第14話 生まれ育った街
俺たちは、先に進んだ。そして到着したのは大きな杉の並木道に囲まれた街。カイは呟く。
「ついにここにきてしまったか…」
「ここら辺は変わってないね」とポロが言った。
「あの木の峰の大きな穴には悪魔か天使、または精霊が住んでるんだってー」キリアがいう。
その時、矢が放たれくるのがわかった。
「妖精さんはいなくて悪かったな。その代わり俺たちがいる。」その木の後ろ側から1人現れた。
「ロウ!!」
「ここは必ずと言ってもいいほど通る街道だ。ここで待ち伏せして正解だったぜカイ。ここでお前を連れていれば、がお様にどんなご褒美を貰えるか」
「周りに人がこんなに」とキリアが言った。さらに十数人の刺客が彼らに襲いかかる。しかし剣を抜こうとは思わなかった。
「カイなんで戦わないの」とキリアがいう。
「俺とあいつは小学校の頃は仲が良かったんだ。そして他のみんなも友人だった。その時の記憶が彼を蝕む。」
「カイに嫌がる行為をしてくるやつらが今更友達だなんて思えない」とみづきが言う。
「そう…わかってるつもり…だけど…」
「カイ、はやく、型を取って!!!」
「例え、どんな理由があろうと、俺たちを止めるものは…俺たちはこの先に行かなきゃならないんだ…」
カイはロキ達を追い詰めた。
「セキュリティボックス」みづきは魔法を唱える。俺の同級生たちはそこに閉じ込められた。
「しばらくはあそこからはでれないはずだわ。いくよー」みづきがカイの手を取った。
「過去の思い出だけは美しく、そして時にそれは自分を蝕むものだ。無かったことにしないと自分が壊れる。そして進めない。」
ロウたちとの戦いは、これからの戦いの序章であった。他の同級生もみんな怖かった。何年も話さなかったのもあるが、もはや穏便に話せる空気感もなかった。わかってはいたものの悲しかったし、これが時間が過ぎていった代償なんだと気づいた。俺が無気力で憂鬱で誰とも話す余裕もなかったあの時間の…俺が話す余裕もないぐらい家族に追い詰められていたあの時間の…家族に辛い方へ辛い方へ誘導されていた時間の…
ポロは、こんなことを思い出した、架空の友情があったと。その時はもう子供同士は喋れなかった。私が喋れなくなったから。それなのにもう仲が良くないのに、私たち幼馴染は母によって引き合わされて、一緒にいる時間だけは中学生になっても長かった。友人には、幼馴染には悪かったと思う。私は幼馴染と同じ車に乗りながら、何時間も整骨院にいくのに車の中で無言で過ごした。そんなのが地獄だった。二人とも、抗えない、親の権力に屈してるようで。そんな彼女が私から離れていったのも今思えばわかるかもしれない。同じ習い事にも通ったが、彼女と話したのは頑張って喋った一回だけだった。それは架空の友情、そう言うしかなかったと思う。ただ一緒にいるだけで中身は空っぽだった。そんな思い出さえもこの場所に来て思い出すことになった。きっと相手も楽しくはなかっただろう。苦しかっただろう。権力によって繋がれた友情だったんだから。わたしに恨みがあったかもしれない。それから彼女と話すことはなかった。ただ、彼女を、彼女が誰か友人と二人でいるところを眺めるだけで。小さい頃から遊んだ、そんな写真が目に沁みた。
俺は、みんなを連れ、颯爽とこの場所を去った。
「今さらガオを倒したところで、友人関係が変わるのだろうか…それがみんなと仲良くできなかった言い訳じゃないと認められるだろうか…時間は過ぎていき、全てのことはみな忘れていく…全てが変わっていく…
「俺(私)だけが今でも過去に縛りつけられているのだろうか… 」ポロ、カイ
「俺はもっと恋愛をしたかった。中学の頃俺にいいよってきた女子も嫌いではなかった。むしろ少し好きかもしれないという気持ちもあった。自分に自信がなかっただけで嫌いじゃなかった。顔は好きだった。あの時、普通の精神状態だったら、彼女と付き合ってたのかもしれない。」
「変わらないとしても…やらなければならない…これからの未来を変えるために…」
「不幸だった分大きく幸せにならなきゃ。ここにいたみんなを見返すぐらいにさ。ここにいた誰にも負けないぐらいにさ。」そうみづきが言った。
「ああ!!」俺は涙まじりに吐き出した。
同じ頃、夕焼けが綺麗だったこの街をxから見たフィウはこう思った。Xの上過去通った学校に目を向けた。
「この街も狭いようで広い。特にこの不自由な身体ではそう思う。彼女はこの街で何をしているのだろうか。もう彼女は僕のことを忘れているのだろうか…こうしてる間にも時間はすぎてゆく。みんなこの間にも結婚しているのだろうか。
街のどこかで誰かと幸せを築き、暮らしているのだろうか。彼女がいたから、この街も悪い街じゃないと思えた。全てが悪いわけじゃない。そんな彼女も誰かと…そんな当然なことを思うと、胸が苦しくなる。」そんなことをこの夕暮れの中、考えていた。
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