第15話 孤児院
「あれが孤児院だ。」
子供をそれぞれ隔離して結託を防ぐためのクローズドソサエティとして複数存在してるのかはわからないが、孤児院はいくつかある。ここは、俺の外に行く前の中学時代過ごした孤児院だ。
ここにはもう1人の育ての母親がいるはずだ。寮母である、アリだ。アリはデハに非常に性格が似ている人物で、全ての孤児に影響していた。影響力の強い人物であった。
こちらに向かって走ってくる一人の女性の姿が見えた。
「カイ、私を助けて。」とアリが言った。
俺は無視した。
「あなた、あなた自身が今までカイにしてきた事わかってそれをいっているの?」とみづきが言った。
そう以前と同じだった。彼女は俺が逃げ出した時、俺とイオが家の解約に苛まれていた時、メールでは、こう言っていたのだ。
「私を助けて。ガオに脅されてるの」と。自分は弱い立場にある人間なんだと言わんばかりに。そして、俺たちがその時は慰めた。それにも関わらず俺がイオと共に仕方なく戻る事を決断して帰って来てからずっと俺やイオに怒号や理不尽で縛りつけた。彼女は立場が変わったら態度が豹変する恐ろしい人物だった。あんたたちなんて価値の無い人間なんだからね。あの時帰ってきたあとの孤児院での彼女の言動はそういう無言のメッセージ性を感じられた。
だけど俺は、あの頃の俺じゃない…もう騙されない…
「悪いけど、もう2度と同じ手は通用しないよ。あなたは、立場により性格が変わるんだろう。俺たちが逃げ出した時助けを求めてきた味方だったはずのアンタが、俺たちが帰ってきた時俺やイオに牙をむいたように。恐ろしいよ。」
姉も同様な反応していたことを思い出す。
「そんなことない…ほんとうに助けて欲しいの…もうしないから…」
「お前はガオに屈し諦めた。だからこそ俺たちに攻撃を始めたんだろ。ふざけるな!!!!!」
「もうなんでもマイナスに考えるんだから嫌になっちゃうよ!!!!!」
「マイナス?マイナスじゃない。ただ単に可笑しいことを指摘しているだけだ!」
「くっ効かないか。ハハハ。騙されると思ってたのになあ、ハハハハハ。」
「…ついに正体を現したか」
「あんたたちなんて、ガオが倒してくれるわ。あーあ。それをガオに言ってみなさいよ。言えないでしょ言えないでしょ怖くて。昔みたいに、いつも家に父がいると怯えて下に降りてこない。今でもあなたはそうなのよ。臆病者なのよ!それに今の私はあの時の弱い私ではなくなったのよ。なぜならガオに取り入ることでガオ様が強くしてくれたもの。ガオ様がいろんなものをくれたもの。ここであなたたちはお終いよ。」
奴が攻撃態勢に入る。
「昔のままならここまで来るかよ!!!少しでも同情を見せると、引きちぎられるぞ。気をつけろみづき」
「うんわかってる」
俺には、アリを大きく包み込んでいる大きな負のオーラが見えた。
「カイここは私に任せて」みづきは言った。
「カイは優しいよね。」とアリは言う。
「俺は昔優しすぎた。その言葉を言葉通り受け取ってきた。お前のその言葉は自分の思い通りに人を動かすためのラベリングに過ぎない。支配するための。優しいと言って、断れなくするための。優しいだけじゃ何もできないのに。強くなければ、人間関係も失いお金も稼げない。自由もない。今までそうやって自分の意見を押し殺して生きてきた。お前の意見だけを聞いて。心の声に生きなかった。本当の声は喧騒の中に消え、周りの意見に流されてきたんだ。ただ人を流そうとする圧はこの家族は人一倍強かった。闇金のようだ。あの頃の俺がどうにもできなかったのも仕方なかったのかもしれない。真意を理解してなければ、敵視しなければわからない真相だった。あの頃は親が神のような存在だと無意識で深層心理で思い込んでいた。それがなぜか自然だった。アリは大切な人、そう思っていたから何が俺を苦しめていたのか理解できなかったんだ。それは、自分を犠牲にした優しさ、義援だった。そんな優しさならいらない!!!」
「怖い。私いじめられてるよ!!!助けて!!!」
「みづき気をぬくなっ!!!」
「セントラルブリッジスネイク」蛇のようでそして橋のように巨大な剣技が俺たちを襲う。
「えっ!」
みづきが咄嗟に魔法を唱える。
「マリンサティスファイド」
なんとか間に合ったわね。カイが言わなかったら助からなかった、ありがとう。あの人たちには少しでも同情しちゃいけないってこと身をもってわかったよ。
「私が来たからにはもう安心よ、こいつらなんて私が倒してやるんだから。」
「お前は!?ローラ!!!」
しかしその後颯爽と現れ、二人を回収したのはガオだった。
「なにやってんだお前。」
そのとち狂ったような強い目線を残し、二人を抱え上空にロープで去っていった。
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