第85話 2日目の朝

「ぎゃーーーっ!!」



 翌朝、いつも通り朝早起きしたあたしはびっくりしました!


 ベッドの中が妙に暖かい――というより、暑いと思って目を覚ますと、なんとあたしのベッドにゼフィラが寝ています!

 しかも、服を脱いで下着姿になっています! あたしは驚きのあまり、早朝にも関わらず、大きな声で叫んでしまいました。



「んにゃ? ――ぉはよう、スピカ?」


「ゼっ! ゼゼゼ、ゼフィラっ! どうしてここで寝てるんですか!?」



 ゼフィラは両手でパチンと頬を叩くと、顔が途端に覚醒しました。下着姿のままベッドから飛び起きて、大きく伸びをしたあとに腰を右に左に捻っています。


「あー、スピカ、驚かせて悪い悪い。夜中になんだか寒くなってさ? スピカと一緒のがあったかいと思ったわけよ?」


「気付かないあたしもあたしですが、さすがにびっくりです」


「一緒のベッドに潜っただけだから安心しろって? なんにもしてないよ!」


 駅馬車の馭者さんの時といい、ゼフィラの行動は恥じらいがなさ過ぎて驚かされます。

 今も下着のままで、身体をほぐすように柔軟体操をしています。服の上からではわかりませんでしたが、こうして見ると鍛えられてよく引き締まった体のラインはとても美しいものでした。



 そのとき、部屋にノックの音が響きました。



「なにか叫び声が聞こえたけど……、スピカ、ゼフィラ、無事なのか?」


 扉の向こうからはサイサリーの声が聞こえます。きっとあたしの叫び声に起こされたんだと思います。


「ああ、サイサリー。無事よ無事無事。今開けるからちょっと待ってろよ?」


「ゼフィラ! 服っ!」


「おっと? いけないいけない。サイサリー悪い! なんにもないからもうちょっと寝てていいぞ!」


「……僕たち以外にもお客さんがいるんだぞ? あんまりうるさくするなよ?」


 サイサリーはドア越しにそう言いました。少しの間の後、隣りの部屋の扉が閉まる音がしました。あたしは朝の修行があるのでこのまま起きているつもりですが、朝食の時間にはまだずいぶんと余裕があります。




 朝食は焼きたてのパンがたくさん出ました! 燻製のお肉もあったの挟んでいただきます。高山で採れる野草を使ったサラダや果物もあり、みずみずしくてとてもおいしかったです。


 この宿には、植物の採取を終えた後もう一泊する予定です。ですが、念のため、貴重品関係はすべて持ち歩くことにしました。あたしは魔導書グリモワを持って来ているので、少し重たいですが仕方ありません。


 外へ出る前に、4人で手荷物の確認をしました。ベラトリクスだけ寝足りないのか、何度も欠伸をしています。


 宿を出ると、肌に心地よい涼しい風と爽やかな空気、そして明るい青空が迎えてくれました。


「快晴ですね! 今日もみんなでがんばりましょう!」


 こうしてあたしたちの遠征2日目が幕を開けました。

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