7.5・魔女は汗をかかない

 あんなに慕っていたお姉さんたちも三賢者の皆さんも斜陽の魔女に勝てなかったんです。

 私は永遠の心の支えが砕け散ったみたいに思えて、何もできずに部屋に引き篭もりたい気持ちでいっぱいでした。でも先輩たちはそれを許さずに、私を訓練するって言うんです。

 

 それで私は、ああやっと魔法が学べるんだって思ったんですよ。そう思ってたらなんと先輩は私に、身体を鍛えて体力をつけろと言って筋トレを強制してきたんです。

 

 おかしいですよね、魔法使いが筋トレしてるんですよ。飛翔魔法も、魔導障壁も、身体強化でもなく、十キロメートルのマラソンにプランク、背筋、ブラジル体操をしてまた最後に三キロメートル走るんです。最初のマラソンの五分の一くらいで私はもう無理になって、ずっと泣いてました。

 

 最後は先輩たちと一緒に入念にストレッチをして、そうして大邸に戻ってお風呂に入って、夕ごはんをみんなで食べるんです。……生き残れた人だけなんですけども……。

 

 でも先輩たちは私と一緒に練習に付き添ってくれました。すぐ泣いて諦める私の機嫌をなんとか立て直して、走れるように、あともうすぐ、あとすこしって。

 最初の時は筋トレをやる意味が全然わかんなくて、これのどこが魔女の修行なんですかって先輩たちに聞いたんです。

 

 そしたら先輩が「あなたが最後の魔女になっても生きていられるために」って言ったんです。

 その時の先輩の、見てるだけで泣きたくなるほどの悲しい笑みが、今でも忘れられませんでした。

 忘れられるわけがなかったです……。

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