第94話 刀と体型
「貴様は……、たしか『牙』のユージ――」
男の1人は、彼の握っている武器と構えから、裏の界隈で名の通った剣の使い手「ユージン・ブレイド」と気付いたようだ。しかし、彼の名前を最後まで口にすることはなかった。
ユージンは一切の躊躇なく、間合いに踏み込んでの逆袈裟斬りで男の1人を切り裂いた。さらに振り上げた刃の向きを変え、残った男へも続けて振り下ろす。
剣を横にしてユージンの刃を受け止めた男、だがその刹那、彼は脇腹を斬られ、膝をついて倒れた。
ユージンの動きに合わせたのは、少し前までベラトリクスへ治癒の魔法をかけていたランギス。
「ランギス様、助かりました。魔法使いの坊ちゃんの方は大丈夫ですか?」
「僕は『ランさん』でいいですよ! はい、とりあえず止血をしましたので、あとは時間をかけてゆっくり治療をしますよ!」
ユージンは小さく頷くと、視線を残った2人の男へ向けた。
「どう見ても剣士の構えではないが、知ったことじゃあない。ランさん、一応聞きますが……、生かしておいた方がいいですか?」
「できれば――、ですかね。ただ、学生さんに手を出すような大人げない連中です。ちょっと痛い目みてもらった方がいいでしょうね!」
「私が斬り込みますんで、援護を頼みます」
「お任せを! ユージンさんほどの腕はありませんけどね」
ユージンが低い構えから一気に距離を詰めようとした時、その彼を追い越すように無数の
狙われた男は剣を持っただけの「魔法使い」であり、当然これには結界で対処する。だが、その隙を逃すユージンではなかった。振り上げた刀は峰を下にして、袈裟斬りを叩き込む。斬れてはいないが、骨の砕ける音と確かな手応えが伝わってくる。
仲間を次々と失った魔法使いの男は、咄嗟に背を向け山へ向かって駆け出そうとする。――が、彼の行く手には炎の壁、「フレイムカーテン」が立ちはだかっていた。
背を向けた男の後頭部を、ランギスは剣の刃を避けたところで思い切り強打する。鈍い音と共に男は魂が抜けたようにその場で倒れた。
「――いい援護だった。さすが名門セントラルの学生さんだ」
「本当ですよ! 僕はほら、この体型ですからね! 逃げ出されたら困るんですよ」
彼ら2人を援護したのはサイサリーとゼフィラ。元は劣勢に追い込まれていたが、ここで一矢報いることができたのだ。
「えっーと、僕は怪我した子の治癒の続きをしますので……、申し訳ないですが、学生さんのどなたか、町の警備隊をここへ呼んで来てくれないですか?」
ランギスの問い掛けに顔を見合わせたスピカたち、そしてサイサリーが小さく挙手をして返事をした。
「町の大人たちが来るまで残りの皆さんはもうしばらくここへいてくださいね。ユージンさんは念のため、倒れてる連中を見張っててください。起き上がることはないと思いますけどね?」
ランギスの話を聞きながら、ユージンは倒れた男たちの元に落ちている鞄を拾ってスピカのところへ持ってきた。
「これはお嬢ちゃんのだろう? 大事なものが入ってるなら簡単に手放すな」
「――はい! ありがとうございました!」
スピカの返事を聞いて、元々強面のユージンだが、幾分かその表情を緩めるのだった。
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