第109話 前期の終わり

 アトリアは剣士ギルドのカレンさんと連絡をとるようになって、元気を取り戻したように思います。模擬戦でウェズンさんに負けてからはどことなく気が沈んでいるように感じていたのでホッとしました。


 あたしはアルヘナさんに言われてから、自分が無意識に発動させている「特異魔法」を意識するようになりました。魔力のコントロールをうまくできるようになれば、風の魔法と併用して使いこなせるようになるはずです!


 お休みの日で、アトリアがカレンさんとの修行にお出掛けするとき、あたしはアルヘナさんと特異魔法の修行をしています。彼は理論的な魔法の解析を試みており、魔力をうまく操作する助言をしてくれます。

 あたしは彼の言葉を頭に置きながら、意図的に力を発動できるよう鍛錬を繰り返しています。



 センセに手紙も書きました。きっと、あたしの能力に気付いた上で訓練を施してくれていたと思うのです。なによりセンセ自身があたしと同じ系統の魔法の使い手とわかったので、頼らない手はありません!




 こうして月日は流れていきました。学校生活にも十分に慣れ、毎日がとても充実しています。そして、上半期の締めくくりが近付いてきました。

 魔法使い志望のあたしは、魔法の評価試験を受けます。これを終えたら長期休暇に入る予定になっています!


「……前期の授業の終わりが近付いているなんて、なんだかあっという間だった気がする」


「アトリア! まだ締めの試験が残っていますよ! まだまだ気を抜けません」


 あたしとアトリアは、寝る前にお部屋の共有スペースでお話をしていました。最近はこの時間でも気温が高くなり、あたしもアトリアも薄手の寝巻を着ています。


「……もちろん気を抜くつもりはない――、けど、評価試験はたしか『測定』よね?」


「はい! そう聞いています!」


 セントラルの魔法科学はとても発展していて、魔法の威力を数値化できるのです。皆さんが揃って「案山子かかし」と呼んでいる人のかたちを模したとても頑丈な標的に向かって魔法を撃つことでそれを測ります。


 使う魔法を予め宣告し、その種類に応じて決められた距離から案山子を狙います。その詠唱速度、狙いの正確性、威力をもって総合評価が下されるのです。この測定のすごいところは、攻撃系の魔法はもちろんのこと、弱体や妨害系の魔法もしっかり数値化してることなのです!


「……そういえば、測定とは別になにか演習の授業があるとアフォガード先生が言っていたような――」


「はい! 具体的ではなかったですが、そんな話をされていましたね?」


 あたしとアトリアは先日受けた講義を思い出しながら言葉を交わしました。


「……また、模擬戦でもするつもりかしら?」


「どうなんでしょうね? ですが、どんな授業でも楽しみです!」


「……スピカは、本当に前向きね? 私も少し見習った方がいいように思えてきたわ」

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