第101話 家柄

「ネロス家……?」


 以前にも小耳に挟みましたが、なにやら有名なお家柄のようです。ただ、あたしは聞いたことがなかったので、アトリアとシャウラさんに詳しく聞いてみました。


「……魔法使いの中では特別な家系よ。あの『やどりき』の幹部をずっと務めている一族だから」



 「やどりき」は最古のギルド、と言われるこの国最大規模の魔法ギルドの1つです。伝統と格式を重んじる組織としてとても有名です。


「やどりきは魔法学の研究においてセントラルに引けをとらないレベルだからさ、アルヘナの進路は決まったようなものよね?」


 アルヘナさんはたしか研究員の志望でした。卒業後はやどりきで魔法の研究をするのでしょうか。


「アルヘナ自身がどうかは別として……、やどりきの影響力はセントラル内でも決して小さくないからさ。研究員志望の学生はみんなして媚び売ってんのよ?」


「そんなアルヘナさんがあたしになんの用なんでしょう……?」


「……わからない。けど、覚えがないなら下手に関わらない方がいいと思う」


「私も研究員の学生とは付き合い薄いからさ、あんまり詳しくないけど、アルヘナは相当根暗な感じらしいじゃない?」


「……どうなのかしら? たしかに第一印象は暗かったけど」


「あたしはアルヘナさんともお話してみたいですね! 編入生であまり話せていないのは彼だけなんです!」


 アトリアとシャウラさんはお互いに顔を見合って同時に首を捻りました。


「……アルヘナ本人より取り巻きが面倒そう」

「ああいうのとは関わらないのが吉と思うけど?」


 ふたりに揃って否定されてしまいました。ですが、アルヘナさんがどういった人か知れました。せっかくなので校内で見かけることがあれば、こちらから話しかけてみようと思います!



「そういえば、遠征でアトリアと同じ部屋に泊まったんだけどさ、この子寝起きの髪、爆発してんのよ。私、笑っちゃったんだけどいつもじゃないわよね?」


「……うるさいわね? たまたまよ、いつものわけないじゃない」


「そうですね! 毎日ではありませんが、です!」


 あたしの言葉にシャウラさんは軽く吹き出して、大きな声を上げて笑いました。そして、アトリアはいつになく冷たい目つきであたしを見てきます。


「あーっ、おかしい!! スピカ・コン・トレイル、あなた本当におもしろいわね? ゼフィラがあなたを気に入るのがよくわかったわ!」


「……まったく、笑わせるのはいいけど、私をだしに使わないでよ」


「ごめんなさい、アトリア! そんなつもりはなかったのですが――。けれど、髪がめちゃくちゃに乱れてるアトリアも可愛いですよ!」


「……全然フォローになってない」


 アトリアにはむっとした顔で睨まれましたが、3人での会話はとても楽しかったです。シャウラさんともこれまでよりずっと仲良くなれたような気がします。


 あとはアルヘナさん……、ぜひお話をしてみたいですね!

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