第87話 お花摘み
――遠征2日目の朝。
「アフォガード先生!
セントラルの教員10人ほどが分担して遠征へ出掛けた生徒たちに連絡を取っていた。ほとんどの生徒が即座に反応し、マジックアイテム「魔法の写し紙」を用いてメッセージを返してきている。
教員たちがもっとも心配した「魔導書狩り」の被害にあっている生徒もいないようだった。ただ、それでもアフォガードは支援を依頼している近隣のギルドに連絡を取っていた。交通の主要な拠点に護衛の派遣を要請し、盗賊の動きがないか目を光らせてもらっていた。
「アフォガード先生、さすがに過敏に反応し過ぎでは? これだけ人を動かせば、後々それなりの額の請求が予想されますが……」
「エクレール? セントラルがなんのために『王立』であると思っている? 必要とあればお金に糸目はつけなくてよい」
「生徒の身を第一に考えるのは正しいと思います。ですが、今回の件は単なる生徒の勘違いではないのでしょうか?」
「いや……、なにか作為的なものを感じる。我々、教員の目が届かないところにわざわざ魔導書を持ち出すような噂が流れるなど、あまりに不自然だ」
アフォガードの返事にエクレールは腕組みをし、眉をひそめていた。
「スピカ・コン・トレイルのパーティだけ返答がありません」
教員の1人がアフォガードにそう報告した。どうやら彼女たちのパーティを除いて、他の学生たちとは連絡と安否確認が済んでいるようだ。
「スピカさんのパーティって――、他の子たちとはずいぶん違う方向へ遠征に出てたわよね?」
ティラミスは机に広げられた王国の地図を見ながら呟いた。学生たちの目的地や主要拠点に色付けがされている。
「スピカ・コン・トレイルのパーティが向かった高山はたしか、麓に小さな町があったはずだ。そこに護衛を派遣できないか、各協力ギルドに問い合わせをしなさい。至急だ」
◆◆◆
山中に広がる草原であたしたちは昼食をとりました。当初は持参した携帯食で済ませる予定でしたが、宿屋さんがパンと野菜やお魚のフライを持たせてくれました。町長さんとは別で、まもの討伐のお礼だそうです!
ここまで登って来るのにずいぶんと体力を使いました。綺麗な景色と身体の疲労も相まってみんな食が進みます。宿屋さんからはたくさんお料理をもらっていたのですが、あっという間になくなりました。
「食った食ったぁ! あとは素材になる花を摘み取ったら終わりか? やっぱり楽勝だな!」
「ベラトリクス、君がそれを言うかい?」
「お腹もいっぱいなりましたし、早速採取にかかりましょう!」
草原を見渡すだけでも該当の植物は目に付きます。紫色の小さなお花ですが、花弁のところに毒を含んでいます。それを集めていきます。直接肌に触れても、毒になるのできちんと手袋をして、液体が漏れない袋に詰めていきます。
「根っこを抜かなかったらまた花を咲かすみたいだぜ? 今後のためにもちゃんと残しとかないとな」
みんなで手袋をはめて準備万端です! いざ、お花の採取に取り掛かります!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます