第21話 最終決戦




 イオは、しばらく気を失っていたが、目をさます。




「駄目だ、私がこんなんじゃいけないわね…ザークの為にもここで終わらせるわ。」




そして戦地に赴いた。




―少し前―




 あの時は、永遠に続く鬼ごっこを、ガオは楽しんでるかのように思えた。苦しかった。悲しかった。俺は彼らを拒絶した。家出しても、行方をくらましても、父はまるで逆恨みのように俺を永遠と探してきた。自由になれない人生なんてと虚しさを覚えた。あいつはマニピュレーターだ。こんな生活をずっと続けていてたまるか。そう思った。だけど、あの時俺は負けた。お金に…誘惑に…彼らの圧力に、親は敬うものだという、優しそうな人だという、親が心配してないわけないよと言う、そんな周りの言葉に。親が犯罪者なら子もそうだよねという周りからのプレッシャーに、ストレスに。この世界をどこからともなく見ているであろう悪魔に。あの時もそう、あの時もそうだった…まるで小さい子供を扱うように奴らは…俺たちを支配した…




 そんな風景を思い出していた。もうあんなことは絶対に繰り返さないと決意を固めながら…




そんな中彼女が呟く…




「最終決戦だね…」




「ああ…絶対に勝ってやる…」これがあの時からの俺の口ぐせだった。勝ってやる。それが。洗脳が解けた時からの。




 俺たちは最上階に繋がる乗り物を乗り継ぎ、辿り着いたこの場所で一つの扉を開けた。




 そこに座っていたのはアリだった。




 そしてその少し裏には、座椅子に寄りかかり30度ほどの角度で横になり眠っているガオの姿がいた。




「アリ!!!」




「テメらが悪いんだろカスが!!!!!」




「俺たちは、お前を許さない!!!」




 その瞬間ガオが起きた




「まあまあ座って座って」




 あれは狂っている。何が狂ってるって。喧嘩を笑いながら、とろっとしてる目で見てる彼だ。あれが俺ら家族の喧嘩に対する本心なのだろう。喧嘩して仲悪くなってくれた方が都合がいいという。だから仲介しないで笑いながら見てる。見てるだけ。放置。なんていうか、楽しそうに。口をうるさくつっこむわけではない。まあまあって。だけど、その喧嘩が自然に続くように。促しているように見える。いつもそうだった。




 一番憎いのは、俺は父が寝ていたからそのきをねらって意見したつもりなのに、いきなり起きることだ。奴に口を挟まれると面倒なことになるからそうしたはずなのに。眠りトラップだ。まるでピンチ時にいきなり現れたヒーローのように。行き過ぎたヒーロー(正義感)だ。彼が居たら、絶対に何が何でも俺が悪くなるのに。母をかばう気なのだ。




 まるでそのタイミングを見計らっていたかのように。まるで本当は寝ていなかったかのように。その機を狙っていたかのように。彼は飛び起きる。




 眠っているように見えるのは、トラップであり、仲間が何か言われていたら、飛び起きるのだ。彼らを守るために。俺がどんなに正しいことを言っていようとも、父は母をかばう。どんなに理屈が通っていなくても。意見しても、違う事に問題をすり替え、攻撃してくる。そもそも論で論点をかえてくる。真っ当なことを言っても土俵を変えてくる。全て彼らの意見は働いてないから悪いんだろに繋がる。誰の嫌がらせでそうなったのかと言いたくなる。そんなこともお金や権力がない俺たちには言い返す術はなかった。彼女たちを守る為に何かと理由をつけて俺を怒り、話が通じない、そしてそのすり替えた話を怒りとともに俺に推し通し、それを俺の意見の上に被せてきて攻撃してきた。それは裏の姿であり、表面を見ただけではわからない。そして表面上みただけでは彼らは正論を言ってるように思える。だから何も知らないみんなはよくこう言った。「いい人そうだったよ〜」「お父さんかっこよくていいなぁ〜」。




 そんな過去を思い出してしまった。




「ここ座りなよ〜」再びドスの効いた父の声。




「座るわけねえだろ。お前のペースには乗らん。最初はいい人のふりして、いきなり違う人格を見せて、怒鳴るお前のペースにな!!!」




「座れよ!!!!!」母が叫ぶ。




 最初引き込む時は、優しそうな甘い言葉で誘惑しておいて、引き込めてもう逃げられないような状況になったあとに怒鳴る。もうその時には時すでに遅し。そして全て悪いのは俺になる。だからこそ、密室や、車の中は地獄だった。そう車に乗る前はとても優しく、乗った後は人が変わったように乱暴になるのは、恐怖であり、その転換の早さに驚くほどだった。




 こういう時いつも冷めた白い目で見ていたり、他人の不幸を喜ぶかのような不気味な笑みを浮かべていたり、追随して暴言を吐いてくるのが妹だった。




「…」




 冷めた白い目をしていた。




「カイ、最後に言っておく、親である、私たちに逆らうとはどういうことなのかわかっているのだろうな?」




「私達に反抗して何様のつもりなの!!?」口を閉じていた妹が父に合わせるように矢継ぎ早に叫ぶ。この空間は昔の孤児院の居間を見ているようだった。




 一人だったらずっと変わらなかっただろう。この景色、この空間。それをやっと変えられるところまできた。ここで行かなきゃいつ行く!!!そう頭の中を思考がよぎった。




「わかっているさ!!!そこまでしてでもやらなければいけない戦いってことをな!!!!!お前らはずっとそうだった。フィウの日記も見た。なぎさの話も、ヒロオの話も聞いた。病気だとしても、医者が言ったことでさえも決して認めようとせず、彼らを責め続けた。そしてその取り巻きは、姉妹、祖父、両親たちは、それを面白がるかのように、それを追随するように、俺たちに酷い言葉を次から次へと言ってきたんだ。そんな理不尽の中俺たちは生き続けた。許せない!!!!!」




「ああ!!!ああ!!!!あああああ!!!!!!!!」デハが叫ぶ。本当のことを言われて発狂したかのようだ。




「デハ、よしよし。私と一緒にあいつらを服従させればそんな苛立ちはなくなる。あいつらを早く支配しようね。」




「ああ!!!!あああああ!!!!!!!!」




 恐らくいつも楽観的過ぎるほど楽観的に物事も考えてきた代償がここで発狂という形で出ているのだろう。二人からはとてつもない怒りのオーラが沸いていた。そして不気味な。




 そしてその時、少し遅れてイオ、ポロ、キリアもやってきていた。




「みんな…」




「私も…戦うわ…」




「大丈夫なのかイオ」




「もちろんよ…勝つためにここにきたのよ…」




キリア「結果的に、この場所で育って良かったのかもしれない…こうやって外でみんなと会えたんだから…だけど、もうあなたたちと関わることなんてごめんよ!!!」




ポロ「私の笑顔を引きつった顔にしたこと。私をいつも、苦しませてたこと、私は許さない。許したくない。もう迷わない。世の中悪い人がいないなんてのはただの幻想だった。」




イオ「ガオ…」怖い目つきでそう言った。




「カイーーーーーお前絶対に許さないからな!!!!!」




みづき「こうやって全ての憎しみはカイに向かってくるのね。私は彼と私の自由の為なら戦うわ。あなたには…絶対に負けない!!!」




「俺には信頼できる仲間がいる。こうやって言ってくれるみんなに報いる為にも絶対に負けない!!!




 一瞬の沈黙があった。彼は、また眠ったふりをしていた。




「ん?何か言った(・・?)」




一瞬の隙だった。「トリニティスパーク」




 歪んだ正義感を持って、押しつけの正義感を振りかざす。普段から外の世界にはいい顔してる反動が、こうやって俺たちに向かってくるんだろうと想像する。




 一瞬の刹那だった、とぼけたふりをして隙を作り、一気に強力な稲妻でポロ達を焼き払った。そして、なんとか、立てたのは、とイオとみづきとポロ。キリアは倒れてしまった。




「私はこの程度では屈しない!!!!!」そうイオは言った。




「ふっはっはっはっ。あれを食らってほとんどの奴がまだ立てるのか。ハッハッハ。面白い。」










「出番だぞラメ。あの攻撃を受けて人が思ったより減らなかったからな。」




「とうとう出てきたか…気をつけろよ…イオ」カイ




「甘やかすからそうなったのよ」




 逃げ帰ってきた、私たち二人に姉からかけられた言葉はこうだった。何も状況を知らずに、ただただ俺たちを責めるなんて、と憤りを感じた。それから何度会っても、すれ違い際、「何やってんの?」そんなきつい言葉ばかりだった。やはり親と子は似るものか。母や父の面影をそこには感じた。ただただ無謀な忙しさに溺れ、いつしか時間が過ぎていったあの頃には思わない感情だった。そうこの人を俺は本当は嫌いだったんだ。いつも正当に怒ってるようなそぶりをして、貶してきた姉が。




 彼女はただ状況だけみて責めた。俺はこんな人生でも頑張って生きてきたんだ、誰にもわからないだろう、と自分を慰めた…俺は両親に対する愚痴を姉に言ったことがあった。返ってきたのは「何言ってんの?」という言葉だった。




「世の中には分かり合えないものもいる。例え同じ家庭で育ったもの、同じ町で育ったものだとしても…」そう思った。そしてこれが家庭環境が悪いと、虐める側かいじめられる側どちらかになるという事だと推測する。




姉「リンプ・ビスキッド」




カイ「クリアエッジ」




イオ「サンダーフォース」




「やるわね」




「くそっ」




「つっ強い…」




 そして類推だが、敵対を加速させた要因はこうだったのかもしれない。




 俺がいない時に「あいつはああ言ってたよ」と両親は誰かに嘘をつく。俺たちを仲違いさせるような嘘。さも本当だと信じてしまうぐらいに巧みに嘘をついている。それを理解したのは、隣の部屋で母が知り合いに怒鳴り声で俺の悪口を言っているのが聞こえた時だ。嘘で俺の印象を悪くさせようとしていた。どの口が言うという感じで自分が俺にしてることを俺が母にしているという風に捏造して言っているようだった。強く言葉を発している。嘘をついているはずなのに、その自信はどこからくるのかわからないと思えるほどに。まるで本当かと思ってしまうほどに。それによって争いは苛烈を極めたのかもしれない。




 姉弟二人が一緒にいない時に喧嘩するように、姉に両親が俺が思ってもないことをまるで俺が思っているかのように嘘を言い、そして姉は、俺に対して嫌な感情を持つ。そして兄弟喧嘩に発展する(仲違いする)。もちろん仕掛けたのは彼女らなのだから、止めようとする人は誰もいない。その虚言の責任を両親は俺に転嫁する。もしくは誤魔化す。姉は、母を責めずに俺を責める。人間は楽な方に楽な方にと考えるはずだ。支配者や権力者にたてつくより、真実を見ないできっと俺を攻撃した方が早いし楽なのだろう。まさにイジメに近いものだ。




「あなたたちも、親の掌の上で、作られた楽園の上で踊らされてるだけってことに気付かないの!?」ポロはそう叫ぶ。




「何いってんの!!!」




 姉や妹からそんな声が響く。




 この反応を見て、少しわかったような気がする。なんとなく気づいていたことだ。もう一つ隠蔽されてきた事実があったのだろう。たとえ姉弟間でも上下関係は存在する。えこひいきは存在した。それも「情報錯誤」に他ならなかったのだろう。彼らは不平等を隠すかのように、情報錯誤をした。俺が平等じゃないと言った時も母は強く平等だと言い張った。一時期それを信じてしまった俺がいた。思えば、姉の言ったことは全て正しいことにされたり、姉のことを母に言うと、姉がそんなこというわけないよと、見向きもされなかった。そしていつも家から飛び出すのは俺たちだった。俺たちの関係は決して平等ではなかった。お気に入りとそうではない人が確実に存在していた。そう、彼女たちに怒号がいかない時でも、俺たちにはそれがきた。俺たちは怖くて居間に行けなかったのに、妹は父がいる時でも一日中行っていた。それが不思議だった。




 俺、ポロ、フィウたちは奴らにとって、サンドバッグ、スケープゴートだったのかもしれない。彼らのどうしようもできない人生のストレスを俺たちは受け(止め)ていたのかもしれない。だからこそ、彼らの苛立ち、ストレス全てを受けた俺たちは、不幸になったのかもしれない。




 ポロは思い出してしまった。




―回想―「ローラちゃん凄いんだよ、ポロはできないでしょー」 不平等だった。人は期待された人間になっていく。それが正しいのなら。「お前にはできない」という親の「洗脳」により、あの時それを真面目に受け止めすぎた私は闇に落ちていっただけだったのかもしれない。そして憂鬱になっていったのかもしれない。だんだん意見を言えなくなっていった。私には罵声や非難ばかりだった。生きているのが辛かった。そして姉や妹は「なんでもできる」と期待され期待されたように育った。姉は私とは正反対で社交的に元気だった。よく姉と正反対の性格と言われた。




 そして私はいつの間にか受け身の性格になっていたことに気づいた。何も言い返せずに何も言えないような人間に。家族の中でいつのまにかそのような役割が当たり前になっていた。少し前の小学校の頃は違ったのに。そう家族の中で役割が決められていた、私は言い返せずに、黙って聞く係、姉や母は、なんでも私に感情をぶつけてくる、それは反論さえ許されなかった。今のように強く返された。何を言っても、いいかえされた。「姉がそんなこというわけないじゃない」とか「そんなの嘘だよ」と言うように。だから私は喋ることを諦めたのかもしれない。何を喋っても無駄だ。私に幸せなんて言葉は似合わないとそう思ったのかもしれない。それは、連帯的だっただったと思う。一人では対抗(抵抗?)できなかった。そして自分でもよくわからないうちに外の人間関係でもそのような自分を演じるようになってしまった。それが周りから「変わった」と言われるようになったゆえんかもしれない。そして私の中の笑顔は消えていった。私は頭をフル回転させながら、彼らに対するおぞましさを感じながらそんなことを考えていた。




「私はお前を殺すだけなのよ!!!」




 物思いにふけていた途中姉からそんな声が聞こえた。そう私たちにとって、両親だけではなく、姉妹もまたモンスターだった。




「やるしかないね。」イオはそう言った。




「ああ、イオ行くぞ!!!」




「カイあなた、デハを殺したらしいわね。ローラから聞いたわ。絶対に許さない!」




「そうなの。あいつらがやったのよ!ねーねあいつらを殺して!!」




「あんたねえ!!!カイは殺してなんかいないわよ!!」みづきが言い返す。




 姉や妹は例えるならば、ネットで荒らしに「楽しそうだから」と言う理由で加担する一人のような最低で邪悪な存在だった。そうとしか思えなかった。




「あんたねえ!!カイ!あんたがこんな女たぶらかすからでしょ!!カイユルサナイ!!!」




「私はあなたを許さない!!!」そうイオは言った。




「何を言ってもわからないようだな!!!」カイはそう言った。




「ローラはそんなことするような子じゃない!!!殺す!!!!!」




 なぜかわからないが、姉は妹を盲目に信じていた。これが愛というものだろうか。




「私だって、ただただ過ごしてきたわけじゃない。ガオの血筋で最高傑作として凄い力があるからって負けるわけにはいかない!!」




 イオが立ち向かうが後ろ側の死角から敵の攻撃が襲いかかった。




「どうイオ私の力思い知った?」




「なにっ!?」




 後ろの死角から、攻撃をしてきたのはローラだった。




「卑怯だぞ!!!」カイはいった




 体が荊で固定されたのがわかった。




「あの時と同じなの…?対抗できなかったあの時と…」




 ローラとの日々を思い出す。私達は孤児院の中では暴論を吐く妹から逃げてきた。彼女が居間に入ると私達はいなくなることが多かった。嫌がらせを受けていた。例えるならば私たちがストレスの発散口だった…それに嫌気をさしたのか、ローラはガオや愛でにこう言った。




「ねーにげるー」




「逃げるのやめなさい」と母は言った。まるで私達は何かのおもちゃ扱いだった。




―カイ回想―こんな悔しさをバネに俺は今闘いに挑むのだろう。そう静かに思った。




 俺が逃げ出してから、また戻ってきた後の話。食事の間だった。俺は早く食事を済ませようと行動をとった。冷蔵庫にあるソーセージをそのまま食べたのだ。もちろん、焼かなくても食べられることは知っていた。しかし俺が行なっている行動に母がイチャモンをつけてきた。俺は弁解をした。しかしその言葉は届かなかった。




「生で食べられないよ」と母がいった。




「ソーセージって生で食べられるんだよ。知り合いもやってたし。」俺はそう言い返す。




「そんなわけないじゃんあんた馬鹿?」と母が言う。




「ここにいたらほんとストレスたまる」そう俺に向けて発言したのは妹であるローラであった。




 俺が妹に暴言を吐かれる意味が全く分からなかった。怒りをぶつける場所を間違っている妹。まるで俺が可笑しいかのように、悪いことしているかのように。俺に向かって言われたと思われるその一言は、まるで俺が「ここ」に対して思っていることを言っているようだった。




 母に対した怒りを妹が俺にぶつけてるかのような錯覚(感覚)。呆れて何も言い返せなかった。




 外の世界では、お前なんて小さな存在でしかないだろうに。威張る事が出来るのも今だけだ。俺がお前の手の届かないところに行くまでの辛抱だ。そう思った。そんなストレスに耐えられず、外に出た。




「被害者ぶんなよてめえ」その日、外に出て俺が放った言葉はその一言だった。




 この事件から言えるように、とにかく家族の言い分はめちゃくちゃなのだ。それは、めちゃくちゃでも、勝利は決まっているような主従関係にあったからなのだろう。




 俺が思う事は、もし私が成功して自由になったのなら、家族や妹には、「一生(あまり)関わりたくない」ということだろう。この言葉を私は生涯忘れないだろう。忘れそうになった時は、このことを書いたノートを見返してくれ、そう切に願う。アイツらを信じた時点で負けだ。敵対視していないと自分が壊れる。




 そして、そんなことがある度に、今まで以上に強くこう思った。「自由になりたい」




そんなことがあった彼女と、決着をつける時がきた。




「はあ!!!!!」




 カイはそんな悔しさを思い出し、力強さを増したイオを荊から一瞬にして助けた、そしてイオを鼓舞する。




「絶対に勝つぞ!!!」




「うん!!ありがとう。」




「ちっ似げられたか。私を舐めんなよ、てめえみたいな大人ぶってる奴には負けねえんだよ!!!」




「俺だって、いつも被害者ヅラして、俺達を攻撃してきたお前には負けねえ」




「カイ、私どうすれば…」




「一緒に倒すぞ、イオ」




 私たちの正当性は認められず、姉妹や両親、家族の事は棚に上げられて、妹や姉の正当性だけ認められた。そんな理不尽、悔しさから、家の壁を蹴っても殴ってもどうにもならないことをカイは知っていた。私も同じ気持ちだった。私たちは何か太い糸で繋がれているのだろうか、そんな感覚だった。それは家族、同じ孤児院という偽善の絆。偽善という悪。人生の中で一番壊せないダイヤモンドの絆。住民票を移動したら、住所がバレる恐怖。逃げ出した後気づいたのだが、何をしようとしてもだいたい家族という保証人が必要となる。全てがバレる、家族に対しては明るみに出る。この絆は厄介過ぎた。彼女らのいったことはこの家族では、正義となり、私たちのいったことは悪になった、両親によって。その後ろ盾の大きさ、闇が、彼女らが私たちに対して何をやっても注意されない家庭環境が、家庭での関係性が彼女達をこんなに強欲・強情、そして暴徒にさせているのだろうか…そう感じる。




「なんでいつまでもこんな世界に囚われなきゃいけないの!!!」その瞬間イオの身体に力が宿った。




「負けないわっ!!!ライトニングスケープ」




「この威力は…」




「私は戻ってきてからずっとカイと行動してきた。あなたや妹が私やカイにしてきたことはみんな知ってるわ。私はあなた達を許さない!!!」




「うるさい!私は外で学び力を手に入れた。それを示すいい機会だわ。全てはこの時のために力を蓄えてきてと言っても過言ではないのよ!!!」




 彼女は確かに優秀で賢かった。それが、彼女の発する言葉の重みを増幅させていたと思う。だが、俺たちは彼女に負けるわけには行かない。口喧嘩でも何にしても今まで一度も勝てなかった彼女に、勝たなければならない。その主従関係で中学に入ってからは理不尽があっても口喧嘩さえさせてもらえなかった過去にさよならしたいと切に願った。




「ライトニングエイト」




「ディアボロランド」




 強い力と力がぶつかりあった。




「くっ。強い。だけど、私ならこれを超えて見せる!!!はあああああああ!!!!!!!!」イオ




「いくぞイオ!!!」 カイ




「ローラいくわよ!!!」 姉




「これで終わりよ!! 」イオ




「私たち二人の力を合わせれば勝てないものなんて何もないわ!!!。」姉




「ライトニング・エディケーション」二人の声が響いた。




「ライガー・ボルテックス」




 やがて、より巨大だった俺たちの力が上回った。




 その唸るような雷撃と剣撃は奴らを瀕死にした。




 こうやって長く俺らを蝕んできた因縁の対決は…私たちの勝利によって終わった。




「私はお前達が反旗を翻した地点で身を引くべきだったのかもしれない…そして静かにお前らの前から姿を消すべきだったのかもしれない。二度と関わらない。それが正解だったのかもしれない。…これからは…静かに…」




「私は、間違いだったのかしら。そんなはずない!!困った時はいつも父上が助けてくれるもの!!!こんなやつ、こんな意見、父上がくつがえしてくれるもの!!!」ローラは残り少ない体力でそう叫んだ。




「お前たちはただ強いほうにつくだけだった。話を聞こうとせずに。これがお前らの選んだ結末だ…」




 私たちにとってあなたたちは、悪意に満ちた悪魔であり怪物だった。




 姉は妹に勝たせようとしていたのだろうが、あれはない。そんな物語の連続だった。それが当たり前だった。彼女は姉はきっと、軍団と称して、妹を理屈なしに守ろうとしてたのだろう。それは怖かった。怖い以外の何者でもなかった。それがいつまでも見つからない閉鎖的な環境だった。姉妹はあの家族に、権力にたてついた。それが意識的なのか、無意識的なのかはわからない。しかし権力に立てつくものはいつか落ちる。そう、今まさにこの時のように。




「ローラあなたはカイから全て奪い取って自分のものにしていたわ、カイは競い合うつもりもなかった時も、私の方が好きだとか勝手に競いを始めて、カイは疲れていたわ。あなたが仕掛けてくるマウント争いに。あなたの支配欲に。そして最後に落ち込むのはいつもカイだった。そういう上下関係だったからよ。だから、カイは絶望した。好きなものを全て取られるんじゃないかと。ヒーローが出てくるアニメも。それは特に人がそうだった。あなたが自分がやったことを棚に上げて被害者ぶったり、悪い噂を捏造して流したせいで彼からみんな離れていった。




 そんな彼の戦いをみて私は心が痛んだ。何も言わずに一人で頑張ってきたのよ彼は。私やあなたたちのように権力に屈しずにね…そんな経験をしてきた彼はあなたたちには絶対に負けないわ…そんな悔しさがあるから…」




イオはそう言い終えると、その場に倒れた。妹と姉も同時に。




「許さぬ!!許さぬぞ!!!!」




 ガオの怒りと共に放たれた全体攻撃は俺たちにダメージを与えた。




 それでも彼らは立ち向かう。




「くっ…このぐらい…俺とみづきで速攻でアリを倒すぞ。」




「私が行く!!二人はガオを!!!」」ポロ




「ああ!!頼むぞ!!!」




 私にはある思いがあった。ずっと引っかかってた言葉だ。




「家ではいつも怒ってるらしいよ」




 友人のそんな言葉を思い出した。今までなんでもかんでも友人をいい人だと思ってきたけど違かった。私は両親に人に善悪をつけないように教育されてきたんだと思う。どんな酷いことされてもいい人だと。その人に責任押し付けちゃいけないよと。テレビで悪役が追いやられるようなことになっていたら突然別なことで母は怒り出して、笑うなというような間接的な圧力をかけられる。それをイエスと言ってしまったら反抗されるとでも思ったのだろう。そういう洗脳に近い教育だった。




 それは、その友人が私を敵対視してるから出る言葉…。大切に思ってないからこそ出る言葉…その考察に納得がいった。




 その敵対の要因…その要因は、母(アリ)が友人の母親に対して愚痴を言って私を極悪非道な人間と思わせていたからだろう。その必死に訴える姿、力強さが眼に浮かぶ。親を経由して間接的にそれが友人に伝わったのだろう。印象操作だ。




 友人がかばっているのは、私が嫌がる言葉を狙って言っている愉快犯である私の母親。だから私は、本能的に、無意識的に、(中学校で)同じ小学校の友人より、遠い他の小学校に行っていた友人の方が安らぎを感じれたんだと思う。小学校からの友人の親は、親同士の繋がりが深いから。




 こんなどうしようもない構造があったんだと思う。私に対して悪意あるような行動しか、母はしてこなかった。私を隔離させるような。




そしてあの友人は、それを鵜呑みにし




「落ちこぼれが母親を怒鳴りつけるのは定番だ。」




 そんな風に思って私を攻撃したのだろう。理不尽なことをいう人、悪意がある人には怒りを持って対抗しなければならないのに。そうしないと周りにはそうされるのが好きだとか、弱々しいと思われてしまうのに。辛かった。




 だから私はここで決着をつける。




「もうあなたの、言いなりになんてならない!!!そして、もうあなたの思い通りに(は)させない!!!!!」




「私が悪いわけないでしょ!!!!!」




「メモリーローディング・ストレイト」




「おまえ!!!!!ディレクトフォーク!!」




 同時打ちだった。お互い戦闘不能になった。




「やったよ。カイ。私一人でもできたよっ。」




 その言葉を発し、笑顔で彼女はアリと共に倒れた。




「カイいいいい!!!!!絶対に許さないからな!!!!!」




「何を言われようとやってやる。自由を得る。」




 ガオと二対一だ。彼は話し始める。




「ひとつだけ教えてくれる?」




「…」静かな時間が流れた。




「なんでそんなにみんなに迷惑かけたいと思っているの?」




「カイ!!!惑わされちゃ駄目よ。あの人はみんなという言葉を使ってあなたを騙そうとしてるの!!例え世界が敵に回っても私はカイを信じるわ!!!!!」そう鬼気迫った表情で彼女は言った。




「そうだ。俺はもう、一人じゃない。みんなも、みづきもいる。そんな簡単に惑わされたりしない!!はああああああ!!!!」




 カイは渾身の一撃を繰り出す。しかし相手は無傷のようだった。




 そしてその隙をついてみづきは(近距離から)最上級魔法を撃ち放った。




「最上級魔法ホーリージャベリン!!!」




 とてつもない威力を誇る大魔法は一直線に奴のもとへ向かった。




「なにっ!?闇の力よ、我がもとに集い盾となれ、ダークトライアード」




 それを守ったのは、大きな闇の塊だった。




「まさかこれほどの魔法を用意していたとは。驚いたよ。危ない危ない。瞬間的にこの強い力を出さなければやられていた。カイいいいいいいい!!!!!!!!!」狂気に染まった、奴の名前を呼ぶ叫びとともに重力系の魔法が二人を襲った。体力が奪われていく。




 そして地面に押し付けられながらも、彼女はこう言った。




「あなた、まだわかってないみたいね。あなたのせいでなんでカイが辛い思いしないといけないのか分からないわ。何もかもこうやって力や権力で押さえつけようとしているのかしら!!それがカイの為だと思っているのかしら。だとしたらそれはただの押し付けよ!!全てあなたの思い通りにはならないのよ!!!!!」




 みづきは上級魔法の発動に入った。しかし、空砲だった。もう打てる力は残っていなかったのだ。




「ハハハ!!!ハハハ!!!もう打てないみたいだな!!!無理しなくていい。みづき俺と結婚しろ!!!!!」




「嫌!!!!!」




「このわからずやが!!!!!みづき俺と結婚しろ!!!!!」




「ふざけるな!!!!!」カイが叫ぶ。




 プロミスだ!!!俺が勝ったらみづきを頂く!!!!




「くっ!!お前!!!!!」イオは起きていた。




「以前から可愛いと思ってたんだよ。アハハ」




 ガオは目を強張らせながら言った。「約束したからな!!!!!」




「カイ…怖いよ…」




「勝手に決め付けやがって…大丈夫だ。俺が絶対にみづきを守る!!!」




「ありがとう。絶対に勝とうね。私たちの自由の為に。」




「ああ!!!」




「ライトニングレイジング!!!」ガオのことを「最低な人間ね」という気持ちを込めて放たれたイオのその渾身の一撃(雷撃)は無残にも崩れ去った。巨大な、砂塵や瓦礫の破壊されたあとだけ残して。




「私の切り札だったのに…」




 ガオの周りには凄まじい闇のオーラが立ち込めていた。




「まだだああ!!!!!」




 カイが追い打ちをかけるが、ガオの覇気(オーラ)がカイの攻撃を停止させる。ギイイイイ 剣が軋む音が鳴り響く。




「カイお前は何も考えなくていい!!!言う通りにしてればいいんだよ!!!!!」




その、開き直りに俺とイオとみづきは言葉を失う。




「……」




「世の中金や力が全てだ。さあ決着をつけようか。俺が勝ったらここにいるやつ全員俺の側近だ!!!ハハハ!!笑いが止まらないな!!!!!お前らは全て、親のため、私のために生きろ!!!外の世界のやつなんて信用できない。信用できるのは家族だけだ!!!最も、私の側近になったら、お前とみづき、私との時間の合間にたまには2人仲良く過ごさせてやるよ。基本は私の妻の一人だがな笑」




「ふざけるな!!レジスト・ストレイト」




 しかし、それは受け止められる




「ここまで俺を敵視して何になる?家族だぞ、共食いするつもりか?」




 剣がはじきあう音がする。




「何を言っている!!俺たちを支配するような人間なら、血族も何も関係があるものか!!!!!」




「まあいい。私は寛大だ。全てが終わった後に許してやろう。しかし奴隷として詫びることだ、一生な!!!絶対に一生、お前だけは許さんぞ!!!!!」




「もう一度、奴隷になってたまるか!!いくぞみづき」




「うん、フリーストライク!!!」




 その魔法は奴の謎のオーラによって無効化されているようだ。そして奴の攻撃。




「はぁ!!!!!サイバースチュアート!!!!!」




 光の玉が俺たちを襲う。みづきと俺はそれに直撃し、瀕死状態だった。




「もう駄目…私の魔法も防がれた…もう道はないのかもしれない…」




「これでどどめだフハハこれでお前も反逆も終わりだ。覚悟しろ。世の中力のあるものが勝つんだよ!!!女・みづきも俺のものだハッハッハッ」




「負けるのか…」




「エネミーデリート」ガオの声が響く。




「ディスピアフォルテ!!!」フィウ




「なにっ」




 少し前。さっきの防御魔法は何度も使えないはずだ‥あれ以上の防御策はないはず…闇のオーラだけの今なら‥」今打つのか…だがしかし…目が霞む…病気(の悪化)で視力が落ちているからだ。遠すぎて確実とは言えない…今は彼らを助けよう。今こそ出て行く時だ!!!!! フィウ




 そこに現れたのは、フィウの姿だった。




「待たせたな!!!!!」




 彼の魔法は二人を守った。




「なんだ、誰かと思えば、病気で動けなくなったヒューくんじゃないかアッハッハッ」腹をかかえてガオは笑っていた。そんな身体で何ができる。




「彼がいなかったら、負けていただろう。」二人は瞬間的にそう思った。




「俺は病気をないがしろにされ、自由や人権がなかった日々を忘れたりはしない!!!!!」




「病気なんて、アハハ」大丈夫だって!!! そう子供っぽく言った。




「昔からそうだったよな…そうやって…軽く流して…」




「お前のせいだろ!!!」!!




「何を言っても無駄なんだよ!!!ガオ様、今こそ真実を話し権力による支配こそ全てだということを見せつけましょう!!!!!弱きものに理不尽なんて言葉は言う権利もないんだよ!!!」




 背後から現れたのは、メンタリストとして有名な人物の姿だった。




「そうだな。そうしたほうが、もっと楽しくなるだろうアハハ。笑いが止まらないな。」




「真実だと!?」




「アハハ。フィウお前、あの事故は、私の決めた予定通りに進んでそうなったことを知っていたか。本当はお前は事故死する予定だったがな。」




「なんだと!!!!!」




「まず最初にお前の特性を理解し利用した。お前はストレスを受けると、怒鳴ると、家から飛び出す、家出未遂をすることを理解していた。それは外の世界に行って、より顕著になっていたからな。そして第二だ、あれほど執拗に保険に入ることを強要したのはなぜか?もちろん死んだ時の保険金だよ。お前は私の失敗作だった。そんなに反抗するなんてな。そして第三だ、お前が嫌がっていた、原付バイクそれをあえて買い与えた。そしてそれを乗るように誘導した。「乗らなきゃダメになる」とか、その燃料に関しては無料化したとかだ。一番危険な原付バイクだ、わかるだろ。




 いやーそれでも、驚くほどうまくいったよ。殺して保険金を受け取るという、目的は果たせなかったがな。




 お前が寂しさを埋めてくれる、家族のストレスの発散口になってくれる。支配できる。それだけで私の勝利さ。」




「てめえ!!!!!」




「きさまあああああ!!!!!」カイは叫ぶ。




「なんて奴らなの…」みづきがいう。




 まず私が事故を起こさせるために何人も、お前の近くにつかせた。そして、タイミングを見計らって、お前の通行の邪魔をしたんだよ。偶然と思わせた。元来この国は交通マナーが悪い。目立たないのさ。




 そして事故にあった時お前はあの加害者女性を責められなかっただろう。それは母の怒号が誘引して、家から飛び出して起こった事故だと知っていたからだ。




 そして私は加害者の女性にこう言わせた。




「家族に連絡したら?」




「きさまぁ!!!!!」




 そう彼にとって、普通の家族では逃げ道であるはずの家族が一番信じられない存在だった。家族に頼れない彼には、その言葉も絶望の連鎖だった。




「一番反抗的だったのはお前だったんだよ。だから殺して、せいぜい家庭の役に立って貰うことにしたんだ。金銭面でな。それ自体は失敗したが、その病気になったおかげで、家族の精神面という意味では、良かったよ。みんなお前を攻撃すればいいだけだからな。ハッハッハッハッ。」




「貴様!!!俺の人生を壊したな!!!!!ふざけるな!!!!!!!!!!」




「まさかこうやって反旗を翻すとはな。そうしたところで、お前の墓場)はここだ!!!」










 いつも母に何か意見を言うと、そのお返しなのか、告げ口され父に責められた。少しでも意見を言うと反抗したと思われるからだ。父や母、妹から攻撃される。父や母や妹、家族に怒鳴られて家から出ていくのはいつも俺だった。出て行こうとした時俺の名前をどすの利いた声で父に呼ばれた。怖かった。そして全く違う話で父は怒っているのだろうに全て父の怒りは働けという言葉に集約された。これがその時の父の言葉だ。こう言ってきた。




「病気良くなってきたって聞いてるけど?」




「誰からじゃなくて聞いてるの」




「いつ働くの 家にばっかいないで外にいかなきゃ 一時間でもいいからバイトすれば…」




 そして俺が逃げた時




「フィウ―フィウ―」




 と名前を呼んできた。まるで俺が可笑しいかのように。怒った声で。ドスの聞いた声で。逃げ出して一時間経ったあとでも体が震えていた。体が不自由な身であんなこと言われたら恐怖でしかない。その根本にあるのは、治ってるんだろという前提なんだから。




 お前が絶対に認めようとしないこの病気、辛さがわかるのか。暴論だ。




 今までもそうだ。何にしても絶対に家族に理解されることはなかった。小さい頃からずっとだ。話をまともに聞こうとしない家族だった。怖かった。例え一瞬謝ったとしてもその直後さえ性懲りもなく攻撃してくる。それを謝ったとは言わない。




 原付にしてもバイトにしても、俺が悲惨な思いになるものしか、やらせない。全ては手のひらの上で転がされていた。それの上位互換が車や就職だろうに。本当に働いて欲しいと思ってるなら体直すこと優先させるだろう。計算が得意なお前ならわかっていたはず。そしてお前は俺の成功を絶対に望まなかった。




 俺が帰ってきて希望や夢を語った時。「成功なんかしなくていい!!!」とお前は怒鳴った。怖かった。全てお前の計算だ。お前にとってきっと俺は嘲り笑うためのおもちゃだったんだろう。ずっと、ずっと。成功したら今までの悪事がばられるから、おもちゃがなくなるから。嫉妬するから。支配できなくなるから。絶対に許さないんだろう。




「フィウ―フィウ―」 今日もまた、どすの利いた声がその場に鳴り響いた。




「貴様にもう名前など呼ばれたくない!!!!!」




「なんだとー!!!言わないのが悪いんだろ!!?病気も全て!!!!!」




「頑なに認めようとしなかったのはお前らだ。言っても聞かないんだろ!!!」




「なんだバレてたのか?アッハッハッハ。笑えてきたぞ。ただのおもちゃ風情が!!!!!」




「お前らを許さない…」カイは呟いた。




「絶対にこの世界を救いたい。」みづきはそう思った。




 その瞬間、メンタリストヌアの声が場内に響き渡った。




「そこまでだ!!!」!!




 二言目に出た言葉は衝撃だった。




「言質を取った!!!!!」ついにボロを出したな。この時をずっと待っていたんだ。この機械で録音した。




「なんだと貴様っ!!!。お前っ!!!絶対に許さないからな!!!!!」




「投降しろっ!!!!!」




「何を言っているここで倒すまでだ!!!この国では通信はできない。お前らを倒し、その録音機を破壊しまた絶対的支配が始まる!!!!!お前たちにもうなす術はない!!!!!俺はそれを楽しみたいんだ。ワクワクするだろそういうのって。」




「あくまで降参しないわけか。面白い。その意気込みがどこまで持つかな。トランプマジック」




 メンタリストがガオを撹乱させている。




 彼はガオの目の前を巨大な13枚のトランプで覆った。正解は一枚。俺の位置がわかるかな。ヌアが、ガオを錯乱させている。時間を稼いでくれている。その隙に、カイ、みづき、フィウは話し考えた。




「どうする、フィウ。」




「考えがある…俺が隙を見て最期に上級魔法を放つ。その直後、追い討ちをかけてくれ。それで決着をつけるしかない。」




「わかったわ」 みづき




「やるぞ!!!!!」ふ




「ああ!!!!!」




 その話し合いの直後、ヌアは壁にぶつけられた。




「こんなの全て破壊しちゃえば問題ないでしょう?笑」




 そして、それを全て破壊した後すかさずガオは魔法を放つ




「ダークオブライフ」




「フィウ!!!」




「やはり、強い。」




 透明の特殊なバリアがフィウを守ったがダメージはあるようだった。フィウは倒れた。そして続いて、ガオはみづきに攻撃した。




「サントラーネイル」




 物理攻撃だった。バリアはあったもののみづきも酷いダメージを受けた。




「やはり動けないじゃないかフィウ、お前は後回しだ。動けないのならいつでも殺せる。あとは、本当におまえだけだなカイ」




「みづき!!!!!」




「大天車殴投」




「うわあああああ!!!!!!!!!」




 カイは、投げられ、壁にぶつかって動けなかった。(カイはもう動けなかった。)




「カイ!!!!!」




 みづきもほとんど動けない状況になっていた。それでも手を伸ばす。




「私は、なんのためにここにきたの。カイを守る・導く為でしょ!? ここで寝てなんか居られない …なのに…なぜ…?身体が動かないわ!どんな地獄の中でも救うと決めた。だからこそ今会心の一撃を放つ。」




「ハアアア!!!!」!




「ビビッタじゃねえか。」




 上級魔法を使いきった後の魔力では決定打を与えられなかった。




「お前は大人しく寝てろ。何しろ将来の俺の嫁だからな」




「みんなも頑張ってくれているんだ。ここで諦めるわけにはいかない…」もうほとんど動かない体にムチを打ち彼は動きだす。




「どうすればいい…」カイ




 フィウと目が合う。




やられたふりをしていたフィウから音がした 「最上級魔法セブンスヘブン!!!!!」強烈な衝撃波がクロスしてガオに向かう。




「はああ…なにい…」




「大ダメージを与えたようだ」




「(闇の衣が)取れただと…」




 すかさずカイがとどめを狙うが、避けられる。




「そう簡単に崩せないか!」




 ガオはフィウに攻撃する。




「ダークネスミッドナイト」




 瀕死のダメージを受けたようだ。もう期待はできない。




「闇の衣が消え無敵では無くなったとは言え、それでも私は強いお前らなんぞに負けるはずがない。 」




「残念だったな。これで終わりだ。」




「デスフィナンシャル」ガオは唱える。




 俺たちは、ダウンした。みづきはとっさにバリアをかける。もっている力全てを出し切るぐらいの強力なバリアだった。そして、それに追随するかのようにカイにれんげきが襲う。それは、俺が昔マンションに住んでいた時のことを思い出す。ドアをどんどんと叩かれるあの光景が。




「またかっ。また同じことが繰り返されるのかよ。何度やっても駄目なのかよ…」




カイにかけられた、みづきの守りの魔法も次第に溶けていく。




皮肉にも、愛するみづきのかけた魔法が、その現象を引き起こしていた。




「もうもたない…終わりなのか…」




その瞬間、誠人の歌が頭の中をよぎった。




この曲は、俺が自信をなくしたときに聞いていた曲だ。落ち込みそうになった時、この曲との出会いで、そんなもんじゃない俺の力は、と思えた。彼らの自信を失わせる言霊はすごかった。その度にこの曲を聴いて、自分だって自信を持っていいんだと思った、自信を取り戻せた。そんな曲を聴いていると、冗談ではなく「死」さえも怖くないと思えた。そのぐらい人生に対しての勇気をもらえた曲だった。




しかし「無情」だった。頭の中に響く音楽は強大なストレスを前に全て掻き消されていた。あの時を思い出した。あの扉を叩かれ続ける部屋。歌というものは、――いざという時には全く役に立たないことを―――思い知った。歌は就活でいう、履歴書や、受験における、答えでもない。戦いにおける力そのものでもなかった。




…俺には無理だ…俺は…何の為にここに…そうだ…みづき…みんな…死んで行った仲間たち…自由の為に……………。絶対に勝たないといけないのに…自信がない…なぜならあの時と同じだからだ…なす術もなかったあの時と…




いやまてよ、役に立たなかったんじゃない…頼りすぎていただけだったんだ…




力がなく何もできなかった、あの時とは違う。それは「できない」という思い込みだ。あの時のガオとの力の差を時間をかけてゆっくり塞いできた。今ならこの歌と共に。




その瞬間、誠人の歌が鮮明に脳裏に浮かび上がった。カイの目の光が宿る。頭が澄んでいた。




「もし俺がここで死んで、居なくなったら全てが終わるのだろうか?みんなはどうなるのだろうか…諦めちゃ駄目だ。」




そう思い出せ、俺の一番の願いはみづきを守る事。そして、この世界を救うこと。(血が流れ出ている)




「他に方法はあるのだろうか?」




折れるなんて、絶対にしたくない。










たとえ僕が死んでも




また生まれ変わったとしたら




再び同じ親の元へ生まれ




その試練のくりかえしなんじゃないか




生きても死んでも同じようなものだ 。(支配が続くのなら)




ここでの決断が




大きな分かれ道かもしれない。










だったら




いってやる!!!










ガオたちの居ない生活はとても穏やかで、やる気が満ち溢れてきた。楽園にいるようだ。自分に肯定感を持てた。これを幸せと呼ぶんだろう。




だからこそ、絶対に勝たなければならない。自分の為に。そして、フィウやみんなのためにも。




正気が戻ったことがわかったのか、フィウが叫ぶ。




「カイ!!!」




フィウと目が合う。




「俺がもう一度最上級魔法で、大ダメージを与える。トドメを決めるんだ!!!




「わかった…」




 フィウの頭の中に過去が浮かび上がる。フィウの脳裏に彼らの言葉が浮かび上がる。




父「病気とかそういう風にいうんじゃなくて…そういうのを理由にしてできないじゃなくて、やれよ!!!!!!!!」




父「痛くても、みんなやってんだよ!!!!!!!!」




母「むちうちなんかで寝ている奴があるか!!!!!」




 そんな言葉を浴びせられた。だけどもう終わりだ。俺はいつでも、そういう言葉を糧に頑張ってきた。これで苦しんでいる人たちを解放する。




「ドリームジェネシス!!!!!」




 この日のために、自ら温めてきた、フィウのもう一つの(最後の?)最上級魔法は、ガオの身体を貫いた。




「やり終えた。これで全ての努力が報われるのか…1人で、個室に篭り研究に明け暮れた日々が…もう死んでも後悔はない。あとは頼む…カイ…」




「ふっはっは。それでも、私は強い。最強魔法(魔術)師フィウも落ちた。このぐらいなら…ぐはああ!!なあにい、!!!防ぎきれない!!!!ここまでの威力とは!!!!!!!!」




「これで本当の終わりだ!!!!!」




 カイは渾身の一撃を放った。




「ハアアアアアアアアアアア!!!」




「ドン!」




 カイの剣がガオの鎧に突き刺さる。ガオの鎧にダメージを与える。




「っぐはあ」




「これ以上お前の好き勝手にはさせない」




「お前ももう限界の筈だよく立っていられると感心する。あと一撃でお前は終わる!ダークトライアド」




「バーストリビジョン」 体力を犠牲にした代わりに魔法を出す技だった。




「ガオの魔法をみづきが粉砕する」




 自分の残り少ない体力を犠牲にしてまで手から魔法を打ったのか…自らがが死ぬとも限らんのに…カイを守るために…何てやつだ…




「くっ駄目か!!力が足りない!!!」カイ




「カイ!!」




「みづき!!!」




 みづきもカイの剣を一緒に握る。力で押し込む。




「私たちいつでも一緒よ!ここまできたんだから、絶対に勝とう!!!」




「ハアアアアアアアアアアア!!!!!」二人の声




「グアアアアア!!!」




 それはガオの体を貫いた。 それはガオのチカラを上回り、剣撃を与えた。急所は外したがガオの衣類(防具)を切り裂いた。




「まさか私を倒すとはな」(ひざをつく)




 そして、ガオは最後にこう言った。




「お前はいつもそうだ。お前のしていることが全て正しいわけでもないのに。」




 彼はそう呟き倒れた。




 その瞬間カイも倒れた。




「勝ったのか・・」




こうして約100000人の舞台にたった、たった6人で挑んだ。彼らの戦いは幕を閉じた。




ようやく、彼らは自由を掴めたのだ。どんなに恋い焦がれただろうこの時に。思いは現実になったのだ。




…勝ったんだ。










「みんな、ありがとう…」










俺たちは知らないうちに眠っていた…




フィウは病院に運ばれたあと、しばらくすると目を開けた。










暗黒に染まっていた空が、青空に変わっていた。フィウは空を見上げてこう言った。




「これで終わったのか、いやまだ俺たちの使命はあるはずだ。慢性疲労症候群、繊維筋膜症、脳骨髄液減少症、IBS、発達障害などの目に見えなくて、全く異常がないように思える病気、そんな病気などを世の中に伝えていき理解を深めていくことが(も)俺の使命だと思う。そして病気の事を嘘だと疑うヘラヘラ笑ったり嘘だと疑う人間は俺は嫌いだ。健康そうに見えても、病気を抱えてる人もいる。」




きっと俺たちの目の届かない場所で、この国で、違う他の苦しく悲しい(苦く苦しい)物語もあったろう…




それにまた、悪が芽吹いたら…俺は戦う。たとえ病気だろうと…それが俺の使命だ!!! それが力を持った俺の宿命だと思う。




そして、そんなつらい状況と家庭環境の中、俺をここまで支えてくれた彼女には感謝だ…俺の唯一の慰めだった、全てが奪われる中で、一つだけ消えずに輝いていた秘宝…辛かった時の支え…本当にありがとう。




「思い出は俺だけの宝物だった。」




これは俺だけの物語。誰もとることなんてできないさ。支配欲が強いやつらでもな…




自分だけの宝は自分が経験してきた出会ってきたこの仲間たち、そして思い出たちだ。










何日眠っていたのかわからない。




「目を開けたら、フィウとティがそこにはいた」




「よくやってくれたなカイ」とフィウは言った。




「カイありがとう」とティは言った。




「ここは、ここは全ての感情を癒してくれるseed内に隠されていた幻の都市セルトニアよ」




これがガオ達が本当に望んだ景色だったのか。美しかった。




みづきはカイを抱きかかえた。




カイとみーで二人で抱き合って、周りに知り合いなどもいるが、誰もいないような感覚だった。抱き合いながら、地下へ続く大きな階段を降り、二人でみんなより先に行ってしまった。神殿の階段のように広い黒い階段。地下にペット預かり所とコインロッカーとコンビニのような場所がある、そこを抜けて外に出ると、鮮やかな広大な荒野で緑や水がある空間。そこで二人で景色をみながら、自然豊かな谷や緑や川を見ながら、みづきが俺を抱えながら、回っていた。




最後はみんなに挨拶をしにいったり、一緒に行動したりするけど、みんなが誰かの元に行っていなくなってから、上を見上げるとみづきがいた。




俺たちは崖の近くの展望が良い飲食店で食事をしていた。しかし、俺は何も食べずに寝てしまう。




その間、みづきはポロと買いものをしているみたいだ。目を覚まして、飲食店の外を歩いているともう二人とも荷物でいっぱいだった。俺はその荷物を持ってあげようとするが、持っていること自体が楽しいようだ。




その風景には花びらが舞っていた。岩壁に囲まれ、その下や崖の上には沢山の桜があって。細い道に吹雪のように舞い散る花吹雪はとても幻想的な風景だった。




カイはやがて部屋に帰り、みづきの寝顔を見つめながら、愛おしくて大好きだなあと思うのだった。3月の心地よい気温の今日この頃、この暖かい気温と同じように暖かいみづきの寝顔は一番のお気に入りなのである。

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