第11話 11 ストーカー、病院で目が覚める。

 天井を見るとそこは蛍光灯がかかっている白い天井だった。


「あれ、俺は?」


「ここは病院ですよ岡田さん。」


 光差す窓側を見れば、初恋の人!

 初恋の人が起きたら目の前にいるなんて、お伽話のような夢のシチュエーションに私の心拍数は頂点にまで達した。


「ふぇ、ふぇええええええ!!!!」


 もう一度気絶しかけた時、彼は人差し指を唇に当てた。


「病院では静かにですよ。」


「は、はい。」


 心拍数正常にまで急ブレーキをかけられた。

 この時の彼は紳士的な社会人のように感じられた。


「落ち着けたようで何よりです。

 では、現状把握はできそうですか。」


 診察されているみたいだ。

 男医と二人密室なムフフな関係。

 ブンブン!

 首を横に振って、邪な考えを振り払う。


「だ、大丈夫です!

 配信の後どうなったのか教えてください!」


「あなたが倒れてから、すぐに救急車をリスナーさんがお呼びしてくれました。

 スマホで位置情報サービスをオンにしてくれていたのが幸いして、警察の方々にもお世話になりながら、救急車を呼ぶことが出来ました。

 親御さんが居ない一人暮らしをしていたようですが、配信業という不規則な生活スタイルが今回のような体調不良を招いたようです。

 あなたは既に個人事業主に成っていますから、仕事も大切なのはわかりますが、一社会人として自己管理を行わないと早死にしてしましますよ。」


 優しいようで厳しい。

 お父さんっていう人が居たらこんな風なのかな。

 俺はお父さんって人が居なかった。

 よくあることで、精子提供によって生まれた母親だけの子だ。

 周りの子も似たような子どもばかりで父親を求めていた。

 同年代の男子たちはダメだ。

 成熟しきった大人の男性のような包容力のある人では無いと満足できないと、性格が未熟なままながらも、同年代の中では成熟していた私がお父さん役に選ばれるのは必然的なことだったと今は冷静に分析できる。


「はい。」


 怒られてしょんぼりしているのにとっても嬉しい。

 ニマニマしてしまいそうになる顔ぐっと引き締めないといけないのが口惜しい気もする。


「一先ず病院の先生と話してから退院後改めて、話しましょうか。

 これは私の連絡先です。

 悪用はしないようにお願い致します。」


「もちろんです!」


 悪用なんて絶対しない。

 ヒーロー兼お父さん兼未来の旦那さまなあなたを独り占めできる期間をなるべく長くしたいので絶対にしません!


「では、また退院後に会いましょう。」


 そういって去った後、俺は布団をかぶり、今までの事を思い詰めた。

 すると体が熱くなって、恥ずかしい気持ちしか浮かばなくなっちゃった。

 もう、どうしてくれるんだよ。

 一緒にお墓に入ってくれるまで絶対話さないんだから!

 俺が、私に成れる唯一の人。


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次回

一方そのころオトンはというと....

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