第66話 怪力?
「アトリアさん! 朝食はパンを3個食べましょう!」
「……なんで?」
模擬戦の翌朝、アトリアさんはいつも通りでした。ですが、より元気になってもらうためにもまずは体力を付けないといけません!
あたしは朝食をもりもり食べますが、アトリアさんは控えめです。
「とりあえず3個頼みましょう! 食べきれなかったらあたしが食べますよ!」
「……それってスピカがたくさん食べたいだけじゃない?」
「違います! あったらあるだけ食べれますが、決して違います!」
「……でも、たしかにスピカの体力の源はたくさん食べるからかもしれないわね? 食が大事なのは否定しない」
あたしたちは食堂に空いてる席を見つけ、朝食を食べていました。今日はシチューが付いていたので食がどんどん進みます。3個もらったパンがあっという間に無くなりそうです。
アトリアさんは食事中はいつも無言です。あたしの方が先に食べ終わり、何気なく周りを見ていると近くの席に人が集まっているのが見えました。
「……あそこに座ってるの、ポラリスとゼフィラよね?」
いつの間にか食事を終えていたアトリアさんはあたしと同じところに視線を向けて言いました。
「そのようですね! なんだか人が集まって楽しそうですよ!」
ふたりでポラリスさんたちがいる席へと行ってみました。すると、なんと……、ポラリスさんとゼフィラさんが向かい合って腕相撲の勝負をしているのです! 集まっている人たちは観戦しているようでした。
ゼフィラさんはとても運動神経がよく力持ちです。一方のポラリスさんはあんまり力持ちには見えません。
ですが、腕相撲はポラリスさんが優勢でした。まさかのポラリスさんは怪力だったのでしょうか!? よくよく眺めてみると彼女の手は淡く発光しているように見えます。
あたしたちが来てから数秒後、勝負はポラリスさんの勝ちで決着しました。周りにいたみんなが2人の戦いを称えています。
「……『ストレング』、腕の力を強化していたのね?」
アトリアさんがそう言うとポラリスさんはこくこくと何度も頷いていました。
「よう、アトリア! いやー、強化の魔法って案外侮れないな? さっき魔法なしでやったらオレの楽勝だったのに、めちゃくちゃ強くなってるよ?」
ゼフィラさんはお手上げの仕草をしながら楽しそうに話をしています。どうやら肉体を強化する魔法がどんなものか知りたくて、ポラリスさんに実演してもらっていたみたいです。
「私はまだ調整が下手なので、強化のレベルも知れてますし、持続時間も短いんですけどぉ、少しくらいならできるんですよ」
ポラリスさんは「魔技師」志望なので、専門は道具に持続的な特殊効果を付与することだそうです。ですが、その応用でちょっとした強化魔法も扱えるそうです。
「――調整を間違うと、逆に身体を壊す原因になってしまったりしますので、今くらいの強化しか私にはできませんけどぉ」
「いやいや、ありがとう、ポラリス! 強化魔法がどんなもんか実際触れて見たくってさ。さすがにティラミス先生に頼むのはちょっと早いかなーって」
普段のポラリスさんはあまり力には自信がないそうです。それが力自慢のゼフィラさんにも勝る怪力になるなんて――、強化魔法恐るべしですね!
「そういえばぁ、マジックアイテムの素材集め、今度皆さんが行かれるですよね? 期待していますよ?」
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