終章 閃く星

第177話 集結

 スピカとアトリアが決闘の約束を交わしてから5日後、知恵の結晶が所有する魔法闘技の練習場には集まっていた。


 まずは今日の主役となるスピカとアトリア、そして2人の戦いの審判役を買って出てくれたラナンキュラスとルーナ。話の成り行きから付き添いでやって来たスガワラ。

 話を聞きつけてやってきたカレン、舞台を準備してくれたアレンビーとその友達のパララ――、そしてなぜか彼女にくっついてきたマルトー。


 2人の戦いを見守り、見届けるためにやってきたセントラルの同級生、シャウラにゼフィラ、ベラトリクスにサイサリー、そしてアルヘナ。


 そしてこの場所の責任者にあたるラグナ・ナイトレイ。



 決して皆が共通した組織の人間ではないのだが、傍から見ると恐るべき戦力ともいえる面々がここに集結したのだった。


 スピカとおおよそ二十日ぶりに顔を合わせた・同級生たちは彼女を囲んで話しかけるのだが――。


「――アトリアから話は聞いてるわ。悪いけど今日は全員、アトリアこっちの味方だから。潔く負けて全部話してちょうだい?」


「スピカスピカー! 今からでも退学とか取り消せないのかよー? もっと一緒に勉強したり、なんならまた一緒のベッドで寝たかったんだぜー?」


 冷たい雰囲気を出しつつも、ただただことの真相を知りたいと願うシャウラ。彼女はスピカを競い合うライバルと認め、共に高め合う関係でいたいと思っていた。


 いろいろ勘違いを招きそうな言い方をするゼフィラ。彼女の言葉に一瞬、同級生たちは目を白黒させる。後からシャウラが補足するように「この子は人が寝てるところに潜り込んでくるのよ?」と付け足す。


 納得をしたようで、逆にシャウラの発言が意味深に聞こえてくるのだが、今はどうやらそれを追求する場ではないようだ。



「退学なんてオレは認めないからな! 今回はアトリアに譲るが、オレだってお前に一発叩き込んでやりたい気分なんだぜ?」


「言い方は荒っぽいけど、の気持ちは僕だって理解できる。君のことを心から『仲間』と思っている。だから――、納得のいく説明がほしいな?」


 サイサリーの「ニワトリクス」に合わせて、周りの女性陣はうんうんと頷く。


「そうね。私もサイサリーとニワトリクスと同じ気持ちだわ」

「口は悪いけど、ニワトリクスだってスピカを仲間と思ってるんだぜ?」



「お前ら……、マジで喧嘩売ってのか?」



 駆け付けた仲間たちのやりとりを見て微笑みを浮かべるスピカ。彼女も心の底から彼ら彼女たちのことが好きなのだ。



「スピカ・コン・トレイル、君にもしセントラルへ戻る意思があるのなら、僕の家族……、ネロス家が力になれるかもしれない。だから――」


「アルヘナさん、あたしはきちんと自分で考えて結論を出しました。だから、あとは――、皆さんに納得してもらうだけでいいんです」


 笑顔で答えるスピカに、アルヘナはただ俯くだけだった。



 ここは練習場とはいえ、公式の魔法闘技場と同じ広さを備えている。本来の「魔法闘技」は4名の審判を置いて競い合う。北と南の位置にラナンキュラスとルーナが立ち、アトリアとスピカの立つ西と東には急遽、アレンビーとパララが立つことになった。


 ルールはまさになんでもあり。扱う魔法のレベルに関しても制限がなく、アトリアの戦い方に配慮して、木剣の一撃すら魔法攻撃と同列に扱うものとした。


 これは周りを固める審判たちがまさに「究極の布陣」ゆえにできるルールといえる。



 セントラルの学生たちは一か所にまとまってアトリア側の位置に陣取った。一方、スピカ側には、スガワラとカレン……、少し距離を置いてマルトーが座っている。ラグナは全体を見渡せる離れた位置で、ひとり観戦するつもりのようだ。


 開始の初期位置に立ち、離れた距離からお互いの視線を交差させるスピカとアトリア。スピカはセントラルを抜けたためルーナが準備した専用のスティックを構え、アトリアはいつも通り木剣を構え、その切っ先をスピカへと向ける。


 ラナンキュラスとルーナは互いに「機」を捉え、公式ルールに乗っ取り、魔法の光を闘技場中央へと放った。

 その2つがぶつかり、より強力な光を放った瞬間――、2人の魔法使いの戦いは始まりを告げるのだった。

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