第3話 研究学園


 しばらく、二人は無言だった。それだけ険しい道のりだったのだろう。彼らはこの辺りでは一番大きな街に向かっていた。


「みーあそこだ」


「あそこは!」


 山越えに見えた大きな道路と高層ビルは、研究学園都市ユクバであった。ユクバはこの地方では有数の都市であり、名前の通り、研究者が多く集う街らしい。ペチュニアに近かったが、山を越えなければ辿り着けない場所にあり、みづきも初めての場所のようだった。人口はペチュニアのおよそ6倍であり、大きな街並みを形成していた。


「ここが噂の研究学園都市ね。ペチュニアと全然違う。凄い。」


 山頂から見える、輝かしい夜景は今までの辛さを全て忘れさせてくれるぐらい綺麗だった。


「さて、いこうか」


 まだここからは、中心部までは遠いようだった。5時間近く歩いただろうか、ユクバ駅の周辺に到着し、宿屋を探し、そこで、俺たちは疲れ果てていたので、部屋に入ってすぐ眠りについてしまった。気づけば朝になっていた。


「うわぁーカイ!!何でここにいるのぉー!!」


「何でいるのって!うわあああ。悪い」


「ダメ!!!!!」


 気づけば同じベッドに寝ていた。そんなこともありながら、ユクバでの一日が始まったのであった。新しく作られた計画都市だけあって中心部の全ての建物が洗練されているように見えた。ユクバ国際会議場、今日ここでは、魔法に関する大きな会議をするようだった。そして、その噂は街中に広がっていた。


「今日は魔法についての会議をするらしいぜ」


「へぇー面白そうだな。覗いてみるか!!」


「お前は入れないだろ笑」


「あーそうだったな、さすがに一般人は立ち入り禁止か。諦めるか…」


「そういえば、今は魔法道と剣士道の時代。全然違う世界のことだと思っていたけど、俺たちはこれを極めるしか生きる道はないかもな。」


「やろうよカイ。私もやるから。」


「俺も少しなら学生時代剣術を習ってきたから戦える。みづきは?」


「私も一度興味があって練習したら魔法できたよ!少しなら使える!」


「ちょうどだな。これはガオに立ち向かう為の強力な武器になる。この会議に参加しよう。」


「入れるかな。」


 勿論、俺たちのような一般人がこの場所に入れる資格はあるはずがなかったし、周囲は警備員に囲まれていて、特別警戒中のようだった。


「何か手があるはず。」


 カイの真っ正直な性格が幸いしたのか、直談判に乗り入れようとしていた。しかし、中に入るにはあまりにも警備が厳重だった為、会議場に入ろうとしている学者にお願いをして回る計画を立てそれを実行したのである。会議場前で彼は、話しかけていた。


「すみません、学会に参加する方ですか?」


「なんだお前は!!」


 相手にされるわけもなかった。百人程度に話しかけただろうか。


「まだだ!」


とカイは呟く。


「すみません!!」


「どうかしたのかい?」


 まともな会話になっても、無理だと言われることを何度も経験した。


「どうにかこの会議に参加させてもらえませんか?」


 そう言い終えると彼は土下座をした。次も駄目だろうと考えていた。


「そこまでして、入りたいのかい?気に入った。私の権限で特別に参加させてあげよう」


ついに二人の願いは現実になったのだ。そして彼はこの会議を主催した当人だったのである。


「それでは、会議を始めます。」


「最近、魔法道と剣士道というものが急激に普及してきました。その反面、悪事も増えています。このままではこの世界は崩壊するでしょう。その為に、強力な魔法が必要だと思っています。この世界の平和のために、強力な魔法を国の威信をかけて作りましょう。賛成いただけますか!!?」


「反対だ!!!」


「これが国民に意見を伺った結果だ。みてみろ!税金を使って、そんなことをするなんていうのは無駄遣いだ!!!」


「反対派が行なったアンケートになんの信憑性があるのですか?そりゃ逃げますよね。近くで反対と叫んでいる人がいて、反対の看板をかかげている人がいる中でアンケートを取ったら」


反対派と賛成派の争いが始まる。


「魔法は希望となると思っています。」


そう教授が言う。争いは続いた。しかし、しばらくするとカイが演説を始めた。


「俺は、悲惨な街で育てられてきました。そしてそこから逃げ出してきました。そして今も追われています。そういう人達に立ち向かうにはどうしても、強力な武器が必要なんです。どうかお願いできませんか。」


 そうして彼らは頭を下げた。その後何時間も話し合いは続いた。


その後「この地方を守るために必要」ということで、強力な魔法の開発に取り掛かることに、議決された。教授とともに数時間も説得に当たった俺たちは疲れ切っていた。


「カイ君、みづき君、助かったよ」


「ゆう教授、こちらこそ参加させていただきありがとうございました。」


「私はとにかく魔法の研究にとりかかる。私もできるだけ君たちに協力する。いつでも連絡をくれ。これが連絡先だ。」


「ありがとうございます」


「では私はそろそろ行くことにするよ」


「はい」


「そうだ、近いから一度ミズウラに行ってみたらどうだい?電車ですぐだし、あそこは水の都と呼ばれていて綺麗だよ。この時期だとちょうど花火大会やってるかもね。湖の上に打ち上げられる花火が有名なんだ。それにあそこも都会だから何か情報があるかもしれない。強く…なるためのね笑」


「強くなりたいです!ありがとうございます。行ってみます!!」


「気をつけなよ〜」


「それじゃあ明日早速行ってみるかみづき」


「うん、楽しみ!」


そしてカイたちはユクバに泊まり明日に備えたのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る