1.5・最初の兆候

  鉄鎚騎士団の募集が始まった時、私は誰よりも早くに応募した。ニュクストルの兵士になって、私は貪るように魔女の文献を読み漁った。


 園 園 園 その その その その!


 頭にはもうそれしかなかった。

 娘は、レナは園にいる。全くの無根拠だったが、そう確信していた。私はもはや狂信者としか言えないような状態になっていた。


 どうやら園がある場所は魔法で秘匿されており、人間だけでは発見できないという。


 頭の中は園に行くことでいっぱいだった。

 夜寝ると、園の攻略作戦が開始され、俺は戦車と共に園へと降り立ち、魔女を撃ち倒しながら最奥部へ進み、そこで監禁されている娘を助け出す。


 そんな夢を毎日のように見るようになった。

 居ても立っても居られなくなり、私はニュクストル様と運良く話せる機会があったので拉致救出作戦はいつか?と聞いた。

 そして絶望した


 煙に巻かれたのだ。

 あれほど普段から魔女と戦うことを奨励している奴が、救出の計画すらもまだ建てていないというのだ。


 その時、俺の中で何かが壊れた。


 ニュクストルへの信仰か、園へ侵攻する意思か、とにかく脆くて複雑な感情の何かが、ばきりと折れて、それ以来私はずっと曲がったままになってしまった。


 いや、壊れたのは「信仰」だ。

 ニュクストルは園から来たのだ。それなのにどうして園がある場所を教えてくれないのか。なぜ今すぐにでもやるべき拠点への大規模侵攻を行なわないのか。


 理性の刃が、信仰という縛鎖を鋭く断ち切ってしまった。疑問が、浮いた澱のように私の心を濁らせた。

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