第17話 17 披露宴に行くって言ったらオサナナジミが壊れた件

「大変だったね。

 お姉さんたちが一郎のことをみんな大好きすぎるのは知っていたけど、女は怖い。」

 

「姉ちゃんたちは、結婚相手を探す気もないからね。

 今はそういう世の中だからしょうがないとは思うけどね。」


 今話しているのは、無事に病院を退院したオサナナジミの芽衣さん。

 退院した手で、精密検査も無事できたので、近場のファミリーレストランで談笑している。

 というのも、栄養失調だったこともあり、食べなければならないと医師に言われていて最初の流動食が終わり軽めの食事もクリアした所なので、重めの食事を食べたいと言われたのでお茶することもかねてファミリーレストランをチョイスした。

 家で手作りすることも考えたけど、人を招き入れるほどの間柄ではないし、お互いに緊張してしまい前回のようにまた倒れてしまっては病院の人にもいい迷惑だろう。

 ということで、食べられる料理の種類がたくさんあるファミリーレストランにせざるを得なかった。

 栄養失調にもなってしまったくらいだから、それなりに量を食べられる状態にしたなら、たくさん食べるためにたくさんの料理を並べないといけない。

 いわゆるデブエットというものだ。

 

 テーブルの上にはメインとなる食事に加えて、副菜を5つ並べている。

 お金は張るが、そこはしょうがない。

 デブエットにおいて大事なのは食べること、そして筋トレ以外で動かないこと。

 デブエットに有酸素運動はNGな人も多いので要注意。

 他にも同じ食事を単一で撮り続けるのは良くない。

 プロテインやエネルギー補助食品にばかり頼っていると普段の食事でとれているはずの栄養素が取れずに栄養失調にかかる患者は多くいる。

 食欲増進もかねて様々な色、香りを発する複数の料理をそろえることで食欲を刺激する。

 

 長時間配信を最近やっていたらしく、どうにも食事をまともにとっていなかった彼女は減量はできたが試合前への調整に失敗したのボクサーそのものといった感じで、がりがりに瘦せていた。

 むしろ、あの日の外に出ていたことが驚きでしかないのだが、最近寝れてもいなかったらしい。


 だから昼夜がわからなくなったままほっつき歩いていたところに振られるという大ダメージを食らったせいで、精神的なものだけが彼女を動かしていたがそれが一度切れてしまったのではないかというのが俺の勝手な見解。


「まあ、僕のことはいいから、食べようか。」


「う、うん。」


 一般的な若者にしては、食欲が薄い芽衣さん。

 いきなりたくさんの料理を見せられても食欲が湧かないのは仕方がない。

 こういう人に食欲を湧かせるには必要なことがたくさんある。

 一つは食べやすい大きさに切ること。


 フォークとナイフを追加でもらい、一口サイズに切っていく。

 彼女の口の大きさを見ながら味を楽しめつつ噛む回数がちょうどいいくらいになるように。


「それでさ、どうしてそんなことになったの?」


「ああ、どうやら披露宴に出席しないと行けなくてさ。」


 唐突にだが、宇宙を見たことはあるだろうか。

 比喩だが、人間には受け入れがたいことがあると、遠くを見ているような錯覚に陥る現象がある。

 俗説的な表現としてよくあるのが宇宙を見ていることだ。


 手からフォークを落とし、食べ物のソースが口から垂れようと気にするそぶりがない芽衣さんは現実ではなく、遠いナニカを見ていた。

 つまり宇宙を見ているということだろう。


「披露宴に出席、新郎として....結婚、パートナーがすでにいた。

 ストーカーしていた時はそんなそぶり無かったのに。

 まさかマッチングアプリ。

 それともオンラインゲームでの出会い婚?

 そんな実際にあったことがあるはずないのに。

 たまたまクラスメイトだった線もあるのでは、でもそんなラノベみたいな展開なんて起こりえるはずがない。

 それこそ天文学的な数値でしかありえない。

 あのクラスでマッチングアプリをやっていたのは早乙女 戯さんだったはず。

 オンラインゲームをやっていたのは葵さん。

 どちらかを排除しなければ、日本に在住の殺し屋は....ダークサイトまで潜らないと。」


 おっかないことしか言っていない。

 殺し屋って、独占する気満々だし、妄想は言っているよね。

 未来のことまで妄想するなんて、地雷系ってやつかしら。

 ヤンデレ?

 よくわからないけど、軌道修正しないと犯罪者になりそうなので正さないとねえ。


「披露宴には親の付き合いで行くだけだよ。

 元クラスメイトの子でPTAで一緒になったよしみで呼ばれただけだから気にしないで。」


「そういって結婚するんでしょ!

 俺を置いてい行くなよ!」


「置いていかないから、なんなら一緒に来る?」


「ウソダウソダ、ソウヤッテカンゲンヲダシテオレヲアザムクキナンダ。(嘘だ嘘だ、そうやって甘言を出して俺を欺く気なんだ。)」


 そのように言われてしまうと何もできなくなるのだけれど。

 ネタ晴らししてもここまで疑うとは。


「信じる信じないは自由だけど、お残しは許さないよ。」


「ア、ハイいただきます。」


 話を聞かないのはいいけど、箸が止まるのはよろしくない。

 きちんと食べられるときに食べてもらわないとまた倒れてもらっては困る。


「まったく、思い込みが激しいのは仕事の間柄では良いことかもしれないけど、人の話は最後まで聞いて判断するように。

 それとご飯を全部食べることは昔のマナーだけど、食べられるときに食べないと力付かないよ。」


「ごめんなさい。」


「話を戻すけど、ビジネスマナーとして披露宴に出席したことがないから、経験としていくだけだよ。

 新郎のところに立つわけじゃないし、あくまでも新婦の家族の友人って感じで参列するから顔合わせは最低限だし、お願いすれば芽衣さんも呼んでくれると思うから勘違いしないこと。

 いいね。」


「モグモグ、ゴクッ。

 はい。

 でも、結局誰の親戚の結婚式に呼ばれるの?」


「さっき言ってた葵さんだよ。」


「....アオイサンダッテ........ヤッパコロソ」


「犯罪は駄目だからね。」


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次回

18 オシャレなカフェで披露宴前に顔合わせをするよ!

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