第48話 あらためて登場人物の紹介とこれまでのお話をおさらい

冴島さえじま みさ緒】

西洋人の血が混じった色白の美少女。

純粋の日本人とは違う容姿のせいで、周囲からは差別的な扱いを受け、自分に自信 がなくてうつむいてばかりの少女に育った。

2歳まで東京の冴島家で暮らしていたが、その後は、育ての祖母フミの故郷の村で生活。

フミが死んで、15年ぶりに再び冴島家で暮らすようになった。

フミに仕込まれて裁縫が得意。

恭一朗、祥吾、巴といとこ同士だが、実は血のつながりはない。

だが、そのことをみさ緒は知らない。


【冴島 恭一朗きょういちろう

みさ緒の従兄。琢磨の息子。年齢はみさ緒の10歳上。

身長181cm、眉目秀麗びもくしゅうれい、独身。常に沈着冷静、優しくて温厚。

日本有数の商社である冴島商会の支配人として経営を担っている。

みさ緒が2歳になるまで一緒に暮らしていたので、小さい頃のみさ緒をよく知っている。

妹のように思っていたみさ緒にかれ、今は一人の女性として深く愛している。

東京の冴島家在住。


【冴島 琢磨たくま

恭一朗の父、みさ緒の伯父おじ。先代の婚外子こんがいしであるため、冴島家の傍流ぼうりゅう

卓越した商売のセンスと、その人柄を見込まれて、先代から冴島商会を任された。

冴島商会の代表取締役。冴島商会が日本有数の商社に育ったのは、ひとえに琢磨の手腕によるもの。

横浜の冴島別邸に住んでいる。


【冴島 祥吾しょうご

冴島本家の嫡男ちゃくなん。みさ緒の従兄で4歳年上。

祥吾の父は琢磨と異母兄弟だが正妻の子であるため、こちらが本家筋。

東京帝国大学の学生。恭一朗に憧れて、兄のように慕っている。

明るく真っ直ぐな性格で親しみやすい。愛嬌あいきょうのある顔立ちで笑顔が可愛い美形。

身長178cm。

みさ緒が大好きで、恭一朗を恋のライバル視している。

琢磨と恭一朗にはみさ緒と結婚すると宣言しているが、肝心のみさ緒には、自分の気持ちをまだ伝えられていない(28話)。


【大倉 ともえ

恭一朗や祥吾、みさ緒とはいとこ同士。母が、祥吾の父の妹。

みさ緒の1歳上。

純然たるお嬢様で、その美貌びぼうは社交界に知れ渡っているが、祥吾に言わせるとみさ緒には負けるらしい。

子供の頃から恭一朗のお嫁さんになると公言する程、恭一朗を慕っていたが、恭一朗がみさ緒に惹かれていることを知って、きっぱりあきらめた。

今は、みさ緒の姉のようなつもりでいて、みさ緒の力になりたいと思っている。


【フミ】

冴島家の元女中頭。訳あって、母を亡くしたみさ緒を引き取って育てた。

みさ緒が17歳の時に病死。



埜上のがみ りよ】

みさ緒が暮らしていた村の同級生。埜上家は代々続く村の名士。

周りの村人たちがみさ緒に冷たい目を向ける中、他と区別することなく公平な態度でみさ緒に接した。といっても、友達付き合いをしていたわけではない。

父親が裏でどんな商売をしているか何も知らずにいた。

家が破滅し、自身も苦界くがいに身を沈めることとなって初めて父の裏の顔を知った。


【埜上家 当主】

りよの父。

村の名士としての顔の裏で、金貸し業を営んでおり、羽衣楼の楼主とつながっていた。借金を返せなくなった家の娘を羽衣楼に送り込んで手数料を稼ぐという阿漕あこぎな商売にも手を染めていた。

フミが死んでみさ緒が独りになった際には、勝手にみさ緒を羽衣楼に売って金を受け取っていた。結局、そのことが発端となり家が破滅することになった。


羽衣楼はごろもろう楼主ろうしゅ

坊主頭の大男。横浜で「羽衣楼」という妓楼ぎろうを営んでいる。

埜上の金貸し業の金主きんしゅでもある。

埜上から「買った」はずのみさ緒を手に入れられなかったことで、埜上を追い詰めて破滅させた。

村で初めて会ったみさ緒を気に入り、犯そうとしているところを、恭一朗に阻止されて果たせず、何とかみさ緒を自分のものにしようと執念を燃やしている。


【勝五郎】

港湾の仕事を請け負う奥村組の組長。男気あふれる頼りになる親分。かつては博徒の世界で名を売ったこともあるが、今は堅気かたぎ

横浜港界隈では知らない人はなく、みな自然と会釈する大立者おおだてもの

辰治の行く末を気にかけている。


辰治たつじ

勝五郎の右腕。勝五郎と琢磨には深い恩がある。年齢は恭一朗と同じ。

スリムな体つきだが、鬼と呼ばれるほど喧嘩には強い。

影のある美男。身長181cm。芸者衆にとても人気があるが本人は全く無関心。

口数が極端に少ないので取っつきにくいが、温かい心の持ち主。

妹の千代を不幸な事件で亡くし、みさ緒の身に起きたことに同情している。

みさ緒に対して今まで誰にも持ったことのない感情を抱くようになり、自分自身戸惑っている。


【エドワード医師】

エドワード・カーター 政府の招きで来日しているアメリカ人医師。

銀座でみさ緒が怪我をしたときに、偶然居合わせて手当てをしたことがきっかけで、冴島家との付き合いが始まった。横浜在住。


【きよ】

東京の冴島家の女中頭。元女中頭フミの後輩。

みさ緒が冴島家に来てからは、世話係として親身になって尽くしている。

明るくてよく笑う。



 ----これまでのお話-------------


 冴島みさ緒は17歳で育ての祖母を失くし、独りぼっちになったところを、伯父の琢磨に引き取られ、15年ぶりに再び東京の冴島家で暮らすことになった。


 日本有数の商社である冴島商会を営む冴島家の屋敷は、洋館の豪奢な邸宅で、村で育ったみさ緒は戸惑うことばかり(1話)。

 だが、10歳年上の従兄、恭一朗は、兄のように優しく、女中頭のきよにも親切に世話をされて、次第に冴島家の生活にも慣れていった。


 ある日、みさ緒は従兄の祥吾と一緒に出かけた銀座で、かつての村の同級生、埜上のがみりよに、突然、刃物で襲われ左腕に大きな傷を負ってしまう。りよは、実家が破滅したのは、みさ緒のせいだと思い込んでいた。


 みさ緒が怪我したことを知って、急遽きゅうきょ屋敷に戻って来た恭一朗はひどく動揺しており、みさ緒しか目に入らない様子を見せた。それを見た祥吾は、恭一朗がみさ緒に特別な感情を抱いているのを知る(20話)。


 みさ緒もまた、過労で倒れた恭一朗の看病をした際、恭一朗の背中一面の傷痕を見て、われ知らず頬を寄せてしまう。その傷は、少年だった恭一朗が幼いみさ緒を助けたときにできた傷だった(18話)。


 自分の心の変化に戸惑い、自分の想いを否定しながら動揺する恭一朗とみさ緒。

 だが、やがてそれが愛だと気づき始めていた。

 お互い相手を想う気持ちは日増しに深くなっているのに、伝えることができないままの二人…。


 そんなある日、みさ緒が何者かに連れ去られて行方不明になるという事件が起きる(30話)。

 

 必死に捜しても手がかりすらつかめないまま二日経ち、恭一朗が絶望しかけていた頃、横浜の冴島邸にみさ緒が運び込まれたと連絡が入る。

 奥村組の辰治が偶然、横浜港近くの道でみさ緒を見つけて、羽衣楼からの追手から守ってくれたのだった(33話)。


 みさ緒を誘拐したのは、かねてからみさ緒に執着していた羽衣楼の楼主だった。みさ緒を自分の女にするためだった。楼主に弄ばれ、もう二度と冴島みさ緒として生きることはできないのだと絶望するみさ緒…だが、埜上りよの手引きで何とか羽衣楼から逃げ出すことができたのだった(31話、32話)。


 みさ緒が無事に戻って来たことを喜び合ったのもつかの間、みさ緒には異変が起きていた。自分が誘拐されたことも、羽衣楼で自分の身に起きた忌まわしい出来事も、すべて忘れてしまっていた。

 それだけにとどまらず、みさ緒はなぜか、愛しいはずの恭一朗のことも覚えていなかった(34話)

 。

 みさ緒は横浜の冴島邸に滞在して療養することになったのだが、恭一朗は、みさ緒が恭一朗のことをすっかり忘れて、避ける素振りさえ見せることに苦悩し、みさ緒自身もいつも心に漠然とした不安を抱えたまま鬱々うつうつと毎日を過ごしていた。


 ところが、最近になって冴島家と冴島商会にチャレンジするような不穏ふおんな出来事が次々に起こり、また、みさ緒も失われていた記憶がよみがえる兆候が見えて…。

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