2章 第1話 旅立ち

 彼らは牢獄に入れられていた。バラバラだった。

「絶対に許せない‼」牢屋の一室で男性の声がする。

「……」

 フィウもエックスシードではない、旧市街地・ハネスト本町この街にいくことも増えた。彼はいつも行く場所は決まっていた。そしてある日のこと、彼女にたまたま会った。

 それはあの写真の彼女の姿だった。俺は恋人を連れた彼女を見た途端妙に安心してしまった。この暗黒の世界の中で一人じゃなかったんだと。

「あの時、一人でいた時、何年もの間、心の支えだったんだ。本当にありがとう。君の優しさを思い出したり笑顔を見ると、悲惨な状況でも、負けるか、頑張ろうっていつも思えたんだ」

「そういって貰えると嬉しいよ。こちらこそありがとう。ほんと、フィーくん助かってよかったね笑」

「ありがとう。さくらさんも無事にいてくれて良かったよ。さくらさんは俺の楽しかった時代の住人さ」

「その例え面白いね笑。私フィーくんの楽しかった時代の住人なの?笑」

「そんな面白い?笑。そうだよ笑。そういえば俺これから病院行くんだ。やっとこの世界も平和になったからさ。やっと遠い病院に行けるんだ。今までは遠すぎるところとかお金かかるところに行くのは許されなかったけれど。ハネストの外の世界の、遠くてもいい病院にさ」

「頑張ってね。連絡先交換する?」

「いいの。たまにメールしていい?」

「うん! いいよ‼」

「ありがとう」

「そういえば覚えてる? 俺が立志式の時、スピーチで学年全員の前で夢を語ったこと」

「覚えてるよ」

「やっぱり⁉ あれ恥ずかしくてさ……恥ずかしいからこそ、俺は夢を叶えなきゃいけないと思った。今はその場に立たせてくれて期待してくれた担任の先生に感謝しないといけないと思ってる。あの時はサッカーでプロになるって夢だった。その道へは行けなかったけど。今度は違う夢だけど。形は違っても夢を叶えてみんなを驚かせてやりたい。今でも俺たちはあの頃の延長線にいるんだ。なんて今は思う」

「いつもびっくりさせるようなこといってたよね笑。叶えようよ」

「そうだ今まで邪魔ばかりされてきたんだ。俺の夢は世界一の魔法使いになること‼」

「フィーのおかげでこの国にも平和が戻ったんだし、もう夢は幻想なんかじゃないと思う。一つずつ叶えてきてる、自分の願望をさ」

「ありがとう。やってみせる」

「ありがと。頑張ろうね」

 彼らはこの街で英雄になった。いろいろなことがあったけど、ほとんどの人が彼らに尊敬の念を抱き、英雄として向かいいれた。少しは時間を取り戻せただろうか。失っていた時間を……この大きな事件のことは、新聞で取り上げられ、その話題は口伝えで世界中に広がった。

「まさかあいつがね、凄いよ‼」

「なぎさ……頑張ったね……」

「フィーくん、そんなことがあったなんて……私たちもが守らなきゃ!」

 なぎさ彼は死んだ。だからこそ、フィウのことをそれに重ね合わせるものが多く、フィウは街の人に大切に扱われた。そしてそんな彼もまたなぎさのことを考えながら、こう思った。

「俺は奴らの所業を許せない。なぎさを俺のように酷い目に合わせた上殺すなんて。なぎさの意思は俺が引き継ぐ」

「ポロ‼ 元気になって良かったね‼」

「あれは俺たちの思い違いじゃなかったのか……昔はよく喋ったのに……その感情を今まで殺してきたのに。夢だったと思ってきたのに」

「キリアキリアキリア」

 この街を出て、髪をきり、グラマラスで笑顔の素敵で整った顔の彼女はまた戻ってきたこの街でもやはり人気者のようだ。やはり彼女は平和が映える。そう思った。

「み〜〜なぁ〜〜〜さ〜〜〜ん〜〜あ〜りぃ〜〜〜がと〜〜〜う」

 そのゆっくりとした喋りは世の男性を虜にした。

 カイ達は彼らを瀕死状態まで追い詰めたが、殺しはしなかった。ガオ、デハなどの治療を受けた彼ら四人はどこかの街、どこかの刑務所いるらしい。

「俺たちはやっと家の外を出れたようなもんだ。俺たちは外の人たち、先に進んで行った同級生たちに比べればまだまだ弱い。たまたまこの街のガオの悪業に早く気付き、英雄のように扱われただけだ。まだまだだ、そうだろみづき!」

「うん! だけどしばらくはカイと一緒に楽しみたい!」

 そうみづきはこの晴れ晴れとした天気の中言った。

「ああ、そうだな。今はこの時間を楽しもう。平和になったこの世界を。少し休暇でもとろうか」

「うん‼」

 そして少し時間が経った頃、一人の人物がこの街に降り立っていた。

「……」

 そしてそれをカイやフィウたちが見つけることになる。

「焼肉定食」

「もしかしてトビ?」そうフィウは尋ねる。

「まあ、そう……だ」

「久しぶり!違う高校だったけど近くの高校だったからいつも相談聞いてくれた。未熟だった僕を叱ってくれた人生で唯一の人だった」

 そうフィウは言った。

「ああ。そうだな。活躍は聞いている」

「僕も卒業した後、人狼大会で何度も優勝したのみてた。あの殺伐とした世界、それを考察で切り裂いていった。そのカリスマ性で人を説得し頂点に登りつめた。人々を説得し統一しながら勝利に導いていった歴戦の数々、そこで発せられた言葉にはとても勇気づけられた‼ 俺が布団にいた時、寝たきりだった時、ビデオ屋にたまたま仕入れられていたビデオでトビを見つけみるととても嬉しかった。あの頃もそうだったけどやっぱりこういう人物になりたいと憧れてた。そう家族は口がうまかったから、人狼というものが相手を見抜き、それに対抗する手段に思えた。説得し、勝ち抜いていく、そしてトビの人柄、カリスマ性、それが出来なかった無かった僕にはそれがとても凄い物に思えた」

「論破できない人だっている。そうか。ありがとう」

 カイとみんながやってくる。

「トビ!!」

「カイもトビと知り合いだったのか!?」

「ああ、いつも相談に乗ってくれて、洗脳(辛い)の人生から解放してくれた、自由や楽しさを教えてくれた師匠のようなもんさ」

「俺もなんだ」

「カイ、トビ。私は卒業してから外の世界へ行ってきた。大きな闇も宝の山もみてきた。凄かったぞー!!」

「外の世界について知りたい」カイは言った。

「俺も」

「外の世界は機密情報として国民には、公表されていないが、この外の世界はとてつもなく広く、そして悪が溢れており、危険。しかしそれに反して自由や夢もある。伝説の空星、エドガーが遺したこの世の全ての富の70パーセントとも言われる宝も」

「どうすればそこに行ける?」カイは追随して言った。

「そこに行きたければ、ハートオブトレジャーに行くこと。そこで外の世界の鍵は開かれる。そこにスタートレインの駅がある。一つと一つの島(空間)を結ぶ特殊なスタートレインだ。(島には行きと戻り、それぞれ二つその乗り場がある。)初めの到着地はブルースカイタウン……『自由の国』と呼ばれている。外の世界に行くのは危険。だけどそれだけ価値がある。彼らは、それぞれの派閥で世界をとる戦いをしている。私もその一人。その世界を制したものは世界を制すと言われている。逆にもし残虐な人達に世界が渡ったら、この国も平和(ただ)では済まない。それに今世界は理不尽な表面上は正義の形をした巨大な悪に支配されている。あなたたちもいつか気付くだろう。それと対峙しなければならないときがくる」

 彼の一言一言には説得力があった。(歴戦を勝ち抜いた彼の言葉には説得力があった。)

「行きたいです!」カイとフィウは言った。

「そうか。本当にその境界線、超えるという意志があるなら、何かを変えたいという意識があるのならこい。あそこに行けば全てを手に入れることが出来る。ここに五枚のチケットがある。(99の島を乗り越えた時たどりつくと言われている。最後の島へ。)(あとあちらの世界は連絡手段が全く使えない)」

「ありがとう! 本当に感謝感激です。トビ‼ 本当にいつも勇気をくれてありがとう‼」

「それではこれで失礼」

 そう言い終えると彼はすぐに姿を消した。

「そこがトビの行っていた世界か。俺は行くよ。俺は世界一の剣士になることが夢だ」

カイは言った。

「私はカイについていく。私は、魔法の頂点を」みづきは言う。

「俺は、世界中の苦しんでいる人を救いたい。もちろん少し落ち着いたから自分自身の病気を治したい。しばらくは首都バンガニラで治療に専念するよ」フィウが言う。

「私もフィウと同じよ。世界中の人を笑顔に」さくらが言った。

「私、強くなりたい。何も言うことが通らない世界なんて絶対に嫌。一緒に行く!」ポロが言った。

(「そして俺は医者(薬剤師)になりたい! 俺も外の世界を一回見てみたい‼ いろんな事を学んで病気で苦しんでいる人を救いたいんだ‼」ヒロオは言う。)

「私も行く(少しでも罪を償うためにもカイを守る)」イオは言った。

「私は流れに任せるかな。ん~楽しそうだからいこっかぁ~」キリアが言った。

「俺はこの国(首都)でしばらく治療に専念する」

「決まりだな……俺たち行くよ。フィウ」

「ああ。頑張ってな」

「(先生の話によるとそとは通信が使えないらしい。)あとは頼んだぞさくら」カイが言った。

 この小さな世界で生まれ、拒み続けられてきた。しかし彼の話で世の中にもっと恐ろしい悪というのがあるのが想像は出来た。そして俺たちはあまり、気付かなかったが、剣技においても魔法においても、まだ井の中の蛙なのかもしれない。

「トビ!」

 トビに追いついたフィウは、数時間彼と話した。

「フィウ、またな、頑張れよ。これは大切なペンダントだ。カイかお前が持っていてくれ。それが次会うまでの約束の印だ。必ず会おう」

「うん。このことはカイにも話しておくよ。俺とカイを助けてくれてありがとう。またね」

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