdou
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