第68話 パーティ編成

「……いつも一緒にいるからたまにはいいでしょう? お互い高め合っても、依存してはいけないから」


 アトリアさんの反応はあっさりしていました。けど、あたしはアトリアさんと「高め合える」関係にまでなっているのでしょうか?



「スピカスピカ! とりあえずオレを連れてけよ! 約束だろ?」



 アフォガード先生は授業時間の半分で遠征の説明を終えました。残りの時間はパーティ編成と相談の時間に充てるようにと。

 ゼフィラさんは飛びつくようにあたしのところへやってきました。彼女は顔が広いのであと2人もすぐに見つかる気がします。


 アトリアさんのところには何人もの生徒が押し寄せています。明らかに3人を超えています。さすがの一言です! これはジャンケンをしないといけませんね!


「ウェズンさんが休んでるからな。『本命』がいなかったら『対抗』を狙うよな?」


「ウェズンさん、どうかしたのですか?」


 ゼフィラさんの何気ない一言が気になりました。たしかにウェズンさんの姿が教室にはありません。


「今日は病欠、遠征も休むみたいだぜ? あの人、化け物みたいな魔法使いだけど案外病弱なとこあるんだよ」


 そういえば以前、4回生のシリウスさんも似た話をしてくれた気がします。大事ないといいのですが……。



「スピカスピカ? あと2人、組みたいやつとかいる?」


「皆さん優秀なので誰でも大歓迎です!」


「オッケー、目ぼしいやつ適当に連れてくるよ。どうせなら頼りになるやつがいいだろ?」


 ゼフィラさんはそう言って、あたしに握りこぶしをかざしてから教室の後ろの方へと歩いていきました。



「ゼフィラがいると人集めには困らないわよ? よかったわね?」



 いつの間にかあたしの隣りにシャウラさんが立っていました。どうやらアトリアさんと一緒のパーティになったようです。


「私もゼフィラと組みたかったのだけど、スピカさんにとられちゃったわけね? 残念だわ」


「……私は最低限の礼儀があれば誰でもいい。けど、先の理由でベラトリクスだけは却下」


「2回生の時も遠征あったんだけど男女混合って大変なのよ? 遠征って泊まりとかもあるからさ? そこをと思うか、と思うかどうかよね?」



 アトリアさんとシャウラさんの話を隣りで聞いていたら、ゼフィラさんが戻ってきました。


「おっ待たせー! 優秀なくせに残り物になりそうなやつらを連れてきたぜ!」


 ゼフィラさんが連れてきたのは、ベラトリクスさんとサイサリーさんの2人でした。こっ……これは今の話からすると「経験」と思わないといけませんね!



「スピカ・コン・トレイル、君とはあまり話したことなかったね? サイサリー・アシオンだ。先日の模擬戦見てたよ? とてもよかった。よろしく」


「おう、スピカ! このベラトリクス様がいたら虎に翼、獅子に鰭だ! 大船に乗ったつもりでいろよ!」


 なんだかあっという間に4人パーティが完成しました。とても優秀な人ばかりで頼りになりそうです!


「……ベラトリクスを引き取ってくれたのね? 助かったわ」


 アトリアさんはほんの少しだけ口元を緩めてそう言いました。

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