第146話 ギルドマスター
ラグナ・ナイトレイはこちらの世界に転移してかれこれ20年近くなる。彼自身、
道具屋の手伝いをしながら生計を立てていたラグナ。彼はやがて、少しずつだが店の経営に手を貸すようになっていく。
店が急成長を遂げたことにより、ラグナはそこを管理・運営している世界最大の貿易商と呼ばれる、「ナイトレイ家」の目に留まる。
新たな――、より責任の大きい仕事を任されるようになっていったが、そこでも確実に結果を残していった。
ナイトレイ家の人間から信用を勝ち得た彼は、同時に一族の三女から大層気に入られていた。
こうしてラグナは、自身の商才と努力――、それに運を味方に付けてナイトレイ家の仲間入りをする。彼は強力な後ろ盾を得たことにより、これまでよりずっと踏み込んだビジネスに挑戦していく。
それが、魔法ギルドの運営だった。
「――スガワラさんのことは前々から噂で聞き及んでいました。いつかアポイントをとってお会いしたいと思っていたのですが、偶然にもアレンビーがあなたの知り合いというではありませんか!」
ラグナは、ビジネスにおいて「情報」を非常に大事にしている。国の流行りから町の噂レベルまで、常にアンテナを張り巡らせているようだ。
元々はラナンキュラスの存在ゆえに意識を向けていた酒場。しかし、ある日からそこに現れた提案営業で知名度を上げる男に興味が向いていた。理由はその仕事内容もあるが、単純に「スガワラ」の名前が気になったのが始まりだ。
「実際にこうしてお会いしたのはスガワラさん……、あなたが初めてです。ですが、この世界には『転移者』とでも呼びましょうか――、私たちと同じような別世界からやってきた人間が幾人かいるように思えます」
ラグナの見解では、今現在に限った話ではなく、過去のさまざまな記録を見ても「転移者」らしき人間の存在がいくつか確認できるようである。
「――これはあくまで私個人の考えですが……、私たちが元いた世界とこちら側を行き来するなにかしらの法則があるのでしょう」
スガワラは彼の話を興味深く聞いていた。実際、スガワラ自身も元々住んでいた世界と今住んでいる世界の関連性について何度も考えを巡らせていたからだ。
「――と、ここまで『転移者』としてのお話をしましたが、実はあなたとお会いしたかった理由はそれだけではありません。いや……、むしろ今からお話する内容の方が本題と言えるでしょう」
ラグナの言葉を聞いてスガワラは少し驚いていた。彼はラグナが自分と同じ「転移者」なのかを確かめる目的でここに来ている。そして、ラグナが自分をここに招いた理由も当然それだと思っていたからだ。
「スガワラさん、単刀直入に申し上げます。私と同じように――、組織の長に、『ギルドマスター』になってみませんか?」
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