第113話 口は災いの元

 次の演習までは約1週間あります。この間に他の講義関係の授業も終わっていく予定になっています。


「お休みの日に時間あるかしら? せっかくのペアですからしっかり連携をとれるよう話し合いをしましょう?」


 ウェズンさんからは笑顔でこう言われました。せっかくの機会なので、「相棒」と認められるくらいにがんばろうと思います。


 それよりも心配なのがアトリアとベラトリクスのペアです。ベラトリクスが余計なことを言わなければ、アトリアの機嫌もそこまで悪くならないのでしょうが、彼にそれは期待できないようです。



「よう、アトリア! オレ様と一緒なら百人力だぜ!」


「……邪魔だけはしないで、私からは以上」


「お前は――、顔はかわいいくせにホント、口が悪い女だな?」


「……その口、凍らせてあげようか? まったくなんで私だけ罰ゲームみたいになってるんだろ?」



 ふたりとも、とても優秀な魔法使いのはずなのですが、ペアになると相乗効果どころかお互いに潰し合ってしまいそうです。



「アトリアついてないなー? 『ベラトリクス以外なら誰でも』くらいに思ってただろ? 悪いけど、この組み合わせはおもしろ過ぎて笑えるぜ?」



 近くにやってきたのはゼフィラとシャウラさんです。どうやらおふたりも今回ペアになったようでした。


「スピカはウェズンさんとだもんなー? みんなビビッて寄って来ないかもよ? あの人、魔法の才能は本気で狂ってるレベルだからさ」


「まったくよ。スピカ・コン・トレイルとウェズンさんペアが一番の脅威ね? 成績だけならアトリアのペアも十分怖いんだけど……、あの調子なら勝手に自壊しそうよね?」


 あたしたちの横では、話せば話すほど嫌われる要素を上塗りしていくベラトリクスと、もはや視線すら合わせようとしないアトリアの姿がありました。


「この女、いい加減にしねぇとぶちのめすぞ!?」

「……やってみなさい? 素人の喧嘩に負けるほど私の剣は甘くないわ」



『このふたりは……、ダメかもです』




 今日の授業は魔力測定の1コマで終わりました。テンペストの詠唱に時間をかけてしまいましたが、魔力を風の一点に集中できたと思います。


 アトリアとベラトリクスのいがみ合いがなかなか終わらないので、あたしは先に講義室を出ました。演習の戦術を練るために残っている人もたくさんいましたが、ウェズンさんが先にどこかへ行ってしまったので、あたしたちの打ち合わせは後日になります。


 教室の外からアトリアとベラトリクスの様子を再度確認しましたが、相変わらずの様子でしたので、あたしは先に寮のお部屋に戻ることにしました。



「――スピカ・コン・トレイルさん、ちょっといいかしら?」



 ひとり廊下を歩いていると、突然後ろから声をかけられました。振り返ってみると、以前に食堂で声をかけてきた研究員志望の生徒さんです。


「アルヘナさんが呼んでるんだけど、今ちょっと時間ある?」

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