第44話 お出掛け準備

 渇く……、渇く、渇く!!



 喉が異常に渇く。私はベッドから飛び起きた。時間は6時少し前、まだ部屋は薄暗い。さすがにちょっと早過ぎる。だけど、ひょっとしたらスピカはもう起きているかもしれない。


 私は隣りの共通の部屋へ移動した。いつも通り服は少しはだけていて、髪も強風を突っ切ったみたいになっている。とにかく水が飲みたい。どうしてこんなに喉が渇いているのだろう?



「あっ! アトリアさん! おはようございます! 早いですね!」


 スピカもすでに起きていた。そして、水差しからコップに水を注いでいる。


「……おはよう。、私にももらえるかしら?」


 私が水差しを指差すと、スピカはコップをもう1つ持ってきて水を入れてくれた。コップに8分くらいの水を一気の飲み干す。身体の隅々に水分が染み渡っていくのがわかった。一息つくと、スピカはコップにさらに水を注いでくれていた。


「あたしもなんだか喉が渇いちゃっていつもより早く起きました! 今日は湿度が低いのかもしれませんね!」


「……そうね。ついでだからいつもより早いけど素振りしてくる」


 私が木剣を手にとると、スピカがにやにやしながら自分の頭を指差しています。頭……? ああ、髪形か。私、寝相悪いのかしら? 子どもの時からずっとこうなのよね。朝起きると髪が頭で大喧嘩してる。



◆◆◆



 今日はいつもより早く目が覚めました! お出掛けに緊張しているとかではありません。なぜかとっても喉が渇きます。我慢しきれなくなって、お水を飲みに部屋を出ました。すると、アトリアさんも早くに起きて来て、あたしと同じように水をぐびぐび飲んでいました。今日は湿度が低いのかもしれませんね。


 アトリアさんはいつも朝は髪が大変なことになっています。いつ見ても笑っちゃいそうになるのですが、怒られそうなので必死に堪えています。


 今日センセと会う約束のお店は、城下町の西側にあります。路面電車で西の終着駅まで乗れば歩いてすぐのようです。お店の名前は「幸福の花」、とてもかわいらしい名前のお店ですね!


 お昼ご飯の時間に現地で待ち合わせの予定になっています。センセに話したいことが山ほどあるので、うずうずしてしまいます。

 ですが、今ははやる気持ちを抑えて、朝の修行に励みます! 魔法学校へ入っても1日も欠かさずするようにセンセと約束しました。



 朝食をとって部屋に戻った後、外へ出掛ける準備をしました。城下の道や路面電車はまだまだ不慣れなので念入りに確認していきます。


「……西の終着駅までよね? そんなに心配しなくて大丈夫。電車慣れているから」


 アトリアさんが一緒だと道中の心配は無くなると判明しました! これで行きも帰りも安心です。

 今日は、セントラルの制服はやめにして私服でお出掛けします。淡い空色のブラウスと、それよりやや濃い色のロングスカートを着ていきます。


「……スピカ? あなた外に魔導書グリモワ持ち出すつもり?」


「センセにあたしの名前が入った魔導書を見てもらいたいんです!」


「……ウェズン寮長の話を忘れたの? 気持ちはわかるけど置いていきなさい?」


「うーん……、やっぱり危ないでしょうか? 制服じゃなかったらここの学生とはわからないので大丈夫かなって……」


 アトリアさんは無言で首を横に振ります。残念ではありますが、ここは彼女に従うべきだと思いました。たしかに、万が一あたしの魔導書が狙われるようなことがあったらアトリアさんも巻き込んでしまうかもしれません。


 うーん……、本当に、本当に残念です。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る