第6話 6  一人で複数の人を仕切るのはリーダーのすることである。

 ところでみなさんはスパン・オブ・コントロールという言葉をご存知だろうか。

 会社の管理職の能力適正などを測る時に見られる言葉で、管理する側の人間が制御しきれる最大の人数に事を差す。


 学校などの集団生活を行う中で班行動があるのも同じ理由でこのスパン・オブ・コントロールを学ばせるためと言われている。

 大抵の学級は30人程度で多くても40人弱、班6班に分かれることが多い。

 何が言いたいのかというと班長となった生徒や先生が指示を出す上で制御できるギリギリの人数が此処で割り出される。


 だいたい6から8人程度までが制御できる一般的な人の許容範囲ということ。


 あくまでも学校の生活空間で、議題、課題を与えられたうえで制御できる人数ということだ。

 

 家庭内ではより少ない数が制御できる人になる。

 何故か。

 家庭内という間柄では、相手の弱点などを全員が全員なりに取得できる状況下にあるため、主導権を握り続けるのが困難を極めるのだ。

 

 話を戻そう、オトンは専業主夫だ。

 5人の妻を制御下に起き、偶に直接来る倍以上の子どもたちの相手をしなくてはならない。

 管理職からして、自身の弱点を知っている部下を大量抱えている上に愚痴を聞かされることだってよくある。

 ブラック企業の管理職に他ならないではないか。

 世界で最も過酷な仕事、それは子育て。

 子育てをしている以上、これ以上に無い社会貢献だろう。


 年中無休、金銭的な報酬は一切ない。

 拘束時間、子どもが独り立ちするまで。


 しかし、達成できたのなら、どんな偉業を成した政治家や実業家以上にある誇り仕事をしたと語れる。

 人間一人を育て上げることはとても難しい。

 複数になればもちろん。

 そして、分担して行うにしても彼らに指示を出し、時に労うこともする。


「わかるよ。」


「何が解る。」


「ここまで俺を育ててくれたのはわかる。」


「なら....」


 どうして、この仕事を継いでくれないのか。

 専業で会ってくれないのかと願うオトン。


「俺は、それも含めて全部やってみてから決めたいの。

 俺の人生だろ。

 だから、見て知ってから決めたいの。」


 時には、世界を旅してみたい。

 所謂自分探しの旅に出かけたいと思ったことのある人はいないだろうか。

 これは陰キャ、陽キャに限らず全員に起こり得る症状かもしれない。

 実際に見たい。

 自ら望んで行う苦労は苦痛を癒すものだ。


 シェイクスピアの詩にあるように、人は稀に、自らを望んで苦労を行い。その時得た苦痛を糧にすることが出来る。


「たくさんの女性に襲われてボロ雑巾のように成るかもしれないんだぞ。

 外国にはやばい薬だっていっぱいある。

 男性に無理矢理生殖させるための薬も沢山だ。

 お前はそれでも一人で旅に出てみたいっていうのか。」


「違う、旅に出たいわけじゃない。

 社会を自分の目で見てから決めたい。

 大学に成ってから引きこもってばっかりだったし、高校まで時間は小さな社会しか見れていない。

 他の人の考え方も知った上で俺の結論を出したいんだオトン。」


 俺なりの意見をまとめてみた。

 これで駄目なら、良くて勘当かんどうされる。

 悪くて....


「わかった。

 よくわかった。

 なら、大学を卒業してからの進路はとくには言わない。

 ただ、家族のみんなには納得のいく説明をしてくれよ。

 反対する人が多いことは忘れるなよ。」


 …


 オトン視点


「なあ護、俺はあいつのことわかってやれてなかったのかな。」


 蜜月を嗜み、世界最古にして原初の娯楽を楽しんでいる。

 一通りの事後の段階で余韻を楽しみ終わったとき、オトンには悩みを打ち明け始めた。


「うーん、私はあの子の事を見て居ないから詳しくはわからないし、男の子を生んだことは私は無いからねえ。

 でも、子どもは時に親とは違う視点に立ちたいと思うことがあるっていうのは解るわ。

 私はあなたと会うまでは結婚なんてしないと決めていたもの。

 あなたは、親って憧れそのものだったんでしょ。

 あの子は違う。

 それでいいじゃない。

 あの子にはあの子だけの人生がある。

 親の私たちが決めることじゃないわ。」


 オトンの妻である護はそれなりの人生観を持っている。

 主観と客観を持った思考をしている。

 自分の主観を客観から見てどのように感じているかを調べているから、会社ではエリート管理職と名を挙げている。

 つまり本質を見ることに長けた人であった。

 大変さも解っているし、どちらに視点も持っているから夜の営みを誘われたときはちょうどいいと思い、相談していたのだ。


「なるほど、私は枷になっていたのか。」


「枷になっているとは限らない。

 むしろ、彼にとっては良い視点を大きくあなたの事だと思っている。

 でも悪い視点も見た上で、結果を導き出したいのよ。

 歯車の再開発じゃあないけれども、人の心を形成するには納得させる材料が必要な時があるのよ。

 アルバイトをやりたくなったのだって案外そういう社会を見てみたかったのかもしれないわよ。」


「護、君に相談してよかったよ。

 お礼と言っては何だがもう一度良いかな。」


 彼女の乳房はお世辞にも大きいとは言えないが、手全体ですっぽりと収まる形の良い物を持っている。

 プロポーションは全体的に細く形がいいと言うのが護の一般的な評価だった。

 夜の営みに関しては申し分ない。

 また楽しむとしようか。



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次回

7 オサナナジミらしい人、芽衣現る


スライム道

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