第18話 幻影魔法


「あれ・・・ここはどこ?」


 さっきまで、キリアもいたはずなのに。


幻術の中―


 目の前に広がっていた風景は、昔みたことがある風景だった。


 桜の舞う季節だった。早生まれの私は、同級生よりも成長が遅く、みんなに可愛がられていた。


 愛や希望、そして情熱や仲間と言ったものに、溢れていた。私はこういう背景もあって、そしてこんな性格からか、よく異性や同性から「可愛い」と言われ、たまたま靴が新しかった事で、学校外で「靴綺麗だね」と言われたり、たまたま乗ったバスの中では、(可愛いなどと)噂話をされるようで、神聖視されるようだった。恥ずかしがり屋の私はその度に顔を赤らめてしまうのであった。


 私は、入学初日から、道がわからずに、クラスで唯一、遅刻をしてしまったので、おっちょこちょいキャラで通っていたのかもしれない。


 家ではそれに反して、ガオ達から「もう中学生なのだから」と強く当たられ、私は二つの人格を形成するようになった。お姫様のような学校生活と、まるでぞうきんのように扱われる家との差…何が本当なんだろうと…本当に嫌だった。自分でも、どちらが本当の自分かわからなくなるほどに私の二重人格は加速していく。昔はこんなことなかった。私は学校ではその正反対の環境だったからか、人と会うと安心して恥ずかしく寡黙になり、家ではその酷い扱いに返すように怒りのまま話すという、そういうギャップに耐えられなくなった。段々私は自分に自信が無くなり、いつの間にか、小学校の時に親友と思っていた人と普通に話す自信もなくなっていた。


 私はそれでも、「なんとなく」で運動部に入っていた。雨の日、学校の校舎の中を一階から三階まで走っていると、なんで私は重要な問題をほったらかして、こんなことやっているのだろうと、悔しさが込み上げてきた。そして、将来見返してやりたいと思った。何に対して見返したいのかもわからず。


 そんな毎日が過ぎていて、今日はこの地方では盛んであった雷の1日だった。


「ずどぉぉぉん」


 雷鳴の音が鳴り響いた。「あ…停電だ」「また停電かよ」


 怖がりで敏感だった私は、リアクションをしてしまった。


「大丈夫?」と周りから、男子の声が聞こえる。それとともに、女子からはヘイトを買っているようにも感じられた。「わざとでしょ、あれ」みんな性に敏感で混沌としている世界。昔仲よかった同性の友達からも嫉妬されているような。また同性の友達にはほっぺを強く引っ張られたりした。


「痛い…痛いよ…」そんな声が心の中で響く。


「あの子大人になったらどうするんだろうね」


 そんな声もよく聞いた。


「一体何が正しいんだろう。」


 そう思いながらも、私をいつも庇ってくれて話しかけてくれる異性といた方が、幸せを感じられたと思う。


 雨の日の掃除の時間の前、私はどうやら、早く掃除場所である図書館についたみたいだ。教室からも、だいぶ離れており誰もいない。


「ほっぺ触っていい?」


 面倒見のいい優しい異性だった。この地方特有の大雨の音でその声も殆ど掻き消されていた…私は顔を赤らめながら頷いた。彼のそれは同性のそれとは違い優しかった。


「辛いけど、青春なのかもなぁ」と思った。こんな世界がずっと続いたら…何も喋らなくても周りに可愛がられ続ける世界…それでいい…


 それは私が、嬉しかったから、とても楽しかった思い出だからそう思ったのかもしれない。


 こんな時間が私には、特別だった。喋らなかったけど、周りから庇われるのは可愛がられるのは嬉しかった。


 私は、周囲を歩き回り、ある池にたどり着いた。そこには、魔人のような姿をした何者かと、十字架に貼り付けられいまにも、池に沈みそうになっているポロの姿が見えた。


「私はリバイア、よくここまで来たねえハハハハハ」


「ポロ!!」


「フハハ、フハハハハ。コイツは、幻想の中にいて幸せのまま死んでいくんだ。それもいいだろう?笑」


「私がそんなことさせない!!まだ彼女にはこれからの未来があるのよ!!!」


「おや口だけかい?私に攻撃しないのかい?」


「私は戦えないんだ‥どうしよう‥」


「戦えたとしても私はお嬢様なんかに負けやしないぞグハハ。ゆっくり沼に落ちるのを見送るがよい。」


「時間がない…どうすれば…」 (心の声。)


「あれ?これどっかで…」ポロは気づいた。これは昔の記憶だと。


 これどこかでみたことあるような…考えるんだ…考えるんだ…自分の力で


 いつ捨てられるかわからないじゃないか 私は主体性を放り投げている。まわりが可愛がってくれるから幸せなんて、ただの幻想だ。周りが良い人ばかりならいいけど、悪い人ばかりになったら将来苦しむことになる。逆にいじめられ続ける可能性だってあるじゃないか!そうだ!!今まさに、彼らの手によって、そうなっているじゃないか。異性に可愛がってもらえるのは本当に嬉しいけど、これは過去の夢だ。いつまでもその光が深い闇を打ち消してくれるはずがない。私は、負けない!!!


 その瞬間ポロの身体がまばゆく光り、意識が戻る。


 嬉しかった。周りに「可愛い」ってそう言われるのは本当に嬉しかった。彼らは私を心配してくれて、


 可愛がってくれた。だけど、今の私にはやることがある。


「ちっ」


「もどったのねポロ!」


「キリア!」


「私はもう、惑わされないよ!!」 池の外に逃げ出したポロはそう言った。


「ポロ!!」


「キリア!大丈夫よ!」


「ポロがきたら怖いものなんかないわ!!覚悟なさい!」


「うわああああ」


「お前らアアアアお前達イイイイ 覚悟しとけよ お前らはメデ様に負ける運命だハハッ」


リバイアは倒れ戦闘不能になった。


「なんとかかったわね。」


「うん。」


 あの時のみんなは今、何をしているだろうか。みんなはこの幻覚のように私を可愛がってくれた。嬉しかった泣。ありがとうみんな…泣

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