第4話 キリア
ミズウラは、女性的な色香を漂わせる美しい街並みだった。そこには一人の少女。満天の空の下。 彼女は病院の受付嬢をやっていた。お昼の休憩時間だった。
「今日もいい天気だなあ、今日もナガくんと遊びに行こう。とにかく遊びまくる!でんわ、でんわ、こうやって空いている時間は、でんわするんだあ」
陽気で子供っぽく人懐っこい性格はみんなに愛されていた。しかし、彼女の過去を知るものは誰ひとりいなかった。そして、その事も彼女自身も忘れていた。精神的なショックにより、記憶を無くしてしまっていたのだ。そして今日はそんな彼女も病院の休日だった。ここはミズウラ、ユクバに面しながら、独自の生活圏を形成し、ユクバとは全く違う街。
街中で強くなる方法を探していた。具体的な情報はなかったが、その道に行くことを決意したカイは剣を整えた。今日は外でイベントをやっているようだ。司会者が発言する。
「ミズウラ美少女グランプリのキリアです」
「みなさん今日はありがとう!!」
キリアの一言でこのイベントは終了したようだった。そしてキリアがカイを見つけ話しかけてきた。
「ねえねえそこの少年!私と一緒に遊ばな〜い?」
「俺?ですか?」
「そうよ君。だってナガ君が忙しいっていってるんだも〜ん」
「カイ、いくよ」
「ああ」
「お姉さん、悪いです」
カイはみづきに引っ張られその場をあとにした。
「は〜い・・・へ〜ガールフレンドがいるんだ。うばっちゃおっかな〜笑」
「こんな綺麗な街、初めてね。」
「ああ、まるでデートみたいだな」
「そんなんじゃないから!笑」
「でもあいつ面白いよなー。笑顔が憎めないっていうか」
「さっきのキリアさんのこと?」
「あれれ〜わたしのことぉ〜?」
「え!お前ついてきてたのか!」
「カイがそういうのなら、そうかもねー」
「ごめんーごめんー」カイはなだめた。
2人は火花を散らしているように思えた。
「キリア、お前職業は何なんだ?」
「癒しの受付嬢だよぉ〜」
「そうか、それって戦えるのか?」
「ああ私は、こう見えて、一流魔術師なのぉ〜」
「本当なのか・・・!?」
「一応幻惑魔法が得意だよ、えへへへ」
「あーキリアさん、おはようございます!」
「おはようー!(笑顔)」
彼女はファンが多いようだった。
「キリアは人気あるんだなー」
「今日花火大会なんだけど、三人で一緒にみよぉ〜。とっておきの場所があるんだぁ〜」
「観たい!観たい!」とみづきが言った。
「じゃあ決まりだな!」
俺たちは、時間になるまで、食事を食べ、観光地を巡り、最後にはキリアの行きつけの場所で休んでいた。
「みづきこんな平穏な日がずっと続けばいいのにな・・・」
「うん、こんな時間がずっと・・・」
「ここは、美術館・図書館なんだよぉ〜。きにいったぁ?」
キリアの一言で二人は元気を取り戻した。
「一緒になってるなんて凄いね!おまけにカフェも併設なんて。」
「女子には人気だろうな。こういう場所」
「そろそろ、時間だわぁ〜こっちだよ!この図書館の屋上が屋上庭園になっているの。普通は花火大会の時間帯は屋上庭園にあがれないけど、私だけ特別館長さんに鍵もらってるの!」
「凄い人脈だな・・・グラマラス美人は得するってことか・・」
「じゃあいこー」
「いこー!」
「駅の向こう側に湖があるのぉ〜。そこからあがるのぉ〜ほらこの辺ならきっと特等席ぃ〜」
そして花火大会の時間帯がやってきた。
「こんなに綺麗な屋上に私たち三人しかいないなんて夢みたーい」
「楽しいね〜みーちゃん、カイぃ〜」
いつの間に呼び捨てなんだよと思いながら、俺は呟いた。
「ああ、こんな素敵な夜はない」
俺たちは目を輝かせた。
「カイ楽しいね!!」
俺たちはこの夜、花火を心から楽しんだ。俺たちの周りに心地よい音楽が流れているようなそんな感覚だった。そしてこの時間もとうとう終わりに近づいていた。
「もうそろそろつくなあ。ついでに花火大会も楽しんでやるか・・・」
花火大会が終了十分前になろうとしていた頃、遠く離れたところから輝く何かが見えた。
「あれは、なんだ!」
「なにかくるよ〜」
「・・・」
光る電車のような物体が、頭上に到着したのだ。そこから降りてくる人の姿が目で見える範囲まで来た時、キリアは呟いた。
「あれは!・・・」
その瞬間、キリアの脳に電撃が走った。そして崩れ落ち、気を失ってしまった。
「お〜フロンみーつけた!」
「フロン!?誰のことだ!!」
「その声は・・やっぱりカイか〜。へぇー、そしてあの洋服屋の娘か」
頭上から、がおが降りてきた。
「フロンはその子だよ」
「我々の調査団から、情報が入ったのは昨日のこと。病院にフロン似の人物がいるってね。彼女は戸籍上は死んだことになっていた。川に溺れてね。だからこの情報が入った時驚いたさ。あいつらは死を偽造したのかってね。そして、今日確信に変わったんだ。フロンは私を騙したって。死んだことにして逃げたってことで私は怒り狂ってるんだ!!だから、一緒に帰るんだよ!!!」
みづきとカイは剣術、魔法は高校の時に少し学んでいた。
「お前の好き勝手にはさせない!はあああ、エターナルプロミス」
「マジック・ファイヤー」
「かすり傷もつかないけれど?笑いくよ、バーストジャンクション」
コンクリートが飛び散る。
「ああああ」
みづきとカイが地面に崩れる。
「あれ、やりすぎちゃったかな〜一緒に帰らないといけないのに。ごめんねぇ」
「クソッ、今の俺たちじゃ力の差がありすぎる」
「まけたくないよ・・・」
次の瞬間、細かい水しぶきに近い光が、周囲に広がった。
「おい、こっちに逃げろ!」
知らない声が俺たちを誘導しているようだった。
「そう簡単に逃がしはせんよ!」
急いで走ったが、すぐがおが追ってくるのがわかった。そして俺たちは走り湖の湖畔に辿り着いた。彼の身体は浮いているように思えた。
「今日は花火大会だ、それ用の船がここの近くに止まっているはずだ、それに乗れ!」
「あとは、俺がなんとかする。逃げろ!」
俺たちは謎のフードの男の言う通りに、近くにあった船に乗り、戦況を見守っていた。そして、彼の魔法は俺たちの船を見えないほど遠い反対側に凄い勢いで流し始めたのである。それだけで相当の能力者だとわかった。遠くに、彼とがおが戦い続っているのが。見えた。俺たちの能力とはレベルが桁違いの闘いだった。船が動き出してから、しばらく、時間が経っていた。やがて、彼の姿やガオの姿も見えなくなった。
「う・・う・・」
「キリア!!だいじょぶか!?」
「私、思い出したよぉ〜」
「そう私はあの日・・・。 カヌーで川を漕いで逃げ出したの。何かわからないけど辛かったよ、自由になりたい、そう思った末の行動だったの。そして私の周りの理解者も、頼んだ通り。私を死んだことにする手続きをしてくれたんだと思う。だからガオに死んだと思わせられた。ガオの顔を見たから記憶が蘇ったのかもしれない。もうどのぐらい水に流されたのかわからない、食べ物が底をつきていたよ。だけど、私はどうしても生きたかったよ。それだけを思って、流れるままに流された。それで辿り着いたのがこの街だった。自力でなんとか街に上がった後、私は気絶してしまったの。次に起きた時には、病院のベッドの上でそれ以前の記憶が消えていることに気づいた。ここにきた安心感からショック過ぎた過去だったから、私の脳が制御したのかもしれない。二度と思い出すことのないようにと。もしくは何らかの障害だったのかもしれない。そして私は拾われ養子になりこの名前を授かったの。」
「そうか、ハネストで暮らしていたんだろ?今まで、よく生きてこれた。それから死を偽造して、この街に辿り着いたなんてよくやったよキリアは」
「うん。辛かったよぉー。」
彼女は泣き叫んでいた。
「大丈夫だ。これからは俺が泣かせない」
夜の月が1人の彼女を照らしていた。
「偽造死をしたいほど、私は追い込まれていた。あの時の行動さえ無ければでの幸せな生活を送ることができなかった。きっと正しかった。ありがとう、そしてさようなら、おばあさんおじいさん」
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