第78話 思わぬ仕事
お昼下がり、もうすぐ夕方に差し掛かりそうな時間に高山麓の町まで到着しました。馬車の荷台でお話をしているうちにベラトリクスさんは少しずつ元気を取り戻していきました。
「この埋め合わせは必ずこの遠征中にするからな!」
この一言を聞いて、あたしも――、そしてサイサリーさんやゼフィラさんも微笑みを浮かべていました。
ゼフィラさんは馬車を降りて、去り際に馭者さんのほっぺに軽くキスをしていました。彼はゼフィラさんを呼び止めようとしていましたが、当の彼女はまったく振り返らずにあたしたちの元までやってきました。
「期待もたせること吹き込んだからなー。まあ、最初ので十分おつりがくるだろうってな」
「ゼフィラ……、君まさかと思うけど――」
「勘違いするなよ、サイサリー? オレはそんなに安い女じゃないぜ? でも、うまく使えるタイミングってのはあると思うんだ」
「君には頭が下がるよ、いろんな意味で……」
サイサリーさんは両手のひらを上に向けて首を振っていました。
「ゼフィラが体張ってまでここまで来たんだからよ、オレもきっちり働いて宿代稼いでくるぜ!」
「ベラトリクス、デカい声で言うのはやめてくんないか?」
あたしたちはとりあえず、近くの宿屋さんに向かいました。働くついでに泊めてくれるところがあればとっても楽だからです!
「部屋はいくつも空いてるんだけどね? 仕事があるかって言われると……、はてさて困ったもんだね?」
町の中心にある宿で声を掛けてみたのですが、返答は期待通りとはいきませんでした。宿屋のお姉さんの話だと、それほど大きい町ではないので仕事が溢れてるわけではないようです。
宿屋の人は気を使って玄関ホールに集まっている近所の人たちに声をかけてくれました。すると、人の良さそうなおじさんがあたしたちの元へとやってきます。
「私はここの町長を務めている者だが、君たちみんな魔法使いなんだって?」
なんと! 偶然にも町長さんがいらしていたようです。あたしたちは皆、正確には「魔法使い見習い」なのですが、「魔法使い」と言い切りました。
「お若い子たちには危険かもしれないけど……、どうしてもと言うなら紹介できる仕事があるんだけど――」
「ぜひお願いします!!」
町長さんが言い終わる前にベラトリクスさんは返事をしていました。
一瞬、仰け反るほどびっくりしていた町長さんですが、ひとつ咳ばらいをした後、「とりあえず、話だけでも聞いてみるかい?」と言いいました。
そのまま、宿屋のホール奥の席に案内されたあたしたちは、町長さんから仕事内容の説明を受けました。
「端的に言うと、『まもの討伐』です」
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