第110話 魔力測定
「ライトニングレイッ!!」
ベラトリクスの構えたスティックの先から強烈な雷光が照射されました。案山子に直撃した瞬間に耳をつんざく音が響きます。その様子を見ながらアフォガード先生を中心とした何人かの先生が記録を付けています。
今日は魔力測定の日。呪文の威力はもちろん、詠唱までの時間や狙いも含めて総合的な評価が下されます。名前を呼ばれた生徒は順番に前へ出て、先生方が見守る中、もっとも自信のある魔法を申告し、2度ほど案山子に向かって放ちます。
ベラトリクスは得意とする雷の上級魔法を使っていました。評価はその場ではわかりませんが、彼の表情を見るとそれなりに手応えがあったようです。
「次、アトリア・チャトラーレ!」
続いて名前を呼ばれのはアトリアでした。彼女の名前を聞いて周囲が少しざわつきました。やっぱりアトリアの実力は3回生の中でも注目を集めているようです。
「……コキュートスを使います」
アトリアの口にした「コキュートス」は氷の上級魔法です。案山子から約20m離れた指定の位置に立ち、アトリアは刃物を向けるような独特の構えでスティックを握ります。
先ほどまで少し騒がしくしていた学生たちも急に黙り込み、まるで時が止まったかのように静寂が訪れました。
アトリアは目を瞑り、心の声を放つかのように小さく口を動かしています。次の瞬間、案山子とその周りは凍り付いていました。瞬きを終えると、氷は破裂して、霧散して消えていきました。
一呼吸おいて、アトリアは再びコキュートスを放ちます。氷属性の扱いが苦手なあたしでもわかるほど強力な威力と、それに反しての素早い詠唱でした。
アトリア自身の調子もよかったようで、測定を終えてこちらへ戻ってきた際の表情からそれが窺えます。
「さすがですね、アトリア!」
「……えぇ、調子は悪くなかった」
「次! スピカ・コン・トレイル!」
アトリアがさらになにか言おうとしたところで、あたしの出番が回ってきました。
「あたしはテンペストを使います!」
先生方の前に出て大きな声で宣言をします。あたしの得意とする風の上級魔法「テンペスト」。竜巻を起こす魔法のため、案山子を起点にすると逆に測定できなくなってしまいます。狙いは案山子よりわずか手前。こうした魔法の狙いも評価のポイントになります!
スティックの先を目標に向けて、意識を精霊へ向けて呪文の詠唱を始めます。アルヘナさん曰く、あたしは常時風とは別の魔法の発動準備をしているようです。今は、すべてを風の魔法へ集中させるよう強く意識します。
無意識にしていることを意識的に抑制するのがこれほどむずかしいとは思いませんでした。ですが、ここ数日そればかり練習をしています。風の精霊とのコンタクトに絞って力を注ぎ込みます!
「――テンペストッ!!」
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