2.5・割れて砕けた家族

 十六年前のことだ。病気で妻を失った。


 金があれば治せる病気だったが、この不景気な時代、軍人、特に戦車兵の給料なんてたかが知れてる。


 私は最低限の緩和治療しかしてやれなかった。

 それなのに最後の最期まで、妻は気丈に振る舞っていた。

 芯の強い、最高の人だった。


 あの子は母親を知らない。生まれたばかりの頃のことだったから。

 私は毎日のように妻を思い出す。もっと何かできたんじゃないか? そう思わずにはいられなかった。


 園が魔女の拠点だと知った時、私は思わず小さい笑いを上げてしまった。

 遂に見つけたぞ、そんな気持ちで。


 あの子は生きている。無根拠だが、あそこにいると感じた。


 ただの願望が見せる幻想かもしれない。それでもとにかく生きていてほしい。


 なんでもいい。自分が何か犠牲になることであの子が戻ってくるなら、どんな代償も厭わない。


 だから助けてほしい。


 この割れて砕けた家族を。

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