第135話 ニワトリ
「……この鳥頭。髪形が鶏冠みたいとは思っていたけど、本当に頭の中までニワトリとは思わなかった」
「うっせぇ! あんな軌道のエアロカッターなんてよめるかよ!」
スピカと1対1で対峙するため、ウェズンの足止めをベラトリクスに任せたアトリア。しかし、結果としてウェズンはベラトリクスの動きを見つつ、スピカとアトリアの動きもきっちり把握したうえで隙を狙ってきたのだ。
もっとも、軌道を大きく変えるエアロカッターをベラトリクスに読み切れ、というのも無理があるのかもしれないが……。
「……まったく、もう。あとは頼んだわ、『ニワトリクス』」
「誰がニワトリクスだよ! 変なあだ名付けんな!」
ゼフィラのフレイムカーテンが消えたとき、彼女の予想通り、炎に飛び込んだが、触れてはいないウェズンの姿があった。
強力な結界の発動と、エアロカッターの4連発。さすがの彼女も呼吸を少し乱しているようだが、距離は十分にとっていた。そこにスピカが駆け寄って来る。
「ごめんなさいね、スピカさん? 1対1の戦いのつもりだったと思うのだけど、これは『チーム戦』だから」
「いっ、いいえ! ウェズンさんの魔法がなければあたしがやられていましたから」
ウェズンはスピカの背中に隠れるようにして呼吸を整えている。消耗はかなり激しいようだが、彼女はスピカを頼るに値すると認めているようだ。
アトリアに散々罵倒されたベラトリクスは、ゆっくりと歩いてシャウラたち3人と合流した。この状況で自分を「敵」とみなして襲ってくることはないと思ったようだ。
「どうするよ? ウェズンはけっこう消耗してる気配だけどよぉ、スピカが思ったよりずっと手強いぜ?」
「6対2の構図から一気に4対2か……。とはいえ、ベラトリクスの言う通りだ。ウェズンさんもさすがに余裕がなくなっている」
「サイサリーもベラトリクスもペアを失ってるからさ? ここはフェアにオレが斬り込み役をやるよ。シャウラが残ってくれれば勝ちはあるからね」
「ゼフィラがいいなら止めないわよ。実際、近距離で相手を乱すのは、あなたの得意技だもんね」
「サイサリーは守りに徹しろよ? オレもそうだが、ペアがいねぇから当たったら負けになる。けど、オレは他人を守る戦い方が上手くねぇ」
「スピカとウェズンさんの魔法……、1人で受けきれってことかい?」
「いや、そこまで言っ――」
「やってやるさ。君らは攻撃に全振りしなよ」
サイサリーは強がりなのか、いつも以上に余裕のある表情をつくってみせた。
「ふん。私らがあの2人倒した後なら、背中を狙っても文句言わないから」
「頼りにしてるぜ、サイサリー?」
4人の魔法使いは方針を固め、正面の2人に決意の視線を送る。スピカとウェズンはそれを自信に溢れた表情で受け止めるのだった。
バトルロイヤル形式の演習はここに今、最終局面を迎えようとしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます