第186話 1人目
長い休憩と簡単な傷の治療、それらによってアトリアとスピカは、なんとか普通に歩ける程度には回復した。
「くふくふ……、アトリアさんも含め他の同級生の皆さんもとても優秀そうだことで。スピカはこれからがんばらないといけないよ? セントラルの子たちと並び立つのは並大抵のことではないからね?」
単なる魔法使いの免許を取るだけなら、セントラルを卒業する以外にいくらでも手段は存在する。ただ、世間での評価という意味で、「セントラル魔法科学研究院卒業」の価値はあまりに大きいのだ。
「あのさ、急な話であれなんだけど――、スピカちゃんとお師匠様に私から提案があるんだ」
軽く手を挙げて話を始めたのはカレン。ここに集まった者たちはこれから始まる話の見当が付かずに首を捻っている。
「ここにいるスガがさ、
スガワラはここに集まってくるほんの少し前にカレンからこの話をされていた。ギルド所属には年齢制限がり、それは最低でも18。すなわち今のスピカはぎりぎりその年齢に達している。
魔法使い免許の有無によって受けられる依頼の幅は大きく変わってくる。――とはいえ、無免許であっても所属ができないわけではない。
これにはカレンの思惑があった。彼女がシャネイラから与えられたスピカ護衛の任。これを遂行するにあたり、スピカをより身近に――、且つ安全なところに置いておきたいのだ。
スガワラにとっても「ギルド設立」といえど、現状そこに所属してくれる人はまったく決まっていない。多少なりとも面識があり、信頼できる人が仲間に加わってくれるのは彼としても非常にありがたかった。
「おやおや、これはこれは……。悪い話じゃないと思うよ? ギルドでお金を稼ぎつつ、名声も積みながら免許取得を目指す。そんな『魔法使い見習い』は決して珍しくないからねえ? 自立した魔法使いを目指すならなおさら、ね?」
師であるルーナが同意するならスピカに断る理由はなかった。今後のことはゆっくり考えるとしても、ルーナになにもかも世話になりっぱなしではいけないと彼女も内心思っていたのだ。
「せっ……、せっかくならセンセもどうですか!?」
勢いなのかなんなのか、ギルドマスター(予定)のスガワラを差し置いてスピカはとんでもない提案をする。ルーナ・ユピトールにも同じくギルド所属をもちかけているのだ。
「くふくふ……、私は遠慮しておくよ? 私と『ローゼンバーグ卿』が名を連ねようものなら目立ち過ぎるからねえ。かえって迷惑かもしれない」
ルーナは、スガワラのギルドにラナンキュラスが所属するものと思っているようだ。当のスガワラはそこについてまだきちんと相談できていないわけだが……。
突然湧いた「ギルド所属」の話によって、セントラルの学生たちは先ほど審判を務めていた2人の魔法使いが何者なのかを理解する。
シャウラ、ゼフィラ、サイサリー、アルヘナはわかりやすい直立の姿勢となって挨拶をし、礼儀知らずな口調で話しかけるベラトリクスは同級生たちからボコボコにされるのだった。
その様子を見て笑顔を浮かべるスピカ。ベラトリクスへの攻撃が落ち着いたところでこう口にする。
「あたしは――、これからもずっと皆さんの友達でいたいです! どうか、よろしくお願いします!」
彼女の言葉に同級生たちは、晴れた笑顔で返すのだった。
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