第12.5話 カイとみづきの友情
これは夢か。俺はこんな夢を見ていた。イオと一緒に逃げ込んだ場所にいる夢。
「ここは都会だな。いつまでこんな日が続くんだろう。俺は転がり続けここに迷い込んだ。しかしこのままでは時間制限がきてしまう。何もかも手詰まりな感じがする」
そう言って昔ガオから逃げるために飛び込んだ愛宕荘での日々が思い出される。2階は4部屋、建物の構造は正方形でそれぞれの角に4部屋ある構造だ。1階は2人が住めるようだった。
「しかし、なんでこんなところに俺はいるんだ?」
「カーイ!これからも頑張ろうね」
イオが優しかったそういう懐かしい思い出が蘇ってくる。もう2度と戻ることのない時間。
「これは夢なのか」
「ああ。いつもイオには支えてもらって感謝だよ。本当に辛いことばかり・・・この世界は地獄みたい・・」
「ここは地獄だよ!!!」
なぜかそんな一言で胸が熱くなった。共感してくれるイオがいたから、俺は将来を夢見て頑張れたんだ。あの時、2人で完璧に抜け出してさえいれば、 イオは今も俺の近くにいたのかもしれない。そんなことを思いながら、この懐かしい思い出を回想する夢の空間に佇んでいた。
そして、一人の少女の声が聞こえた。
「わぁ!!!驚いた?私たち1ヶ月この街に住むことになったでしょ。だから私が部屋を借りといたの。それで、もう帰ったんだけどさドユイさんに手伝ってもらって、寝てる隙にカイをこの部屋に連れ込んでドッキリしかけたの。ぐっすり寝てたからね」
こんな偶然があるのだろうか。
「みー、ここは俺がガオから逃げている時、イオと2人で過ごした思い出の家なんだ」
みーは言葉を出せなかった。
「いやまあ、ここは大都市だから、いずれは戻ってくるという感覚があったんだ。しばらく2人で過ごそう。こんどこそ、大切な人を離したりはしない」
「それにしてもなんで、ここは人がいないんだ」
「ここ立地がいいでしょ。大金払って、貸切にして貰ったんだよ」
イオとの思い出を思い出し、その場所にみづきと二人で行った。
「みづきこの芝生いいだろ。上を眺めればこの国で2番目の超高層ビルが見えるんだぜ」
「うん!素敵!!!」
「そうだな…あの田舎の河川敷の芝生もいいけど、高層ビルが眺められるこの都会の芝生広場もいいな。」
―回想―
「カイー今度はあっちいこー。芝生の丘があるよー」
「そう言えばそんな場所があったな…」
「…たまには、悩みを忘れてぼっーと空を眺めるそんな日もいいよな。」
芝生の上で二人寝転びながら上を見上げる。
「こういう時間がなきゃ壊れてしまう…」
空を見上げると真上には、当時この国で一番高かった高層ビルも一緒に見えた。今となってはそのビルも二番目の高さだ。時間の経過をゆっくりと感じた。
「ここはタカサキ中央公園かあ。静かな公園だね」とみづきが言う。
「ああ、しかも眺めもいい」
「こういう庶民的な公園で充分だよな」
「えー私は定番のデートスポット的な公園がいい!!」
「…次は、考えておくよ」
「最近イオさんの思い出ばかり話すけど、もし、イオさんと私と結婚するなら、どっちなのぉ〜?」
「そりゃみづきだよ。ただ今は想い出に浸っていたいだけさ」
「ほんとぉ〜笑」
愛護荘(シェアハウス)に戻るとそこには、久しぶりの顔ぶりがあった。
「ああ、ヤマさんこんにちは」
「カイくんだったのかい、この家を買い取ったっていうのは、ちょっと忘れ物ないかみにきてね」
「俺っていうか…まあそうです。ヤマさん、機会があれば飲みに行きましょうね!!」
「そうだね!」
そんな非日常な空間で俺たちは過ごした。この街で一番の高層ビルの灯りが見える部屋で。この街の高層ビルを一望できる丘の上で。時が着々と過ぎていくのを感じた。その中でも俺はこの剣技を特訓できる施設に入り浸っていた。
「まだまだだ。」
夜はこの大都会で彼女と過ごす日が多かった。
「みづき、ここは夢のような素敵な街だろう」
彼は丘の上のこの街全体の夜景が見える場所でそう呟いた。
「うん、素敵な夜景。明かりが煌めいて見えるね」
「あれがこの前登った展望台があるビルだよ」
「素敵。ここにいればどこにもいける。こんな場所で一生カイと過ごしたいなぁ(手を握り体を寄せる)」
「やめろって」
「んふふ 」
俺たちは2人でカフェに行った。
「ここは俺とイオのお気に入りのカフェだったんだ」
「広くて、いい雰囲気だね」
…
品物が運ばれてくる
「ごゆっくり、ごくつろぎください」
「二人だけの時間を楽しもうか」
心地良い音楽と接客。広々としているのに綺麗で開放的な作りで人も少ない、それでもってプライベートを保てる席もあり、席の感覚もきつくない。都会の喧騒を忘れられるようだった。この薄暗さと音楽もロマンチックさを演出していた…淡い気持ちになっていく。光をばかしたような。水の光の雫をぼかしたかのような。
これこそが、目指すべきところなんじゃないかな、この至高な時間こそが。
本当に素敵…
「ここはイオさんとの思い出の場所だったのよね」
「ああ、ここはよくイオと一緒に物事を考える時に好んで使っていた場所だよ」
「カイ、これからどうしよっか!? 」イオとの思い出が思い出される。
「イオとにかく働き口を探すことだ。だけど、俺たち何も身分が証明できない。保証人もいない。そして住民票やアルバイトや就職するときには基本必要なんだ。しかし住民票をここに移動したら、住民票経由で俺たちの居場所が見つかってしまう。」
「うん」
「イオそんな怪しいやつ誰も取りたいと思わないよ。そんなの拾ってくれるのはブラック企業だけ。そんなところにこき使われて、負の連鎖が続いていくだけだ。」
「そうかなカイ。私だったらとるよ。わからないよ。保証書や住民票が必ずしも必要ではない仕事だってあるかもしれないじゃん。私も頑張るから、カイも一緒に頑張ろう。」
そんなことを思い出した瞬間にみづきから声が聞こえた。
「これからは私との思い出を作ろうね」満面の笑みでみづきは言った。
ふと我に返った。その通りだった。今は彼女がいる。過去はもう忘れて彼女との新しい思い出を作りたい、そう思った。みづきがいたからここまで頑張ってこれた。今更イオのことを思い出すなんて失礼だと思った。
「あの時、本当に感銘を受けたんだ。仕事もなく困っていた俺に(できるだけ安く)スーツを譲ることを責任者に取り繕ってくれた君は、似合うと言ってくれた君はまるで、絶望ばかりだったこの世界を照らす案内人のように思えた。優しく真剣に受け容れてくれた君にどれだけ救われたか。本当にありがとう。」
「君が本当に頑張らなきゃならない状況だって伝わったんだよ。君が言ってることだって本当だと思ったしね。だから私は助けたいって思った。それだけのことだよ。」
「ありがとうみづき。」そう涙ながらにいった。
「どういたしまして。てへへ」
そしてそのムードのままに俺たちはトヤマ公園にきていた。
「カイ!結局ここにきちゃったんじゃん!」
「みづき!!チュ」カイは何も言わずみづきにキスをした。
「照れる」
時が止まっているようだった。2人は無言のまま、しばらくの時間を過ごし、街中に消えた。(こういった)
「カイ大好き」
そうしたゆっくりした生活を過ごしながらも、みづきは上級魔法を完成させた。
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