6 甘イズム先生

 甘イズム先生は、パーカーとマスクで顔を隠して、へたれこんだ僕を見下ろしている。

「君、その顔?」

 

 人前に顔をさらしたのって、何年ぶりだろう?

「いや! これは! その、すみません、お見苦しいものみせちゃって」



「お見苦しい? 君は自分の顔をそんな風に思いっているの?」


「思っているというか、現実っていうか、僕は! 失礼しまっす」

 立ち上がって、犬にでも追われているようにその場から逃れた。

 見られた、この顔を。自分でももう何年も見たことないこの顔を。


 しかも甘イズム先生に_____


 なんか、驚いてたな。

 どうしよう。脇役のパロディーでこの顔を描かれでもしたら。

 たとえば、甘噛みゾンビにでてくる、一ゾンビ役で。


 もう金輪際永久に、この暖簾髪に封印だな。今度はジェルでがっちり固めちゃえ。


 スマホが鳴った。

 じゅんな関連の情報だ。

 慌ててポケットから取り出して見ると、WANTED

 僕の逃げ去る後ろ姿が公開されている。


 「この人、じゅんなにそっくりです」










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