第79話 結束
「まもの討伐っ!?」
あたしは思わず大きな声を上げてしまいました。町長さんはまたも仰け反っています。
ほんの少し間を空けて、町長さんは具体的な話をしてくれました。
数日前から町はずれで「まもの」が目撃されているそうです。「まもの」は真っ黒で人型をした怪物の名称です。人間と同じように手に武器を持って襲ってきたりします。
噂では、アレクシア王国と隣りの国を結ぶ大きな橋で、まものの大群との大きな戦いがあったとも聞いています。
武器を使い、群れを成して襲ってくることもある非常に危険な生き物です。剣士や魔法使いの仕事の多くが、まものからの護衛や討伐だったりします。
町長さんの話だと、実害はまだ出ていないそうですが、ここ数日まものの目撃情報が後を絶たず、王国に討伐依頼を出したそうです。
「依頼料は国に払わないといけないですが、もし先にまものをやっつけてくれたら、討伐報酬は君たちに支払いましょう。国の要請を受けた討伐隊がいつ来るかわからない。町の人間として、1日でも早くまものを消し去ってほしいのです」
「「やりますっ!」」
あたしが返事をすると同時にベラトリクスさんも返事していました。お互いに顔を見合わせて頷きます。
「スピカ、ベラトリクス……、相手はまものだ。もう少し慎重になった方が――」
「いいじゃないか、サイサリー? いかにもオレたち『魔法使い』向きの仕事だと思うぜ?」
「ゼフィラまで……、まったく君たちは危なっかしいな?」
そう言いながらサイサリーさんもゆっくり頷いていました。町長さんの話だと、討伐報酬は4人分の宿代をゆうに上回る金額だそうです!
こうしてあたしたちは、遠征の資金稼ぎのために「まもの討伐」を引き受けることになったのです。
町長さんに連れられてやってきたのは、町の警備隊詰所です。ここの人たちがまものに関する詳しい情報をもっているようです。
現状、確認されている数は1匹。町はずれの森で何度も目撃されているそうですが、森は奥まで進むと山に繋がっているそうです。まものは闇に紛れると姿の視認がむずかしくなるため、暗い森をあまり深追いすることができず、姿は確認できても倒せずにいるみたいでした。
あたしたちが宿を確保するためには今日中にまものを討伐しないといけません。これは時間的な意味でもなかなか大変です!
依頼を受けると決めたあたしたちは、一刻の時間も惜しいということで警備隊の人に町はずれの森まで案内してもらいながら、詳しい情報を聞きました。
「目撃されてる数が1匹だからと言って、必ずしも敵が1匹とは限らない。相手は容赦なく命を狙ってくる怪物だ。こちらは4人、しっかり策を練っていこう」
「オレたちは得意な魔法の属性がそれぞれ違う。工夫をしたら戦い方は無限大だぜ」
「はりきっていきましょう! ゼフィラさん、サイサリーさん、そしてベラトリクスさん!」
「おう、スピカ? せっかく一緒のパーティになったんだ。そろそろ『さん』はやめようぜ?」
「はっ?」
あたしはベラトリクスさんに言われて言葉通り「ハッ」としました。
「そうだね? 仲間内で遠慮はいらないよ?」
「オレは最初からずーっと『スピカ』って呼んでるからな! 遠慮すんな!」
あたしは一度息を吸い込んでからみんなの顔を見て言いました。
「ゼフィラ! サイサリー! ベラトリクス! よろしくお願いします!」
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