第97話 突然の来客
「……どうしたの、ポラリス?」
自分の名前を呼ばれ、スピカに変わって部屋のドアを開けたアトリア。そこに立っていたのは妙にソワソワしているポラリスだった。
「えっとぉ……、その、アトリアさんを訪ねて来てる方がいらっしゃいまして――」
彼女の話では、アトリア宛ての来客が寮のエントランスに来ているそうだ。本来、ポラリスは寮生ではなく、通いの学生なのであまりここに立ち寄ることはない。偶然、その客人にアトリアの居場所を聞かれ、ここへやって来たというのだ。
「……私宛て? 全然心当たりがないのだけど――」
「いっ…いいから一緒に来てください! 人だかりができて大変なんですぅ!」
冷静さを欠くポラリスに連れられ、部屋を出たアトリア。ついでとばかりに一緒についてくるスピカ。彼女たち3人が寮のエントランスに着くと、ウェズンが人払いをしていた。
「ほらほら、部屋に戻りなさい。一度にこんなにたくさん押し掛けて……、礼儀の弁え方まで教えないといけないのかしら?」
ウェズンのおかげか、大勢いた生徒が各々部屋へと戻っていく。それらとすれ違うようにアトリアたちはエントランスにやってきた。
「……ウェズン寮長。お身体は大丈夫なのですか?」
「あらあらぁ、アトリアさん? 心配かけたかしら、ごめんなさいね? 私、昔からあまり身体が丈夫じゃなくって――」
「……いいえ。その――、元気なお姿を見てホッとしました」
「うふふ、ありがとう。――じゃなくて、アトリアさんにお客様! 奥の来客用の席にかけてもらってるわ」
ここに来てもまだ来客の心当たりがないアトリア。ウェズンに促されるまま、客人の座る席へと歩いていく。
「……なっ――」
アトリアを待っていたのは2人の女性だった。1人は、最近知り合った憧れの女性。そしてもう1人は彼女にとって誰よりも特別な女性だった。
「おー、来た来た。やっほー、チャトラ! スピカちゃんも一緒かい」
「カレンに聞いてまさかと思いましたが――、ずいぶんと久しいですね? アトリア・チャトラーレ。私を覚えていますか?」
そこにいたのは、ブレイヴ・ピラー「金獅子」のカレンと、アトリアがもっとも尊敬する魔法剣士「不死鳥」のシャネイラだった。
「……シ、シャネイラ様。私を、私を覚えて下さっているのですか?」
「フフフ、あの時はまだ幼かったですが、あなたはとても印象深い子でしたから。それに――、私は
シャネイラは、セントラル卒業生の進路として、ブレイヴ・ピラーと関係の深い魔法ギルドを推薦枠として提供している。
また、組織とは無関係に一人の「魔法使い」として、魔法学の研究に協力している人間でもあった。
こうした立場から時々セントラルに出入りをしているシャネイラ。彼女がここに足を運ぶと知ったカレンは、先日の弟子入りの件もあってアトリアに会おうと同行してきた。
そして、「アトリア・チャトラーレ」の名を聞いたシャネイラは、かつて同名の少女と出会った日のことを思い出したのだった。
「アトリア!? 意識が、意識が飛んでますよ!」
突然の出会いにアトリアは一瞬、放心状態となってしまった。彼女の両肩に手をおいて揺するスピカ、首をかくんかくんと人形のように揺らすアトリアの姿がそこにあった。
「あらあらぁ……、アトリアさんもこんなふうになることあるのね?」
「私も……、びっくりですぅ」
滅多にお目にかかれないアトリアの呆けた姿をじっと見つめるウェズンとポラリスだった。
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