第114話 アルヘナの周囲
「アルヘナさんは――、まだ、いらしていないみたいですね?」
あたしは廊下で研究員志望の同級生から声をかけられて校舎の端、非常階段のところまでやって来ました。そこには、同じく研究員志望と思われる学生が3人ほど待っていたのですが、当のアルヘナさんはいませんでした。
「スピカさんさぁ、ひょっとして『やどりき』に入りたいの?」
階段に腰掛けている男の子が上目遣いをして尋ねてきました。「やどりき」はたしかアルヘナさんの家系「ネロス家」の方が代々幹部に付いていると聞いています。とても有名で、ギルドとしての歴史もあり、セントラルからの進路でも非常に競争率が高いと聞いています。
「あたしは……、まだそこまで考えていません! もちろん、目指したいところではありますけど」
あたしの返事を聞いて、話しかけてきた男の子はびっくりするほどの大きなため息をつきました。
「最近アルヘナさんとふたりで会ってるって噂を聞いたんだけど、お前の目的は一体なんなわけ?」
よくよく見ると、ここにいる人はあたしを連れてきた人含めて皆さん、機嫌が悪そうです。察しの悪いあたしでもなんとなくわかりました。あたしとアルヘナさんが仲良くしてると聞いて、気になっているのですね!
「あたしはアルヘナさんの研究のお手伝いをしています! 逆にあたしも魔法の使い方の相談に乗ってもらっています! あたしの魔法はちょっと特殊のようで――」
「――ンなのどうでもいいわけよ? 身の丈弁えろって話だ!」
みんな揃って、あたしが思っているよりずっと機嫌が良くないようです。アルヘナさんはきっと研究員の皆さんからとても人気なんですね!
「『ネロス家』の人とお近付になりたい気持ちはわかるわよ、私だってそうだし? けど、やっぱり立場っていうか、身分っていうか――、あると思うのよね?」
「どうやってアルヘナさんに近付いたか知らないけどさ。はっきり言って、お前みたいな奴がいるとこっちからしたら邪魔なんだわ」
「アルヘナ・ネロスって女子にもまったく愛想の欠片もなかったけどさ? 案外こいつみたいなのが好みだったわけ?」
なんだか、あちこちから同時にいろいろと言われてよくわかりません。ただ、この人たちの言葉を聞いてあたしは思いました。きっと、ここにいる4人はアルヘナさんの友達ではないのだと――。
「ねぇねぇ、スピカさん? 噂で聞いたんだけど、あなたってひょっとして幽霊なの?」
「――はっ?」
幽霊? 一体なんの話をしているのでしょうか? 4人の学生はみんなして小声で笑っていますが、あたしには意味がよくわかりません。
「だってさぁ、あなたが出身の『ヴィルゴ村』って10年くらい前に無くなってる村でしょ!? 魔技師の子が『無くなった村出身なんて不思議』って言ってるのが聞こえたのよ?」
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