第13話 旧県庁所在地ナミト、混沌の中の毎日


 そして、俺たちはついにハネスト国近郊の地、ユウイでみんなと落ち合う日が来た。俺たちはみんなと連絡を取り合い合流した。そして久しぶりにあう仲間との雑談に花を咲かせていた。


俺たちは、かつてのお城の跡で合流し、ゆう教授と落ち合い、研究所の分館に行きそこで眠りについた。そして翌日。朝起きるとxseedの上空がが漆黒の雲で覆われていた。


「これは・・・」とカイは呟いた。


 俺たちはゆう教授の元に向かった。


「ついにxseedが完成したのかもしれん」


「xseedが完成したらどうなるんですか?」そうカイが言った。


「わからない、しかし最悪な事態になる予感がする。それはこの空が物語っているとも言えよう」


「取り敢えず準備から始めよう。あの国は危険で今はスタートレインは運行できない。撃ち落とされる可能性がある。周囲が見えて守りながらいける船を使っていったほうがいいだろう。まず川を渡らないといけないな」


「船なら、何台かあるぞ。好きに使ってくれ」そう漁師が言った。


「ありがとう、俺たち行くよ」


「気をつけてな。」


 そして、国境付近に着いた俺たちは水路に飛び出し、ついにあの国入ろうとしていた。


「攻撃が来る!」とポロが言った。


「バリアー」


「みづきバリアありがとう。あとは俺がなんとかする」


「ろっかくえいり!!!」


 四方八方に飛ばされた、剣の衝撃波が敵の一団を粉砕した。向こう岸についた頃には、相手の見張りは完全全員にダウンしていた。こうして彼らとの最後の本格的な戦いが始まった。





 俺たちはそうしてはじめの街ナミトについた。ここはハネストが県庁になる前に県庁だった街で、この国の1番の規模を誇っている街だった。俺たちが侵入したことを知らされていないのかみんな普段通りの生活をしていた。ここは高校の近くだ。大規模な校舎が見える。手で顔を押さえながら俯いていて顔は見えないがそのバス停で泣いている一人の男の子が見えた。


 縦横一線に広がった高校群…みんなは俺たちの存在に気付いていないようで、通り道だった為その学園都市の周辺を歩いていた。午前11時半ごろ…いまにも雨が降り出しそうな天気のなかとある学校近くのバス停に大泣きした後だと思われる少年の姿が見えた。まだひくひくしている。


「どうしたの?」そうカイは声をかけた。


「えっへん…えっへん…あはん…あはん…」


 彼はろれつが埋まっていないようだった。


「大丈夫だよ!?敵じゃないよ!!」みづき


 少し経つと落ち着いたのか、安心したのか話し始めた


「自分はいつもいつも周りに迷惑かけてばかり、死んでやる!!しにたいよ…」


 感情のまましゃべっているようだった。


「そんなことないと思うよ、本当に悪い人だったら、そんな自己嫌悪で苦しまないはずさ。」


「本当に…?」


「全部話してごらん、聴くからさ。少し歩いた先にチェーンカフェが見える、そこにいこう。」


「お金なんてないよ。」


「いいよ俺たちが奢るから!」


 しばらく歩いた、道に関する会話だけでほとんど無言だったがその時間はとてもあっという間だった。彼はずっと俯き加減だった。なぜこういう時間は早く感じるのだろうか。彼はそう思った。


 店につき、コーヒーを頼み、空いている席を見つけ、そこに座り、俺たちは話を聞くことになった。真剣な眼差しで見つめる彼らを目の前にして全て話し始めた。


「自分の周りから友達が消えた。こんなんじゃダメだ。なんで自分があのグループなんかにいなきゃいけないんだ!!昔の地元の友人はどっかいった。どこなのかわからない。誰も助けてくれるはずない。そして顔も老けてる。この街のファッションビルのエスカレーター脇の鏡に移る俺の顔はとても疲れて見える。40代と言われても違和感のないような。そしてみんなに迷惑をかけている。自分は…自分は…毎日こんな生活しなきゃならないのか!!なんで俺は…こんなに周りに迷惑かけて、みんなに何も言われないんだ…」


 俺たちは静かにうなずくことしかできなかった。


「いつものことを話そうと思う。」そう言って静かに数秒が経った。彼は話し始めた。


「今日もあの日々が始まるのか・・・憂鬱で仕方なかった。周りは皆他人のようで、自分は1人だった。電車の中、暑いのぼせる。汗が物凄く出る。やばい、倒れそうだ。自分は、のぼせてしまったのか、満員電車の中で1人座り込み、汗だくで電車が目的地まで着くのを待っていた。それからも体調不良なのかお風呂を上がったあとは、脱衣所で横にならなきゃならないぐらいのぼせることが続いた。


「自分はいつまで、こんな風に生活をしていくんだ。友達も誰もいない。」


「あれ・・あの人自分の幼馴染みじゃなかったっけ・・なんで自分を無視し続けるの?・・」


 今では、そのような友達は消え、自分に嫌がらせばかりしてくる友達ばかりだった。自分はそんな古い思い出に浸ってばかりで、過去の栄光を嘆いていた。自分は流れるまま流されるままに過ごした。惨めなまま、誰も指摘してくれる人もいないまま、自分だけ子供のまま、取り残されたまま…魔魔…


 いつもの最悪な学校生活。友人関係。


「今日一緒に帰ろうよ」とそうユウタは言った。


「予定あるから」と自分は返す。


「じゃあ待ってるよ」とユウタは言い返す。


 うんざりしていた。だけど、それは「相手にとって失礼な態度なんじゃないか」とはっきり断れなかった。


 キオは嘘つきでやっかいな人物だった。


「どこにいくの?」とキオは言った。


「えちょっと」と自分は言った。


 サイは良くわからないが、自分と普通に話してくれる数少ない人物だった。でもある日こんなことを言われた。


「犯罪してお金稼ごうぜ」


「・・・」自分は何も言えなかった。自分はただこういうことのために仲良くされていただけなのだと思った。


 自分はあまりはっきり、ノーと言えない性格だった。自分は新しい学校に入りひとりぼっちだった。正確には1人ではなかったが、このような友達ばかりだった。毎日朝起きたら一階で両親は大喧嘩をしていた。父や姉に馬事雑言を浴びせられ、家でも勿論1人だったし、学校でも1人だった。


 特にこの学校にきてから酷くなったのだが、自分に謎の体調不調が毎日襲うようになった。


 勿論教室の嫌な彼らは、昔の自分のことなど知っていない、すべて過去のことでもある。しかし、昔はこのようなグループに属さなかった自分にとっては、なぜか話しかけられるだけで屈辱だったことを覚えている。「誰も守ってくれる人なんていなくなった」「理解してくれる人なんていなくなった」それが自分の感想だった。


 授業中は勿論静かな時が多かった。しかし、教室中に響き渡る、自分の唾を飲み込む音。


「ごくん」


「あれ・・なんでこんなに大きな音がするの?恥ずかしいよ・・・そして2、3時間目に入ると、朝ご飯を食べてきてもなる普通には聞かないような大きな腹鳴りの音。自分は、間食としてチョコレートを食べたが必ずしも効果のあるものではなかった。」


「恥ずかしいよ・・・」しかし、愚の骨頂はこんなものではなかった。


「なんでだよ!!!なんでだよ!!!」


 自分は休み時間誰にも見つからないように教室を抜けだし中庭の誰もいないトイレに忍び気付くとそう嘆いていた。


「なんで!!!教室の椅子に座ると、1分間隔でオナラが出てるんだよ!!!ふざけんなよ!!!なんで俺だけ!!!!」


 その奇妙さのため、幻覚ではないかと思った。 しかし恐らく本当だった。音は聞こえ、耳に異常はなかったからだ。


 最初はすかしっぺもできていたが、しばらくそれを続けていると知らぬ間にお尻の筋肉が、緩くなってしまったからか、すかしっぺさえできなくなってしまい、1分間隔に音のあるオナラが静かな教室中を響き渡った。もちろん後ろの席の人には匂いもあったと思うし、特に申し訳なかったと思う。


 腹鳴りの対策として、腸が過敏過ぎて燃費が悪くすぐお腹が減ってしまうことが原因だと思ったから、朝家では食欲が無くてもお腹に詰める感じで食べ物を食べた。しかしそれだと、オナラが酷くなったり、お腹の状況が悪くなって下痢になったりして、正解などわからなかった。学生にも関わらず、電車を降りたあと、自転車に乗って、漏れていたこともあった。


「なんで自分だけ!!!」そう思いながら、いつも中庭のトイレにこもり、無言で歯を食いしばった。


 気付けば自分は教室にくるのが一番になっていった。朝誰もいない学校のコンクリートでできている中庭のトイレで篭っていないと、まともに、授業さえ受けられないからだ。いやまともに授業を受けられた事なんてなかったかもしれない。そう、毎日なんとかノートを取る事だけで精一杯だった。取れないほど辛いことももちろんあった。それでも自分は恥ずかしくて周りの目線が怖くて、授業中にトイレに行く事は一度もなかった。そして授業が終わった後走り出して、中庭や他の棟、できるだけ遠くのトイレに駆け込む。そしてオナラをしてガス抜きをして、トイレをして、教室に戻る、その繰り返しだった。まだ、ちょっとしたマンモス校だったことが救いだったのかもしれない。昼休みもそうだった、全て、トイレのことだけを考え、昼休みの篭る時間が長くなればなるほど、調子が良かったので、誰よりも早く走って昼食を買いに行ったし、教室で素早く食べて、食べ終わってからはずっと中庭のトイレで昼休みが終わるまで篭っていた。ずっと携帯で病気の情報をみていた。


「これは治らないよ、俺だって40年間ずっとこれだから」


「死にたい」


 否定的な書き込みやが多く、本当かどうかわからないが治ったという報告は1割もなかっただろう。その情報で、いろいろな食べ物や薬を試した。ガスが酷かった。「これガスが出なくなるんだってよ。」とネット掲示板に書かれていた薬。しかし効果があったのは最初の2ヶ月ほどで、その効果というものも、トイレに行って出した後に飲むと、ガスが出なくなったという限定された状況に限られたものだった。


 ある日のこと、昼食を食べ終わった。自分は我慢できそうもなかったので、走って中庭のトイレに向かった。しかし途中までキオがついてきた。


「どこにいくの?」


「え、ちょっと・・」


 なんとか難を逃れたものの、自分の精神的な拠り所であるトイレを苦手な友人に知られそうになったのと奪われそうになったのはとても焦った。


最初は電車の椅子などに座る事ができていたが、自分は怖くなり一切座る事はなくなったいた。座ったら音がなるオナラが出るということが恥ずかしかったからだ。また図書館にも行ったが、オナラ(お腹)が安定しなかったため、いくことを諦める事が多くなった。


「この日々はいつまで続くのだろうか?」


「自分はこれからずっと、こんなに酷い顔で生きていかなければならないのか」


そういうことを考え続ける休日がまた始まった。しかし、実際には家にいれば、お腹の調子というものは、授業を抜けてはいけないという緊張感がなく、トイレにいつでもいけるという安心感から、緩和していたと思う。学校と比べれば驚くほどだ。しかし、学校に行けばそうなるのは当然であったということを考えると、憂鬱であった。酷かったのは、「昔に戻りたい」「もう相談に乗ってくれる人も誰もいない」「なんでこんなに顔が気持ち悪いんだろう」というネガティブな気持ちであった。そんな時はいつも昔の自分の写真、卒業アルバムなどをよく見ていた。


 休日はずっと家にいて、何も出来ず次第に夜になっていくのがわかった。2階から飛び降りようとして、家族にバカにされた事があった。こっちは本気なのに。こんな人生で何かが変わるのかな。そう思っていた毎日だった。


「今日はなんでそんなに泣いてたの?」そう優しい口調でみづきはいった。


「今日はなぜ泣いてしまったんだろう。そんな毎日の陸続きにある今日の出来事だった。音楽ホールでの長い話、静かでそれが長時間続いたから、そこは静かで学年全員がいる中で音が響いたから、いつもより精神的に来たんだと思う。全校がいるような場所で無様な真似をしたなんて思ったのかもしれない。全員に聞かれてるとは限らないけど。周りのすべて、敵のように思えたのかもしれない。意識はしてなくても無意識的に。そうかもしれない…自分、その時もオナラが止まらなくて、それでどうしたらいいかよくわからなくて、それで周りに迷惑もかけて、ぱにっくになっちゃって、終わって教室に戻って来て泣いちゃったんだ。もう無理だったから、職員室行って、先生に、『いじめられてるの』って言われて、そこでも大泣きしちゃって早退しちゃったんだ…だって逆なのに…迷惑かけてるの自分のほうなのに…泣」


 彼は呂律が回っていないようで、感情のまましゃべっているようだった。それでもって、年齢の割に幼さを感じる口調だった。それほどずっと一人だったのかもしれない。


「ずっとなの!? 」みづきは涙目で聞いた。


「そうだよ。入学して、一ヶ月経った頃から、自分はもうそういう状態だった。いくつも病院にもいったし、検査もした、いろんな食べ物も薬も試した。全然治らないよ。毎日だよ。だから毎日電車でクラス一朝早く来て、朝の時間が始まるまでトイレにこもる。毎日それの繰り返し。お昼も、コンビニで買って食べたら、すぐに中庭にトイレにこもる。昼休みが終わるまで。午後は午前中よりはまだ調子はいいけど、午前中は一時間一時間の休み時間ごとに他の校舎のトイレの校舎まで行って、トイレやオナラをしてガス抜きをする。その繰り返し。もう駄目だよ…」


「静かになるテストなんて特に地獄。1分間隔で、酷い時はもっと間隔が少なくてオナラの音が教室中に響き渡る。それにプラス、唾を飲み込む音も響き渡る。お腹が鳴る音も、それが大きすぎて、どうにかなりそうなんだ。朝何か食べたら、オナラの音が襲って、何も食べなかったら、お腹が地響きのような凄い音で鳴り響く。だから、間食して、チョコを少し食べてる時が多いけど、それでも上手くお腹の調子をコントロールできないことが多い…勉強なんてできるはずない。今はもう昔のように相談できる友人なんていないし…毎日昔の思い出に浸ってばかり…」


 みづきも俺も可哀想な目で彼を見つめずにはいられなかった。


「うん、もしかしたら、友人関係も関係あるのかもね。誰にも相談できなかったんでしょう。」


「そう。相談できるほど仲の良い友人もいなかった…親も自分を無下に扱った。」


 病院に行ったあとの家に着いたあとの止まった車の中で。「そんなに苦しかったなんて」と母は笑いながら言ってきた。自分はそれを聞いて車の中で発狂してしまった。


「なんで!!?なんでそんなこというの!!!」そんな風に。


「ふざけるな。何がそんなに苦しかったなんてだ!!!ふざけるな!!!!!馬鹿にするのもいい加減にしろ!!!」


「親は!家族は!!!心配なんてしてくれない。そんなの気のせいだよってみんな言う。軽々しくオナラで笑いをとればいいじゃんとか、授業中トイレ行けばいいじゃん、とかそれができたら、そんなのできたら苦労しないのに!!!そしてそれに関して母は『お父さんもお腹痛くて倒れてんだよ』とか。ここにはない心療内科に通おうと提案してみても『病院は遠いから行けない』とか、そんなんばっかり。まだ自分は一人で行ける年齢でもないのに…姉も同じように言う。お父さん心配してるんだからねと怒鳴る。あれで心配してるはずはないのに!!!なのに心配してるんだよと欺瞞を言う!最低な人達だ!!!


父は自分のことなんか無関心で、会う時はあるけど、きまって深夜で『こんな夜遅くまで起きてんな』って怒鳴り散らされるだけ。父が帰って来てお酒を飲んでなかった姿は見たことない…朝は毎日のように、父と母が喧嘩してるし、それ怖がりながら見てる。たまに父のとばっちりがこっちに向かってくることがあるから辛い。自分は何もしてないのに…」


それも原因だと思うわ。朝、そんな家族と話してから学校に行ったんでしょ?


うん


多分無下に扱われてたんじゃない?無理矢理話しかけられたり。


そうだ。


そんな家庭にいたら身体が壊れるのも当然だわ。


もう大丈夫だ。俺たちがなんとかする。


「ほんと!?」


そう言うと、涙ながら彼は顔をあげた。


「カイお兄ちゃん…?」


「ヒロオ…ヒロオ…なのか…?」


「顔酷いでしょ。」


「そんなことない。今までよく頑張ったな。」


「ありがとう!」


「この子はヒロオっていうんだ。小学時代、一緒に孤児院で過ごした一人さ。よろしく頼む。」


「これから頑張っていこうね」


「よろしくね」


「俺たちは、今ハネストを変えようとしてるんだ。もうこれ以上悲劇を繰り返させないために。」


うん頑張ってね。僕もカイに負けないぐらい強くなる!!優しくなる!!!


「そうか、強くなれよ」 カイは安心した。そして彼の今後が幸せであることを祈った


俺たちは一度国境の街ユウイに戻り、彼を預けた。


「ゆう教授よろしくお願いします」


彼の話を聞いた。嫌な時代には嫌な友達しかいないということなんだろう。これが朱に交われば赤くなるということか。そんなことわざの意味を思い返した一日であった。


そして彼の将来をしばらく祈り続けた…彼もまた、優秀な何者かになる日がくるのかもしれない…そう思いながら…


その後このような夢を彼は見続けたという。


「もう安心だ!俺たちがいる。」


「うん泣」


「これからは自由に生きるんだ、生きるんだ!!!」


「生きるよ!!!カイお兄ちゃん!!!!!」

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