第112話 運命のペア
バトルロイヤル、勝ち残り形式の乱戦です! 2人1組と聞いてあたしが真っ先に思い浮かべたのはやっぱりアトリアです。他にも組んでみたい人はたくさんいますが、もし相方を選べるのならアトリアと組みたいです!
「ペアの組み方はランダムに――、学籍番号の偶数と奇数で1人ずつクジ引きをしてもらい、同じ番号を引き当てた者同士でペアとなってもらう。学籍の偶数同士、奇数同士はペアになれないが、急造のチームで任務にあたる際の練習だと思って我慢してもらいたい」
学籍番号で2つに分けられて、そこからは神頼みのようです! あたしが横にいるアトリアの方に視線をやると偶然、彼女の視線と交差しました。
「……私とスピカの番号なら偶数奇数で分かれるから、ペアになる可能性はあるね? もっとも、かなりの低確率だけど」
「お祈りするしかありませんね! 全身全霊で祈ります! うむむむむむ……」
あたしが手を組んで祈りを捧げていると、アトリアは軽く首を捻っていました。
先生に誘導されて、講義室の左右の通路に学籍番号の偶数・奇数分かれて並びました。先頭の人から順番にクジを引いていきます。
引き当てた番号を見ながら先生がそれを黒板にメモしていきます。あたしは列の真ん中あたりに並んでいますが、なかなかペアは決まっていきません。
あたしがくじを引く前にアトリアが引いて、その番号が記載されました。隣りの枠は空白となっています。つまり、まだペアを組める可能性は残されています。むしろ、何人か引き終わったあとなので、最初よりも確率は上がっているはずです!
そして――、ついにあたしの番が回ってきました。クジ引きの箱に手を突っ込む前に今一度祈りを捧げます。いざ、運命の引きです!
「――あっ!?」
あたしの引いた番号には見覚えがありませんでした。つまり、アトリアとは別の番号です。祈り虚しく、運を引き寄せるのは叶わなかったようです。
黒板を見ると、あたしの隣りの枠も空白でした。あたしもアトリアも現時点ではペアが決まっておらず、これからクジ引きをする誰かと一緒になるようです。
「……相当低い確率だろうから。私もほんの少し期待したけど、さすがに無理があったようね」
「はい……。乱戦なのでお互い敵同士になってしまいますが、がんばりましょう」
「……えぇ、競い合う相手である以上、手加減はしないから。スピカも遠慮なく、お互い全力を尽くしましょう?」
そのとき、講義室にちょっとしたどよめきが起こりました。どうやらウェズンさんがクジ引きをして、ペアが決まったようです。
「……スピカ、これって――」
「えっ、えっと…、どうやら、そういうことみたいです」
なんとウェズンさんとペアになったのはあたしでした。頬に人差し指を当てながら黒板を見ているウェズンさんは、あたしを視界に入れると歩み寄って来ます。
「スピカさんと一緒ならとても楽しそうだわ。よろしくお願いするわね?」
「はっ…はい! こちらこそよろしくお願いします!」
ウェズンさんの能力の高さはあたしでも十分理解しています。これ以上ないほど心強い人ですが、足を引っ張らないか緊張してしまいそうです。
あたしがそんなことを考えていると、隣りにいるアトリアから舌打ちが聞こえました。ハッとしてあたしが彼女の顔を見ると、初めて見るほどの恐ろしく不機嫌そうな形相をしたアトリアがそこに立っています。
「……なんで、なんで私があいつとなのよ?」
アトリアの言葉を聞いてその視線の先を追うと、黒板のアトリアの隣りの枠にはこう記されていました。
『ベラトリクス・ヌーエン』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます