第19章 バトルロイヤル

第123話 作戦会議?

「スピカさん、医務室でお休みされてたみたいだけどお体は大丈夫なのかしら?」


「ご心配おかけして申し訳ありません! ばっちりきっちり回復してますので安心してください!」


 休日、あたしはウェズンさんに誘われて、城下町の小さなカフェに来ていました。店内にはさまざまな魔導書が並んでいたり、マジックアイテムが置かれたりしています。

 ウェズンさんの話だと魔導喫茶マジックカフェ、通称「マジカフェ」と呼ばれているそうです。


 店長さんがセントラルの卒業生のようでして、学生証を提示すると割引をしてくれるそうです。ウェズンさんはお休みの日よくここを訪れていると話してくれました。


 彼女は同級生ですが、寮長を務められていることとその魔法の技量から皆さんに一目置かれています。私も1対1で話すのに少し緊張してしまいます。



「今度の演習、スピカさんとペアになって私、本当に嬉しかったの。あなたとが一番楽しそうと思っていたから」


 ウェズンさんは優雅な所作で紅茶を飲みながらそう言いました。いつも笑顔の人ですが、今の笑顔は普段より柔らかな感じがします。


「あたしもウェズンさんと一緒なんて光栄です! 足を引っ張らないようがんばりますね!」


 あたしたちが協力して戦うバトルロイヤル形式の演習、ウェズンさんはまず簡単なルールの説明をしてくれました。どうやら2回生の時に同じ形式の授業があったようです。

 彼女は、「細かいところは授業毎に変わるかもしれないけど……」と前置きしたうえで、詳しい話を始めました。



 まず2人1組のペアは、特殊なマジックアイテムのワッペンを身に付けます。これは2人が一定の距離以上離れた場合、もしくは身に付けた者が魔法に当たった場合に色が変わるようです。


 ペア2人のワッペンの色が変わったらその時点で退場になります。つまり、お互いに離れてしまうとそれだけで終わってしまいます。

 他の魔法使いに攻撃を当てると5点加点され、時間内にその点数を競う戦いだそうです。


 ただし、点数をたくさん稼いでもペア双方のワッペンの色が変わってしまうと、所持点数が半分になってしまうそうです。

 危険を冒してでも加点を求めて戦っていくか、勝ち取った点を守り抜くかの駆け引きが重要になりそうです!


 ルール上、術者を直接攻撃するため、以前ウェズンさんの経験した時は使用魔法を下級に限定していたようです。


「――得点は最終的に自己申告なんだけど、不正がないよう上級生がいたるところで監視してるの。授業1コマ分の時間をしっかり使ってやったから……、けっこう長く感じるの」


 ウェズンさんが重要視しているのは、「状況把握能力」でした。


「どのペア同士が戦っているのか、必ずしも1対1とは限らないし、場合によっては相手が増えたり減ったりもするの。常に自分たちが置かれている状況をきっちりと把握するのがとても大事になるわ」


 経験者からお話を聞けたおかげで戦いのイメージが湧いてきました。なんだかむずかしくもありますが、とても楽しそうです!


「『ペア』ですから連携がとっても大事になりそうですね! あたしたちはどうしましょうか!?」


 ウェズンさんは頬に人差し指を当てて、虚空を見上げています。そして、数秒してから答えてくれました。


「私たちに限ったことではないけれど……、急造のペアで息をぴったり合わせるのはむずかしいと思うの。だから、まず大まかな方向性を決めておきましょう?」


「方向性……、ですか?」


「そう、例えば――、相手をどんどん倒して点を稼いでいくとか、逆に仕掛けられるまでは様子見をするとか、ペア同士の『やり方』を統一させるのが重要かなと思うの?」


「やり方を統一させる、ですか……。うむむむ、どうやるのがいいのでしょう?」


「うふふ……、スピカさんの好きなやり方でいきましょう? 私は一応『経験者』だから、それなりに合わせられると思うの」


 ウェズンさんの話し方はとても落ち着いていますが、奥底に圧倒的な自信を窺えます。さすがの一言です。あたしの好きなやり方――、うむむ……。

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