第52話 好敵手
王立セントラル魔法科学研究院前、路面電車でここまでやってきたスピカとアトリア、そして付き添いのアレンビーとパララ。
彼女たちの話は、皆に共通する「学校の話」で大いに盛り上がっていた。歳もそれほど離れておらず、スピカとアトリアの2人が編入生でなければ、学校内で顔を合わせる可能性すらあったのだ。
アトリアは先輩にあたる魔法使いを見ながら、2人の関係が先ほど目にしたラナンキュラスとカレンとは少し違うものに感じられた。
「……あの、変な質問をして恐縮なのですが、おふたりは友達なのでしょうか?」
アトリアの質問に互いの顔を突き合わせるアレンビーとパララ。そして、同時にアトリアへの答えを返すのだった。
「おっ…お友達です!」
「ライバルよ」
意思を示し合わせたつもりが口から出たのはまったく違う言葉。呆れるように天を仰ぐアレンビー、そしておろおろと戸惑うパララ。2人の様子をスピカは楽しそうに眺めている。
「私とパララはね、学校にいた時は全然付き合いなかったのよ? むしろ避けてたくらいかしら?」
「わっ…私は! アレンビーさんのことそっ、尊敬してましたよ!」
2人の話だと、こうして今みたいに話をするようになったのは研究院卒業後、魔法闘技で一戦交えた後からだという。
性格はまるで違うこの2人。ただ、学校にいた時からお互いに魔法の能力に関しては認め合っていたのだ。
「パララほどの才能は、同年代だとうちのギルドにもいないわ。だから、こう意識して高め合える相手は貴重なのよ」
「わっ私もアレンビーさんががんばっていると『負けてられない』って思えるんです! じっ…自分だけでがんばり続けるのってとてもむずかしいですから」
2人の先輩の話を聞きながらアトリアは思った。アレンビーとパララの関係は、根底にお互いの能力に関する敬意があるのだ、と。力を認め合った好敵手だからこその友人なのだ。
「でしたら、あたしもアトリアさんと同じくらい魔法を扱えるようがんばらないとですね! お互いに高め合う関係にならないと!」
スピカはまるでアトリアの心の内を見透かすかのように、大きな声でそう言った。
「……それならまずはシャウラに勝ちなさい。今のスピカはまだ私と競うレベルにないわ」
見習い2人の話に耳を傾けながらアレンビーは臨時講師の件とその授業内容についてパララに説明するのだった。
「次の授業の模擬戦、アトリアさんはウェズンさんと――、スピカさんはシャウラさんが相手だったわね。立場上、応援はできないけどしっかり見といてあげる」
そうアレンビーが話したところで彼女たちはセントラルの正門前まで辿り着いた。スピカとアトリアは学生寮のある方へ、アレンビーは研究棟の方へと足を向ける。
正門前でパララは両手で大きく手を振り、この一時の別れを惜しんでいた。
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