第13章 遠征開始
第72話 いざ、出発!
「……今日から少しだけお別れね? ゼフィラやサイサリーがいるから大丈夫とは思うけど、気を付けて」
「はい! アトリアさんこそ気を付けて行ってきてください!」
スピカとアトリアのふたりは、お互いに遠征の荷物をチェックして寮の部屋を出た。今日から彼女たち3回生は「遠征」の授業に入る。4人1組のパーティで、それぞれに与えられた課題をクリアして、3日以内に学校へ戻って来なければならない。
「……だけど、どうして遠征に
「外の宿に泊まったりもしますからね! 置き忘れに注意しないといけませんね!」
「……今みたいにゼフィラと持ち物のチェックは欠かさず行うようにしなさい。男たちは放っておいてもいいから」
「大丈夫です! お出掛けの忘れ物確認は念入りにするようお母ちゃんに言われてきました! それにあたしはパーティリーダーですから!」
スピカは腰に手を当て胸を張っている。無作為に選出されたリーダーであっても、彼女なりの責任感をもっているようだ。
「……なかなかおもしろい経験ができそう。戻ったらスピカのパーティの話も聞かせて?」
「もちろんです! 期待して待っててください!」
スピカは元気な返事をして、パーティメンバーの待つ正門前へと駆けていった。アトリアのパーティは目的地の都合、学校の北門集合にしている。彼女が鞄を持って歩き出すと、中で瓶同士がぶつかり合う音がした。先日、シリウスからもらったポーションの瓶だ。
『……忘れてた。1本、スピカに渡すつもりだったのに――』
◇◇◇
「順調にいったら2日で帰って来れるんだよな? 楽勝楽勝!」
「目的の山の麓に小さな町がある。馬車でお昼過ぎには到着するかな……。そこで宿を借りて、明日の準備。昼食は移動中に――、夕食は宿でとる予定だね」
「町で山の情報を集めないとだな! 本でいろいろ調べたけど、山は季節によって表情を変えるからな。旬の情報をしっかり把握しとかないと痛い目みるぜ?」
ピクニック気分で余裕を見せるベラトリクス。計画書の写しを念入りに見ながら漏れがないかを確認するサイサリー。皆を引っ張るように声を上げてぐいぐい進んでいくゼフィラ。
「みんなで遠出なんて最高ですね! ワクワクとドキドキが止まりません!」
そして、誰よりも遠征を楽しんでいるのは間違いなさそうなスピカ。
高山植物の採取を目的とした彼女のパーティ、まず辺境の町と城下町を行き来する駅馬車の乗り場を目指して歩いて行った。
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